犬が近づいてくるときに、まっすぐ来ないで円を描くようにしながら側面から近寄ってくることがあります。

なぜ犬はこのような動きをするのでしょうか?

犬が円を描くように近寄ってくる理由や心理についてご紹介します。

1.犬による、敵意がないことを表す行動

犬を呼ぶと、こちらへ近づいてきてから、ふと脇へそれて円を描くように回って、横から寄ってくることがあります。

犬がこのような行動をすると人間は、

「なぜこんなにまわりくどいことをするのだろう?」

「飼い主を困らせようと何か企んでいるのだろうか?」

「何かうしろめたいことでもあるのか?」

などと考えてしまいがちです。

しかし犬の方は犬のルールというものがあります。

円を描いたり、ジグザグに動いて近寄るのは、犬の世界では「攻撃の意志がない」ということを表しています。

これは犬の「Calming Signal」(カーミングシグナル)の一つです。

カーミングシグナルとは「自分と相手を落ち着かせるための信号」で、不要な争いを避けるための犬のボディランゲージです。

2.犬対犬の場合の心理

犬が円を描くように近づく行動は、犬同士でもよく見られます。

犬と犬が出会ったとき、お互いに円を描くようにぐるぐる回り、だんだん距離を縮めていきます。

この時2匹の犬はどちらも警戒しながら「自分は攻撃の意志はないから、こちらにも攻撃しないでほしい」といっているのです。

正面でなく横から近づくという行動は、弱点の脇腹を相手に見せるので、攻撃する意思がないということを表現しています。

人間だと、お互いに手を開いて武器を持っていないことを確かめ合う「握手」のようなものです。

だんだん距離が縮まると、今度はお互いの尻を追いかけるように回り、相手の肛門の臭いを嗅ぎます。

犬の肛門腺というのは、犬のアイデンティティともいうべき臭いの液を分泌する腺で、犬はこの臭いでお互いの情報を確かめ合います。

肛門の臭いを嗅ぎあうのは、人間でいうと名刺交換のようなものでしょう。

犬はこのような方法でコミュニケーションをはかり、相手に敵意があるかないか、自分より優位かどうかを判断します。

このぐるぐる回りの途中で1匹が突然まっすぐ向かってくると「敵意あり」のサインとなって、けんかが始まることがあります。

3.犬対人の場合の心理

犬が人に対してこのような動きをするのは、飼い主や知っている人の時と、初対面の人の時とがあります。

犬がいつも会っている飼い主にこのような行動をするのはどんな場合でしょうか?飼い主に犬が円を描きながら近づくのは、大抵その前に怒られたりしたときです。

犬なりに「ごめんなさい」のサインを送っているのです。

「悪かったと思ってるから、怒らないでね」といっているのです。

また特に悪さをして怒られたわけでなくても「何でもいうことを聞くから悪いようにしないでね」と服従の意志を表しています。

犬がこのような行動をするときには、犬の気持ちを受け入れて、怒ったりせずに来るまで待っていてあげましょう。

初対面の人の場合、犬は攻撃の意志がないことを示しながらも警戒しています。

警戒しながら相手の出方を見守っているので、人間は決して攻撃のサインになるような行動をしてはいけません。

それについては以下にご紹介します。

4.犬が円を描くように近づいたときに人間が取るべき行動

犬がこのようにして近づいてきたら、人間も円を描くように回り込んで側面から犬に近づくようにしましょう。

このようにすれば、犬は相手は敵ではないと認識して安心します。

その他、犬に接するときの注意は

•いきなり正面から向き合うようにしゃがまない
•大声を出さない
•目を合わせて見つめない
•触るときは頭の上ではなく首の下か胸から
•最初は手の甲で軽く撫でて慣れたら手のひらで
•脅かすように背後から触らない
•尻尾を触らない

などがあります。

5.犬をゲストに会わせるときの注意

犬のことを良く知らない人や子供が「かわいい~」と叫びながら正面から抱きつこうとして犬の攻撃を受けることがあります。

犬からすれば、全く知らない相手が大声で叫びながら正面から向かってきたら、攻撃サインだと思ってしまいます。

特に小型犬の場合、人間は自分の何倍もある大きいものなので、恐怖のあまり攻撃に出てしまいます。

犬を飼っている人以外は、犬にどのように接するべきかよく知らないことが多いので、あらかじめ説明して飼い主が間に入って接触させるようにしましょう。

特に相手が子供の場合、思いがけない行動を取って事故につながることがあるので、十分気を付けて目を離さないようにしましょう。

円を描くように近寄ってくる犬の気持ちを知ろう

犬が円を描くようにして近寄ってくるのは、敵意がないことを表しています。

犬は相手に対して警戒しながらも、攻撃しないように要求したり、服従の意志を表しています。

このような時は犬の気持ちを汲み取って怒らないようにして、人間の側からも同じようにアプローチしましょう。