猫は痛みを隠す動物です。

けれど、全く何も反応を見せないわけではありません。

例えば飼い主に痛む部分を撫でられるのを嫌がったり、いつもより入念に特定の場所を舐めて毛繕いをしていたり、いつもより攻撃的になる子もいます。

今回は猫が脇腹(腹部)を痛がるようなしぐさを見せている時に、どんな原因が考えられるかその一例をご紹介していきます。

慢性胃炎にかかっている

猫の慢性胃炎は、一週間以上胃の粘膜の炎症が繰り返し起こっている症状のことを言います。

一時的な炎症の場合は急性胃炎と呼ばれます。

炎症が悪化してしまうと、潰瘍やびらんになってしまうケースも多くあります。

猫の慢性胃炎の主な症状としては、

・一週間以上断続的に嘔吐してしまう
・食欲がなくなる
・体重が減る
・大量に水を飲む
・腹部を触られるのを嫌がる(痛がる)
というものがあります。

猫の慢性胃炎は、その原因が分からないことも多い疾患です。

胃や、体のその他の部分に何かの病変あるとき、それが引き金になることもあります。

治療法としては、何か別の病気によって慢性胃炎が起こっているときには、それらの基礎疾患の治療から行われます。

また、薬の投与によって胃酸の分泌を抑えるなど、慢性胃炎の症状軽減を目的とした対症療法も行われます。

胃捻転にかかっている

猫の胃捻転とは、食べ過ぎや胃の中でガスが発生したなど、何らかの原因で膨らんだ胃がねじれてしまう病気のことを言います。

猫の胃捻転の主な症状としては
・腹部が膨らんで苦しがる
・腹部を触られるのを嫌がる(痛がる)
・頻繁にげっぷをしたり吐いてしまう。
もしくは
・吐こうとするけれど吐けない
・よだれが大量に出る
・食欲がなくなる
・大量に水を飲む
というものがあります。

猫ではとてもまれな病気ですが、発見後すぐに治療を行わないと命の危険がある怖い病気です。

猫の胃捻転は、食べすぎや食後すぐの散歩や運動によって起こることがあります。

また、横隔膜ヘルニアや胃炎などの胃の疾患、腹部を手術した経験があることが原因になることもあります。

治療法としては、鼻から胃にチューブを通したり、胃に太い注射針を刺して胃の中に溜まったガスを抜きます。

その後、緊急の開腹手術を行って、ねじれていた胃を正常な位置に戻します。

再発防止に胃の固定を行うこともあります。

同時にショック症状や脱水症状などの内科的治療も行われます。

胃潰瘍にかかっている

猫の胃潰瘍とは、胃の表面を覆っている粘膜が傷ついて、その下にある粘膜下層や筋層が露出してしまっている状態のことを言います。

犬と比べると猫の発症は極めてまれですが、重症化するまで症状が現れないこともよくあるので、症状を発見した場合にはなるべく早く動物病院にかかりましょう。

猫の胃潰瘍の症状としては、
・吐いてしまう
・吐血する(コーヒーのような色)
・血便が出る
・腹部を触られるのを嫌がる(痛がる)
というものがあります。

猫の胃潰瘍は胃にできた何か別の病変が原因になることがあります。

また、体のその他の部分の病変が原因になることもあります。

治療法としては、別の病気によって胃潰瘍が起こっているときには、それらの基礎疾患の治療から行われます。

症状を軽くすることを目的とした対症療法も行われます。

場合によっては入院や手術が必要になることもあります。

腸閉塞にかかっている

猫の腸閉塞は、腸のどこかに何かが詰まってしまうことで、後から流れてくる消化物が全て、そこでつっかえてしまう状態のことを言います。

腸の詰まりの後方につっかえた消化物で膨らみができます。

重度の場合にはショック症状を起こし、最悪の場合には死亡してしまうこともあります。

猫の腸閉塞の主な症状としては、
・吐いてしまう
・いつもより元気がない
・食欲がなくなる
・水をたくさん飲むようになる
・腹部を触られるのを嫌がる(痛がる・猫背になる)
というものがあります。

猫の腸閉塞の原因には、異物の誤飲や腸管内部にできた腫瘍、腸の周辺臓器の肥大(炎症や腫瘍など)による圧迫、腸捻転(腸が捻れる病気)、腸の蠕動運動の停滞などが上げられます。

