イギリスを原産地とする犬種はたくさんあります。
イギリスは古くから作業犬や愛玩犬として多くの犬種を産出し、ケネルクラブを設立し犬種の保存に積極的であったために、多くのイギリス原産の犬が現在でも世界中で愛されています。
ウェルシュ・コーギー
ウェールズ州で牧畜犬として飼われていた犬種です。
ウェルシュ・コーギーにはウェルシュ・コーギー・ペンブロークとウェルシュ・コーギー・カーディガンの2種類あり、日本でよく見られる人気の高いのはウェルシュ・コーギー・ペンブロークになります。
2犬種は似た特徴を持っていますが、比較的大きく、大きめの耳を持つのがカーディガン、比較的小さくとがった耳を持つのがペンブロークですが、ペンブロークは生後まもない時期に断尾をする慣習が残っており、尻尾の有無が両犬種を区別する最大の特徴だと言えます。
断尾はもともと牛を追う作業をしていたコーギーが尻尾を牛に踏まれるのを避けるためにされていたものですが、現在では牧畜犬としての役割は終わり、動物愛護の観点から廃止された国も多くなりました。
ラブラドール・レトリーバー
カナダ原産のニューファンドランドがイギリスに持ち込まれ、改良がされていったのが起源とされています。
猟師が撃った鳥を水中に回収しにいく作業犬でしたが、作業犬としての能力がとても高く、また賢く温和で人間に従順な性質を持つため、作業犬のみならず家庭犬としても高い人気を持つようになりました。
現在では水中回収犬としての役割を求められることは少なくなりましたが、持ち前の温和な性格と高い知能と従順性で盲導犬や麻薬探知犬として活躍しています。
世界で最も飼育頭数が多いことから、人気の高さがうかがえます。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
古くからイギリス王朝で愛されてきた小型のトイ・スパニエルと狆やパグなどの東洋の短吻種を掛け合わせたキング・チャールズ・スパニエルという犬種が作られました。
そのキング・チャールズ・スパニエルを一部の愛好家が昔の姿に戻そうと改良を重ね、マズルの長いキング・チャールズ・スパニエルを作出することに成功し、中世の騎士を意味する「キャバリア」とつけられたのが、今のキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの元になったと言われています。
非常に温和で社交的であり、初めての人間や犬にも友好的に接することができる性格であり、犬を始めて飼う人や、小さい子供のいる家庭や、多頭飼いでも安心できる犬種と言えます。
ただし、見知らぬ人にでも友好的に接してしまうため、番犬には不向きです。
ヨークシャー・テリア
イギリスのヨークシャー地方の労働者階級が、ネズミ捕りのために作出したのが始まりだとされています。
その後ヨークシャー・テリアの美しい外見に目を引いた上流階級、愛好家たちにより、より美しく、より小型化を目指し改良を重ねていきました。
ヨークシャー・テリアの最大の特徴は「動く宝石」と形容されるほどの長く美しい絹糸状の被毛です。
生まれたばかりの頃は全身の毛は黒っぽいですが、成長するにつれ被毛の色が変わっていき、生涯で7回色が変化すると言われています。
ドッグショーでは被毛の美しさが重要な評価点となるため長く伸ばした状態ですが、家庭でペットとして飼われているヨークシャー・テリアは手入れのしやすさや動きやすさのために短くトリミングされることが多くなります。
見た目は優雅で愛らしいですが、ネズミ捕りの為に作出され、テリアの血を引くことから性格はやや警戒心が強く、小さな体で勇猛果敢に相手に立ち向かいます。
ブルドッグ
13世紀頃のイギリスではブルベイティング(牛いじめ)という娯楽が貴族や庶民の間で楽しまれていました。
ブルベイティングとは雄牛1頭に対し犬数頭を闘わせ、牛を引き倒した犬の飼い主には賞金が与えられるという残酷なものでした。
ブルドッグは下顎を発達させることで牛に食らいついて離さず、牛に噛みついたまま呼吸ができるように鼻は上を向き、重心を低くすることで安定感を持たせるためにどっしりとした体形に改良がされていきました。
また、獰猛で好戦的な性格になるようにされていきました。
動物愛護の観点からブルベイティングが廃止され、獰猛で好戦的なブルドッグは敬遠されるようになり一時は絶滅しかけましたが、一部の熱心な愛好家がブルドッグの保存に尽力し、獰猛で好戦的な性格から温和な性格へと見事な転向を遂げることができました。
そうすることで、見た目は闘犬のままで性格は温和である現在のブルドッグが生まれることとなりました。
その不遇な歴史を乗り越えたブルドッグは「勇気」「不屈」「忍耐」の象徴とされ、人々に愛されイギリスの国犬の地位を得、イギリス海軍のマスコットにもなっています。
不機嫌そうな外見に反し、性格は温和で見知らぬ人にも友好的に接することができます。
しかし自分の納得しないことには従わない頑固さも持ち合わせています。
暑さに極端に弱いので飼育管理には注意がいる犬種です。
イギリス原産の犬は姿形や性質がさまざま
イギリスは古くから犬をさまざまな用途に合わせて改良をしていったので、その姿形や性質は多種多様ですが、現在でも世界中で多くのイギリス原産の犬たちは愛されています。
長いイギリスの歴史の中では犬にとって受難の時代もありましたが、その歴史がなければこんなにたくさんの犬種が世界で愛されることはなかったのでしょう。