キャットフードの原料を見るとよくあるのが「トウモロコシ」です。
野生の猫はトウモロコシを食べないのに、なぜトウモロコシが入っているのでしょうか?
これは猫に必要なものなのでしょうか、また有害ではないのでしょうか?
猫の炭水化物に対する消化機能
猫の体はもともと穀類を必要とせず、また穀類を消化するのに適した構造になっていません。
穀物の炭水化物を消化吸収するために必要なのは、でんぷんを糖化して体に取り込む唾液と膵臓からの膵液です。
猫はどちらも働きが低く、炭水化物の消化吸収に向いていません。
では猫がトウモロコシを食べるとどうなるのでしょうか?
トウモロコシを消化吸収するためには、トウモロコシの炭水化物を包むセルロースという細胞壁を分解、吸収して体に取り込まなければなりません。
しかし猫はセルロースを分解することができないので、セルロースは消化吸収されず、植物繊維として消化管に残ります。
この植物繊維は、猫の消化器官が正常に働いている場合は、普通は便になって排泄されます。
セルロースを取り除いた精製したトウモロコシのみ、炭水化物が体内に取り入れられてエネルギーになります。
キャットフードにトウモロコシを入れるメリット
トウモロコシには何かメリットがあるのでしょうか?
メーカーによると、トウモロコシをキャットフードに入れる理由は「便秘対策」だそうです。
トウモロコシの植物繊維は吸収されず、水を含むと膨張して便量を増やすので、便秘に良いのだそうです。
またこの作用で消化器官にたまったものが排泄されるので、猫の毛玉ケアのフードには、トウモロコシなどの穀類が普通の倍量使われています。
トウモロコシのデメリット・危険性
しかしトウモロコシが本当に便秘に良いのか疑問視する説もあります。
猫の胃腸の働きが弱っている場合は腸内に植物繊維が残って、かえって便秘を悪化させる場合があると言われています。
また便の量が増えたり便が硬くなるために痔の原因になります。
トウモロコシなどの穀類は大量に与えすぎると消化不良を起こして下痢、便秘、腹痛、嘔吐などを引き起こします。
食べ物を消化するのにはかなりのエネルギーを必要としますが、あまり栄養にならないものを食べて排泄するのは、消化器に負担をかけて体力を消耗させます。
トウモロコシ、小麦などの穀類はアレルギーを起こしやすいというのもよく知られています。
精製したトウモロコシの炭水化物は体内に吸収されてエネルギーになります。
しかし自然の状態であまり炭水化物経由でエネルギーを摂らない猫には、悪影響が出る可能性があります。
炭水化物は猫の血糖値を上げやすく、糖尿病、肥満などの原因になります。
トウモロコシを使う理由は「安上がり」がメイン
このようにトウモロコシにはメリットもありますが、デメリットの方が多いとも言えます。
それでもなぜトウモロコシを入れるのかというと、キャットフードを安上がりに製造できるからです。
コストが高い肉の割合を減らして、嵩増しができる点が挙げられます。
いろいろな穀物の中でも特に安価なのがトウモロコシです。
実はトウモロコシは穀類の中でも特に消化に悪いものなのですが「便秘に良い」という部分を強調して正当化して使っているのかもしれません。
またトウモロコシはアメリカで多く作られていてペットフードによく入っていた経緯があります。
そのため、アメリカを手本にペットフードを作るメーカーは、そのやり方をそのまま引き継いでいるのです。
どれだけの穀類なら猫に大丈夫なのか?
このように、トウモロコシを含む穀類は、猫にとってあまりありがたいものではありませんが、全く取ってはいけないというものではありません。
野生の猫はトウモロコシなど穀類を食べたネズミを丸ごと食べていて、その消化器内の穀類も体に取り入れていました。
したがって、少量の穀類なら処理できるようになっているはずです。
それでは猫はどれだけの穀類なら摂っても良いのでしょうか?
「猫は肉食動物なので栄養の7割は肉類から摂るのが望ましい」と言われることがあり、その場合穀類は3割ほどまでです。
多くのキャットフードは20%から40%(特に安価なものはそれ以上)の炭水化物を含んでいます。
つまりほとんどのメーカーは、ぎりぎりの線(またはそれを少し超えている)まで穀類を入れてキャットフードを作っていると言えます。
グレインフリー=炭水化物ゼロ、ではない
こうした流れから出てきたのが「グレインフリー」のキャットフードです。
米、麦、トウモロコシなどの穀類を一切使わないというキャットフードです。(例、カナガン、シンプリーなど)
それではこのようなキャットフードは肉類や魚だけでできているのかというと、そうではありません。
カナガンなどのいくつかのメーカーは「サツマイモ」などの芋類を使用しています。
サツマイモは小麦やトウモロコシよりは消化が良くアレルギーを起こしにくいようですが、炭水化物であることには変わりはありません。
「グレインフリー」イコール「炭水化物ゼロ」ではないのです。
成分表示に隠されたメーカーの本音
ほとんどのキャットフードは穀類、炭水化物の含有量を明記していません。
たんぱく質、脂質、リン、マグネシウム、カルシウム…その他の栄養素と含有量が細かく記載されていても、炭水化物についてははっきり記載しない傾向があります。
なぜでしょうか?それが猫の健康にとって必要で良いものなら情報を載せても良いはずです。
これはやはり「穀類」「炭水化物」をキャットフードに入れるのが後ろめたい、というメーカーの本音を表していると思われます。
トウモロコシは100%悪い訳ではないが注意が必要
このようにキャットフードにトウモロコシが入っている理由は様々です。
メリットがあると思いメーカーは入れているため、一概に悪いとまでは言えません。
しかし危険性へのリスクも考えられるため、キャットフードを購入する際には実際に含まれているかを確認すると良いでしょう。