腸閉塞は他の疾患が原因となり発症することが多いので、まずは基礎疾患に適した治療を行います。

症状が非常に重い場合など、必要と判断された時には開腹手術を行い腸管の閉塞部の除去がなされます。

腸重積にかかっている

猫の腸重積とは、本来一本のホースのようになっている腸の一部が内側にめくれて、隣り合う腸の内側に入り込んでしまった病気です。

腸がめくれて折り重なった部分は、腸管内部の太さが狭くなり消化物が正常に通れなくなり、停滞が生じます。

症状が進行し、腸が完全に塞がってしまうと腸閉塞に繋がることもよくあります。

猫の腸重積の主な症状としては、
・食欲がなくなる
・吐いてしまう
・脱水症状をおこす
・便秘
・腹部を触られるのを嫌がる(痛がる)
というものがあります。

猫の腸重積は何らかの理由で腸の蠕動運動に異常が生じたり、腸管内腔が急激に拡大することによって起こると考えられています。

治療法としては、まずは脱水症状を改善するために輸液を行います。

その後、開腹手術を行い腸の重なった部分をもとに戻します。

症状が重い場合や血行障害により重なった部分が壊死している場合には患部を切除します。

便秘になっている

猫が2日間排便しない時には便秘です。

日常的にマッサージなどで愛猫の体に触れ、感触を確認しておきましょう。

腸にうんちが溜まってくると、左の下腹部にゴツゴツとした物が触れるようになります。

猫の便秘の主な症状としては、
・うんちを出そうとしているけれど出ない(しぶり腹)
・少量のコロコロしたうんちが出る
・細長いひょろひょろしたうんちが出る
・左下腹部にゴロゴロしたふくらみができる
・頻繁にトイレへ行くようになる
・食欲がなくなる
・吐いてしまう
・奇異性下痢(腸内の粘液や水分が腸内に詰まったうんちの隙間を通って排出される)
・腹部を触られるのを嫌がる(痛がる)
というものがあります。

猫の便秘の原因としては、水分の摂取不足などの原因で便が硬い、何らかの理由で排便時に痛みが生じてしまう、結腸の蠕動運動の低下、ストレスなどがあります。

便秘の治療法としては、原因になっている病気がある場合は、それらの基礎疾患の治療が行われます。

また、脱水症状にならないよう点滴や皮下注射で輸液が行われたり、動物用の浣腸や下剤でうんちの排出を促します。

飼い主の手で行える対策としては、猫の居心地のよい生活環境を整えるストレス管理や、マッサージによってリラックスさせるという方法があります。

蠕動運動の低下が原因になっている場合には、食物繊維の多いエサを増やすのもよいです。

食物繊維のあげすぎもよくないので適量を守りましょう。

横隔膜ヘルニアにかかっている

猫の横隔膜ヘルニアとは、心臓と肺のある胸腔(胸部)と、胃や腸などのある腹腔(腹部)を隔てる横隔膜(筋肉でできている)に損傷が生じて、腹部側の臓器が傷口からはみ出してしまっている状態のことを言います。

猫の横隔膜ヘルニアの症状としては、
・元気がなくぐったりしている
・食欲がなくなる
・吐いてしまう
・呼吸が苦しくなる
・腹部を触られるのを嫌がる(痛がる)
というものがあります。

猫の横隔膜ヘルニアの原因としては、先天性のものと胸部に強い衝撃が加わった外傷によるものがあります。

治療法としては、大きな症状が現れていない軽症の場合は経過観察が行われます。

呼吸困難などを起こしている重症の場合には、外科手術で横隔膜の修復を行います。

ただし近年、外傷性の場合には発症から24時間以内の手術は、死亡率を高めてしまうことが分かってきたので、患猫の状態の安定化が最優先されます。

先天性の場合はなるべく早い段階での手術がよいと言われています。

猫が脇腹を痛がっていたらまず動物病院へ

腹部に痛みが生じる原因は多岐にわたります。

今回ご紹介したものはその一部でしかありません。

冒頭にも書かせてもらいましたが、猫は痛みを隠す動物です。

そのため、猫がはっきりとした異常を見せるようになってからだと、病状が進行してしまっているケースもあります。

日頃から愛猫の様子をよく観察し、いつもと様子が違うなと感じたら早めに動物病院に連れていってあげましょう。

腹部の異常に限らず、早期発見早期治療が回復の鍵になります。