全身で自分の気持ちを表してくれる犬と比べると、猫の気持ちはちょっと分かりづらいですよね。
しかし猫の場合も、仕草でその時の気持ちを知ることができます。
例えば「前足を交互にグーパーする」この仕草にもいくつかの理由があります。
子猫の時の名残り
一般的に、前足で揉むようにグーパーとする行為は、子猫の時の名残りだといわれています。
子猫は、母猫にお乳をもらうとき、前足で母猫のおっぱいを揉んで、お乳の出を良くするといいます。
本来、母猫が猫パンチをするなどして乳離れのしつけをしますので、子猫は生後2、3か月程度で乳離れをします。
すると子猫は、徐々にこの仕草をしなくなります。
しかし、野良猫やペットショップの猫は、まだ幼いうちに親猫と離されてしまいます。
そういった理由で、きちんと乳離れができなかった猫が、この仕草をする傾向にあります。
また、グーパーの仕草と合わせて、ゴロゴロとのどを鳴らしたり、毛布や飼い主の服をチューチューと吸ったりする猫もいます。
これについても、子猫の時の母乳を飲みながらのどを鳴らす行為の名残りだといわれています。
飼い主を母猫と思っているのか、母猫を思い出しているのか、どちらにしても、安心して子猫の気分になっているためです。
眠いとき
猫は、眠くなったときにもこの仕草をよくするようです。
眠くなると近くに寄ってきて、仲間の猫のおなかや飼い主、犬のおなかを揉みます。
また、ふわふわしていて感触が似ているからなのか、クッションなどを揉むこともあります。
前足でグーパーするこの行為で、とてもリラックスしている状態です。
これも子猫の時に、眠くなったら母猫のお乳を吸っていたための名残りだといわれています。
人間でいう指しゃぶりに近い行為かもしれません。
とても信頼しているからこその行動なので、飼い主にこの仕草をするのでしたら、飼い主にはとても嬉しい仕草ですね。
甘えている
子猫の時にしていた行為だということから、飼い主を信頼し、甘えているときにこの仕草をするともいわれています。
たまに、猫がネズミなどの獲物をくわえて帰ってきた、ヤモリをくれたなんてことがありますが、これは「親猫モード」の時の行動です。
飼い主に対して、「狩りをしても獲物を捕れないだろう」という心理から、代わりに獲物を捕ってきてくれるようです。
一方、飼い主に甘えるときは「子猫モード」になるようです。
そのため、子猫の時にしていたグーパーの仕草をしながら、安心して甘えきっている状態です。
この仕草を飼い主にするのは、飼い主にべったりな猫や、甘えん坊なオス猫に多いことから、猫の愛情表現だともいわれています。
自分のものだという主張
猫には、「臭腺」という自分のにおいを出す部分があります。
臭腺は、あごの下や口の横、肛門や足の裏などにあります。
ですから猫は、マーキングをするとき、体を擦り付けたり爪とぎをしたりして自分の縄張りや自分のものだという主張をしています。
同じ理由から、前足で揉むようなグーパーの行為は、足の裏の臭腺から自分のにおいをマーキングしていると考えられています。
大きくなった猫でも、この仕草をする場合、マーキングの可能性が高いかと思います。
猫の愛情表現には、飼い主に顔を擦り付けてきたり、なめてきたりすることなどがありますが、グーパーの仕草もその一つのようです。
しかし、その時に爪が出てしまい、刺さってしまうことがありますので、爪はしっかり切ってあげるようにしましょう。
ストレス
前足でグーパーしながら布などを吸うだけでしたら、問題ありませんが、布を噛んだり食べたりするようなら問題です。
これは「ウールサッキング」といわれる行為で、ほとんどの場合、排せつや嘔吐で外に排出されますが、腸閉塞になってしまうこともあります。
原因としては、やはり幼いうちに母猫から離されたことや、乳離れがきちんとできなかったことなどが考えられます。
母猫のお乳を前足で揉みながら吸うという仕草の名残りが、エスカレートした結果布をかじるということになってしまうようです。
この場合、大きくなるにつれ治る猫もいますが、一生治らない猫もいます。
また、ウールサッキングについては、一時的な効果はあっても根本的な解決策は分かっていないのです。
まずは、噛んでしまいそうなウール製品や布を、できるだけ猫の手の届かないところに置くようにしましょう。
また、病的な要因も考えられますので、獣医師に相談するのが良いでしょう。
手のグーパーは猫にとっての幸せな時間
この仕草は、幼い頃に母猫と引き離された猫に多く、乳離れができなかったためと考えられていることから、かわいそうにも思えます。
しかし、この仕草は子猫のように安心しきっているときにする行動ですから、ウールサッキングの場合を除けば、猫にとってとてもリラックスしている時間だといえます。
また、飼い主に対して行うようであれば、飼い主に対しての信頼と愛情からだということですから、猫が満足するまでそっとしてあげるのがいいでしょう。