「猫にまたたび」という言葉があるくらい、またたびは猫の好物だとされています。
実際、猫にまたたびを与えると、お酒に酔ったように気持ち良さそうな表情をします。
ただ、人間にとってお酒が必ずしも体に良いものではないように、猫にとってのまたたびも本当に体にメリットがあるものなのでしょうか。
猫にまたたびを与えたときの効果と、与える際の注意点についてご紹介します。
またたびの興奮は「性的なもの」
そもそもまたたびを与えると猫が興奮するのは、またたびに含まれている「またたびラクトン」と「アクチニジン」という成分が原因です。
これが猫の上顎にある「ヤコブソン器官」に作用して、興奮状態を作り出すというわけです。
具体的には中枢神経を麻痺させて、性的な快感を与えるのです。
人間で言うところの媚薬だと思って良いでしょう。
見かけが似ているのでお酒に酔ったようなものだと考えていた人も多いかもしれませんが、実際のところは人間の酔っ払いとはかなり違っているようです。
この「またたびによって与えられるのは性的な興奮」というところがミソで、またたびの効果が全くない猫もいるのです。
それは子猫と妊娠中の猫、去勢・避妊済みの猫です。
子猫は性的に成熟していませんので、当然のことながら性的興奮とは無縁です。
また、妊娠中は性的に興奮できない状態になっていますし、去勢・避妊済みだと性的に興奮してしまう理由がありませんので、またたびを与えても無反応になってしまうのです。
この興奮状態は大体20~30分で収まるもので、常習性などもないとされています。
効果は粉末で与えるのが一番高く、液体、実、枝、葉の順番で低くなっていくとされています。
猫の体に良いわけではない
ただ、猫にまたたびを与えるメリットとなると、果たしてどうなのでしょうか。
都市部で外飼いをすると交通事故のリスクがあることや、ケンカなどでけがをして伝染病にかかってしまう危険性があることなどから、完全室内飼いの猫が増えています。
問題は室内から出ないと動きに制約が生じるので、運動不足に伴うストレスが生じてしまうことです。
またたびを与えることで、こうしたストレスをある程度解消できることが知られていますので、猫のメンタルケアという面では一定の効果があると言って良いいでしょう。
問題は栄養学的な面にあります。
猫は犬と同様に肉食動物だとされていますが、猫と犬の大きな相違点は、猫は「完全の肉食動物」で、動物性のものからしか栄養を摂取することができないことです。
またたびは植物性のものなので、当然のことながら猫が摂取しても栄養分にはなってくれません。
つまり、栄養学的には猫にまたたびを与えるメリットはほとんど無いということになってしまいます。
猫にとって、またたびはあくまでも嗜好品のようなものであり、体に何らかのメリットがあって与えるようなものではないということを十分に理解しておいてください。
猫の体調に問題があったり食欲がなかったりするとき、元気になってもらうために与えるようなものではないということです。
またたびを与えすぎると命に関わることも
もっと言ってしまえば、猫の体調が悪いときにまたたびを与えるのは、必ずしも推奨できるものではありません。
またたびの効果は中枢神経を麻痺させることと性的興奮を与えることだと上に書きましたが、この「中枢神経を麻痺させる」効果が問題です。
またたびを一定量以上に与えてしまうと、中枢神経の麻痺の度合いも大きくなってしまいます。
これが原因でけいれんを引き起こしたり、呼吸困難になってしまったりすることがあり、最悪の場合は命に関わりかねません。
またたびの過剰投与によって、猫がいきなり呼吸困難を起こしてしまい、獣医さんに連れて行く途中で亡くなってしまった例もあります。
体調が悪いときにはこうしたことが起こりかねませんので、またたびを与えることは推奨できないのです。
ちなみに、またたびの適量は1グラムまでとされています。
それ以上与えると危険だということです。
市販されているまたたびの粉末はだいたい1袋0.5グラムぐらいなので、そのぐらいならばあまり心配はないのですが、猫が興奮するからと言って何袋も与えてしまうのは危険になります。
上にも書きましたように栄養学的にメリットのあるものでもありませんので、積極的に与える必要もないでしょう。
またたびは用法・用量を守ってあげよう
猫にまたたびを与えることは、実はそれなりにリスクのあることです。
栄養学的なメリットもなく、あくまでも「嗜好品」のようなものにすぎません。
ただ、猫のストレス解消には役立っているという側面はありますので、量に気を付けて与えていくのが良いでしょう。