飼い主の上に乗って寝るのが好きな犬がよくいます。

平和な光景ですが、犬のこうした行動にはどんな意味があるのでしょうか?

犬が飼い主の上で寝るときの心理について、2つの考え方をご紹介します。

1.ヒエラルキー理論から、飼い主の上で寝る

まず一般的に信じられている犬のヒエラルキー理論に沿った考え方をご紹介します。

犬は野生時代からオオカミと同じようにリーダーをトップにしたヒエラルキー社会で生活する本能を持っています。

ヒエラルキー理論で考えると、人間の上で寝る犬は「飼い主より自分の方が上位にいる」と思っていることになります。

犬は自分の方がボスであると思っていて飼い主を下に見ている、ということになります。

犬が飼い主の上で寝るという行為は、飼い主がリーダーシップを取れないことを意味していて、しつけがうまくいっていない証拠だということになります。

犬が膝に乗るのも同様の意味があります。

飼い主を上に見ている犬は、決して自分から膝に乗ったりしません。

このような犬はしつけをし直して、飼い主が上位にいることをわからせなければなりません。

2.ヒエラルキー理論に反対の意見もある

以上が犬のヒエラルキー理論からの考え方です。

しかし犬のヒエラルキー理論に反対する意見もあります。

ムツゴロウ王国の石川利昭氏によって以下のような考え方が紹介されています。

•犬はオオカミのような強固なヒエラルキー社会を作らないので、オオカミのヒエラルキーを犬にそのまま当てはめるのは間違い。

•犬は賢いので犬と人間を区別して考えていて人間を群れの仲間とは思っていない。

•飼い主は特別な存在でヒエラルキーとは別のものと認識している。

•犬のしつけとは上下関係を教えることではなく人間の生活に合う行動をさせるためのもの。

※出典.「ムツゴロウ動物王国・犬が喜ぶしつけの学校」(Gakken Mook)

以上のような考え方から、犬をソファーに上げたり同じ目線で遊んでも良いといっています。

飼い主の上で寝る行動については言及していませんが、この考え方によれば必ずしも問題があるわけではなさそうです。

世間一般に通用している犬のヒエラルキーやしつけに関する考え方とは違った意見なので参考にしてください。

3.犬が飼い主の上で寝る行動に対してどうするべきか

以上の全く違う2つの考え方から、飼い主の上で寝る犬の行動について、どうすれば良いかご紹介します。

結局「犬にしつけができていて飼い主のいうことをよく聞くか」ということと「犬が飼い主の上で寝るという行為が飼い主にとって不快でないか」という点がクリアできれば、問題ないのではないでしょうか。

ヒエラルキー理論では、犬が飼い主の上で寝るのはしつけができていない証拠だということになりますが、お宅の犬はいかがでしょうか?

もし犬が飼い主の上で寝ることがあっても、しつけはできていて飼い主のいうことをよく聞くようなら問題はないでしょう。

しかし飼い主の上で寝る犬が、飼い主のいうことを聞かずいつも勝手な行動をとるようなら、自分の方が偉いと思って飼い主をなめているのかもしれません。

4.人間にとって快適な行動をするしつけ

「犬が飼い主の上に寝る」ということが飼い主にとって快適かどうかですが、犬が自分の上で寝ることで飼い主が愛情を感じられてハッピーであれば問題はないでしょう。

こうした場合、おそらく飼い主は上に乗った犬を撫でたり抱きしめて「自分もこうしていることが快適なのだ」というサインを送っているのではないでしょうか。

それによって犬は「飼い主は自分が上に乗って寝ると喜ぶのだ」と思って、飼い主を喜ばせようとして上に乗るのでしょう。

これで双方が愛情を与えあってハッピーであれば問題はありません。

問題は飼い主が嫌がっても上に乗って寝ようとする犬です。

いくら飼い主が拒絶してもいうことを聞かないようなら、それはしつけができていないということになります。

こうした場合はしつけの仕方を見直した方が良いでしょう。

5.飼い主の上で寝るのが安全で快適

ヒエラルキーやしつけの点から犬が飼い主の上で寝たがる理由を考えてみましたが、別の観点からの理由も考えられます。

上に乗るかどうかはともかくとして、飼い主と一緒に寝たがる犬は愛情や安心感を求めているのです。

しかし横に並んで寝ると飼い主が寝返りをうつと危険な場合があります。

特に小型犬は、押しつぶされたり呼吸ができなくなって命にかかわることがあります。

身の危険に関して警戒心が強い犬はそうした危険性を本能的に察知している可能性があります。

もしかすると以前に一緒に寝てそうした危険性を学んだのかもしれません。

危険性とまでいわなくても、横で寝るより上で寝る方が快適だと学んだのかもしれません。

人間は寝るときに布団や毛布をかけますが、被毛がある犬は必要ありません。

こうした点でも上に寝ることが犬にとっては都合が良いでしょう。

犬は賢い動物で経験から学ぶことができるので、安全面でも快適さでも飼い主の上に乗るのが得策であると合理的に判断した可能性があります。

そして飼い主に拒絶されなければ犬は「やはりこれでいいのだ」と思うでしょう。

犬が飼い主の上で寝る心理を知ろう

「犬が飼い主の上に乗って寝る」という行動から、2つの考え方をご紹介しました。

「犬が飼い主より自分を上位だと思っている」という考え方と、それを否定する考え方です。

受け取り方はそれぞれだと思いますので犬の行動と合わせて考えてみてください。

またヒエラルキーやしつけの問題とは別に、安全さと快適さから犬が飼い主の上に乗って寝ることを選んでいる可能性もあります。