犬は人間と同様に、鼻や目など様々な器官が毎日機能しており、その精度は人間よりも高いです。

例えば犬の聴力は人間の3倍以上あり、聞き取る周波数はとても広いです。

犬は人間に比べ、より多くの音を聞きながら生活しているということになります。

もしも、今飼っている犬の聴力が低下したとき、一体どのような原因が考えられるのでしょうか。

老化

犬は年をとると、眼や鼻、そして耳の機能が低下します。

人間と比べて年を取るスピードが非常に速い犬は、老化の症状が出るのも速いです。

犬の老化現象が現れるのには個体差がありますが、一般的な目安としては小型犬と中型犬は9歳~13歳、大型犬と超大型犬は6歳~9歳から始まります。

つまり早い犬ですと6、7歳から老化現象が現れ、聴力の衰えが始まります。

犬は老化に伴い視覚・聴覚・嗅覚の順で機能は衰えていきます。

自分の飼っている犬の聴力が低下しているかどうかを確かめるためには、日頃の犬の変化を注意深く観察することが大切です。

例えば呼びかけても反応が悪い、大きな声で吠えるようになったなどの変化は聴力が衰えている可能性があります。

老化は病気ではないので完全に治療する方法はありません。

老化による聴力の低下の進行を少しでも悪化させないように日頃から耳をチェックし、2週間に一度の耳掃除を心がけましょう。

もしも耳掃除の際に犬が暴れる、耳の中に腫れやできものがあったときは、早めに病院へ連れて行ってトリミングしてあげましょう。

ストレス

ストレスからくる聴覚障害も考えられます。

普段の日常生活の中でかかる多少のストレスは仕方ないのですが、強い緊張状態が続いたり、持続的にストレスがかかり続けると犬の心身に悪影響が出ます。

ストレスは心理的ストレスと心身的ストレスの2つに分類されます。

心理的ストレスは犬に不安や緊張を与えるとかかるストレスです。

引っ越しによる環境の急激な変化や、他家の犬が自分の縄張りに居座るなどが原因です。

心身的ストレスとは犬の身体に負担がかかることで感じます。

無理強いした散歩や運動は犬の身体に負担がかかるため、常に犬の様子を観察していれば心身的ストレスを回避することは可能です。

日頃から犬の様子に気を配り、ストレスのかかりそうな運動や環境変化はできるだけ防ぎましょう。

あくびをする、尾を何回も振るなどの行動が見られた場合、犬がストレスを抱えている可能性があります。

遊んであげる回数を増やす、与えるエサの量を一時的に増やすなどのスキンシップをはかるとストレス解消になります。

また、犬用のガムも販売されておりストレスの解消には効果的です。

炎症

犬の耳に内耳炎という炎症が発生すると、難聴の原因になります。

内耳炎とは耳の奥にある蝸牛(かぎゅう)神経・前庭神経に炎症が起こることです。

蝸牛神経に炎症が起こると、聴覚が衰え、音に対する反応が悪くなります。

前庭神経は主に平衡感覚を担う神経ですので、ここに炎症が起こるとまっすぐ歩けなくなったりバランスが取れなくなります。

内耳炎の原因は外耳炎・中耳炎からの伝染、耳のケガなどが挙げられます。

ばい菌やウイルスの感染も考えられます。

もし内耳炎を患ったら原因によって治療法は異なるため、早めに病院へ連れていきましょう。

内耳炎の予防として、外耳炎と中耳炎を患ったらすぐに病院で治療を受けることが大切です。

遊んでいるときや散歩のときなどは耳にケガをさせないように気を付けましょう。

遺伝性だった

もし幼少の犬に音に対する反応が悪い症状が見られたら、先天性難聴の可能性があります。

先天性難聴とは遺伝的な症状で、現在30種以上の犬種にこの症状が現れています。

残念ながら、遺伝性の難聴には治療法がありません。

そのため大切なのは飼い主による日頃のケアとなります。

アイコンタクトや手話など、行動や仕草を使って犬とのコミュニケーションをはかりましょう。

また、音が聞こえないので急に触ったり近づくと驚いてしまい、ストレスとなってしまいます。

犬の視界に入った位置からそっと近づいてあげるように心がけましょう。

散歩は普通にすることが出来ます。

しかしながら耳が聞こえないので車や他家の犬などに気づきにくいため注意してあげる必要があります。

散歩の際には必ずリードを付け、安全第一を意識しましょう。

もし自分の飼っている犬が遺伝性の難聴だった場合、犬にとって頼れるのは眼と飼い主だけです。

しっかりとケアしてあげましょう。

化学物質の摂取

炎症や外傷だけでなく、薬物や毒物による難聴も考えられます。

薬物とは抗生物質・利尿薬・抗腫瘍剤などが挙げられ、それらの副作用により難聴となるケースがあります。

副作用が出た場合、すぐに投与するのをやめましょう。

日常生活における毒物には洗剤や接着剤、シンナーなどがあります。

毒物を鼻から吸い込んだり耳に直接入り込むと、犬の耳の分泌液にそれらの溶剤が溜まり聴力が低下する原因となります。

特に普段の生活で使用する洗剤や接着剤には気を付けましょう。

犬の届かない・入れない場所に置いておく、使ったら放置せずに片付けるなど十分な配慮をしてしっかりと管理することが大事です。

難聴の犬ときちんと向き合おう

飼っている犬の聴力が低下しているかどうかを見極めることは、簡単ではありません。

そのため犬が健康な状態であるときから普段の仕草や行動を観察し、変化に気付いてあげられるかどうかが大切です。

耳が腫れている・耳にゴミが溜まっているなど、気付いてあげられることはたくさんあります。

もし自分の飼っている犬が難聴だと分かったら、症状が悪化する前にすぐに対応してあげましょう。