猫の特徴的な行動の一つとして、狭い空間に身を置きたがるというのがあります。

さっきまでそばにいた愛猫がどこに行ったかと思うと、物と物の間にある小さな空間に入っていた、というのはよくある話です。

ではなぜ猫はそんな場所が好きなのか、猫が狭い空間に入りたがるときの気持ちについて、これから見ていきましょう。

1.避難場所として使いたいので、狭いすき間に入る

猫は元来、臆病で警戒心の強い生き物です。

よほど人慣れしている場合を除き、飼い猫であっても見知らぬ人や生き物に対して、最低限の警戒心は維持しているものです。

そこで危険を察知したとき、もしくは何だか落ち着かないとき、そんなときには安全が確保できて、周りが障害物に囲まれた小さな空間に身を隠そうとします。

猫は犬と違って身体が柔らかく、またほっそりとした体型のため、狭い空間でもスルリと入ってしまいます。

猫よりも図体の大きな生き物は、そんな狭い空間の中に滑り込むことはできません。

それで、まんまと逃げおせるというわけです。

全力疾走した場合、猫は犬に追いつかれます。

そこはやはり、草原で暮らしてきた犬と、森林や洞穴などで暮らしてきた猫との違いになります。

猫にとって狭い空間というのは、自分が得意とするフィールドの一つであって、敵から身を守れる格好の場所です。

2.狩りをするタイミングをうかがっているので、狭いすき間に入る

猫は肉食性のハンターであり、同じくネコ科の動物で“百獣の王”ともいわれるライオンを見ても分かるように、狩猟によって命をつないでいます。

優秀なハンターにとって必要なことは、“待ち伏せ”をして一気に獲物に襲いかかることであり、そのためには身を隠せる場所を探さないといけません。

猫が狭いすき間に入りたがるのは、敵から身を隠せる場所でもあり、獲物に姿を気付かれにくくするためという、両方の意味を含んでいます。

気配を殺し、物音一つ立てずに、じっと息をひそめていたら、何も知らない獲物はそっと近付いてきます。

そしてタイミングを見計らって、狭い空間から一気に駆け出して獲物をしとめるというわけです。

猫はたいへんキレイ好きな生き物で、その柔らかい身体を活かして体中を舐め、常にキレイな状態を保つようにしています。

そのため体臭もあまり強くなく(メス猫は特に)、それに狭い空間にもぐりこむことでそのステルス性は飛躍的に上昇し、狩りの成功率を高めることにつながるのです。

3.寝床として活用したいので、狭いすき間に入る

猫はよく眠る生き物です。

一日の半分以上は寝て過ごし、一説には“寝る子”が“寝子”に変化して、“ねこ(猫)”と呼ばれるようになったのではないかと、そういう話もあるぐらいです。

そんな猫にとって、安心して眠りに落ちられる空間は大切です。

周りが障害物に囲まれているところでは、外敵の侵入を防ぐことができ、“眠る”という無防備な状態になる行為をすることができます。

ちなみに猫の眠りは浅い眠りであり、物音が聞えたとき耳だけピクピクと反応し、非常事態に対応しやすい態勢を整えています。

そのため長時間寝なければ、睡眠がきちんと取れたことにはならないような身体の構造になっているというわけです。

そんな浅い眠りの猫ですから、防御と隠れ場所に適した小さな空間は、寝る場所としてうってつけだということになります。

まさに“最高の寝床”であり、身体が休まってエネルギー消費を抑えることができます。

そうすれば長生きできるでしょう。

4.避暑地として使いたいので、狭いすき間に入る

猫は“暑さ”にわりと強い生き物です。

それは猫の祖先が、暑くて乾燥した中東の砂漠地帯出身だからというのが関係しています。

水分補給もあまりしなくて生きていける身体になっています。

しかし、そんな猫でも夏場はやはり暑さから体がのびきってしまい、“ぐでん”としただらしい感じになってしまいます。

そんな暑さから少しでも涼しい思いをしようとすれば、やはり日光の当たらない狭いすき間のようなところがいい、ということになります。

日光が障害物によって遮られる空間では、ひんやりとした心地よい温度が保たれ、熱せられて熱くなってしまった部屋の中では比較的過ごしやすい環境が整っています。

それなら猫にとって活用しない手はなく、すかさずそのすき間の中に入り込むことでしょう。

そんな猫にとって狭くて小さな空間はなんとも気持ちの良い場所であり、それがあるからつらい夏場を乗り越えていけるということになります。

さながら人間界でいう“別荘”のようです。

猫がすき間に入りたがる心理を知ろう

狭いすき間に猫がスルッと入り込むのは本能が命じることであり、彼らにとってはごくごく自然な営みであるということが分かりました。

人間にも安心できる空間が必要であるのと同様に、猫にとっても安心できる空間としての“すき間”の存在が必要です。

それがあることで気持ちが落ち着き、不安を感じることなく、毎日を元気に過ごしていける猫になることができます。