皆さんは、お家で飼っている猫が、口を開いてハッハと口呼吸をしているのを見たことはありますか。

この行為はパンティングと言いまして、自然に呼吸をするだけでは、取り入れられる酸素の量が少ないので、能動的に呼吸をしている状態です。

更に、ひどい状態になると肛門を開け閉めして、そこからも空気を吸おうとします。

一体、何故このようなことが起きるのでしょうか。

猫の喘息

口や鼻から空気を取り込み、肺まで送りこむ通り道の事を気管、気管支と呼びます。

この気管支に炎症が起こると、腫れあがるなどして、肺の空気の取り込み量が低下し、それを補うためにパンティングを行います。

猫において気管支炎の症状を示している場合、そのほとんどは猫の喘息です。

猫の喘息は気管支喘息と慢性喘息性気管支炎に大きく分けられます。

これらの病気は、芳香剤、たばこの煙、ハウスダスト、トイレのほこり、暖炉の煙、家庭の掃除用洗剤、脱臭剤、スギ花粉などの吸引による病気と言われていますが、まだ原因ははっきりとはわかっていません。

気管支喘息は2~3歳で多く見られ、慢性喘息性気管支炎は4~8歳で多く見られると言われています。

また、シャムネコ、あるいはシャムネコの血を引いた雑種はかかりやすいと言われています。

治療は、飼育環境をキレイにしてアレルゲンから遠ざける事、ステロイドによる抗炎症療法、気管支拡張剤の投与などがあります。

心筋症

心筋症は、心臓の壁が厚くなったり薄くなったりすることで、心臓のポンプ機能が弱まり、全身に血液を送れなくなる病気です。

動物は血液に酸素を溶かして体中に運んでいますので、血液の循環が悪くなると全身に酸素が足りなくなります。

酸素が足りなくなると、より激しく酸素を取り込むために呼吸が激しくなり、パンティングを行います。

心筋症には、肥大型心筋症と拡張型心筋症があります。

猫の心臓疾患で最も多いのが肥大型心筋症です。

昔は拡張型心筋症の猫も多くいたのですが、猫にとっての必須アミノ酸であるタウリン不足が原因であることがわかってから、だいぶ少なくなってきましたが、全くいないわけではありません。

肥大型心筋症では、心臓の壁が厚くなることで、心臓の血液を送る力が弱まります。

ペルシャ、ヒマラヤで多く発症すると言われ、メイン・クーン、アメリカン・ショートヘアでは家族性(心筋症を発症した猫の親や兄弟も発症する可能性が高いこと)であることが多いという報告もあります。

肥大型心筋症の治療には、塩酸ジルチアゼムやフロセミド(利尿薬)を用います。

胸水が溜まっている

動物の胸に中には、胸腔という空間があり、そこに肺などが収まっています。

その胸腔には、少量の胸膜液があり、心臓や肺の運動による摩擦を防いでいるのですが、その胸腔に必要以上に液体が溜まっている状態の事を胸水貯留と言います。

胸水の原因は、静脈の血圧の上昇、心不全、心タンポナーデ、フィラリア症など色々な原因があり、貯留する液体の種類も変わってきます(具体的には、漏出液、浸出液、膿胸、乳び胸、血胸のような分類があります)。

胸水の貯留が軽いと症状は現れないことがありますが、進行していくとパンティングの他にチアノーゼ(舌や目の粘膜の色が薄くなる)、心音や呼吸音が弱くなる、セキをする、などの症状が見られます。

これらの症状は、胸腔に液体が溜まり、溜まった液体が心臓や肺を圧迫し、その働きを制限することで起こります。

治療方法は、胸水の原因疾患によって様々ですが、まず胸水を抜くことが絶対に必要ですので、怪しいと思ったら迷わず動物病院に連れて行ってあげましょう。

熱中症

猫は寒い所よりも暖かい所が好きなので、放っておいたらずーっと日向で寝ていたりします。

その時に水をあまり飲まなかったり、風が吹いていなかったりすると、体温がどんどん上昇し、熱中症になってしまうと上がってしまった体温を下げるためにパンティングを行います。

熱中症で、ぐったりしてよだれをたらしたり吐いたりしている時は、放っておくと死んでしまいますので、すぐに涼しい場所に移動して、うちわで扇ぐなどして体を冷やしてあげましょう。

そして、一刻も早く動物病院に連れて行ってあげましょう。

そんなことにならないために、新鮮な水をいつでも飲める場所に置いておいておく、飼育環境は風通しの良い場所を用意するといった工夫をしてあげましょう。

いつまでもパンティングをしていたら危険サイン

実は、猫でもとても暑い日や、非常に激しい運動をした時などにパンティングをすることはあります。

しかし、そういう時のパンティングは一過性のものです。

もし、半日とか一日中パンティングを続けるようなことがあれば、病気の可能性が高いですので、すぐに動物病院に連れて行ってあげましょう。

特に、熱中症などの場合は一分一秒を争うこともありますので、大事な猫の様子をいつでも、注意深く見てあげておいてください。