爬虫類はそのエキゾチックな見た目や、飼育のしやすさなどの理由から、ペットとして人気の動物の一つです。
ですが、衛生面での注意を怠ると、私たちの健康を害する可能性も持っています。
今回は、爬虫類から人へと感染する可能性のあるいくつかの病気を紹介します。
そして、感染を防ぐための注意点などについてご紹介します。
サルモネラ症
サルモネラ症はしばしば爬虫類から人への感染が報告されている病気です。
有名な病気ですので、名前を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
この病気はサルモネラ菌を持っている爬虫類の体や、その糞便に触れ、それが口の中に入ることで人へと感染します。
感染すると、下痢や吐き気、腹痛、発熱などの症状を引き起こします。
ひどい場合には敗血症(全身の炎症や意識障害を引き起こす病気)を発症する危険性もあります。
サルモネラ菌は爬虫類に限らず、多くの動物が持っている菌でもあります。
そのため、いかなる動物と触れ合う時でも、感染の危険性を常に頭の隅に置いておいた方がいいでしょう。
ボツリヌス症
これも有名な病気の一つですね。
このボツリヌス症は命の危険もある病気です。
ボツリヌス症はクロストリジウム・ボツリヌムという細菌によって引き起こされます。
この細菌は自然界に広く存在しており、多くの爬虫類、特に水棲のもの(カメなど)が持っていることがよくあります。
ボツリヌス毒素は神経系に作用して、手足の麻痺や全身の違和感、脱力感、呼吸困難等、多岐にわたる症状を引き起こします。
しかしながら、ボツリヌス症は大人や、ある程度大きくなった子供では感染しても発症の危険性はそれほど高くありません。
ですが、特に1歳未満の子供では大人のような防御システムが出来上がっていないため、重篤な症状を引き起こす危険があります。
1歳未満の子供がいる家庭では、少なくとも家の中でそういった動物を飼うことはなるべく避け、衛生面にもしっかりと注意を払うことが必要です。
カンピロバクター症
カンピロバクター症はカンピロバクター菌によって引き起こされる病気です。
カンピロバクター菌も自然界に広く存在する細菌であり、特に動物の消化器系に潜伏しています。
感染すると、下痢や腹痛、発熱、おう吐、頭痛などの症状が出ます。
初期の症状では風邪とよく似ているので間違えやすいですが、カンピロバクター症は、特に腹痛と下痢の症状が強く、また長期間(3日から5日程度)にわたって出ることが特徴です。
爬虫類からの感染率や、保菌率についての報告は少ないです。
ただ、イタリアでの調査では、動物園や家庭で飼育されている爬虫類の約7%が、このカンピロバクター菌に感染していたということです。
レプトスピラ症
レプトスピラ症はレプトスピラ菌によって引き起こされる病気です。
レプトスピラ菌は保菌動物の腎臓に溜まり、尿から体外へ排出されます。
それにより、土壌や水がレプトスピラ菌に汚染されます。
レプトスピラ症は急性の熱疾患で、風邪のような症状(発熱や悪寒、筋肉の痛み、頭痛など)を伴う継承型と、ワイル病と呼ばれるような重症型とがあります。
ワイル病の方ではレプトスピラ菌が感染した部位により症状が異なりますが、より重篤な症状が引き起こさます。
肝臓や腎臓、心臓に感染した場合には、吐き気や手足の腫れ、肝臓の痛み、動悸・息切れ、黄疸などの症状が出ます。
脳に感染した場合には、高熱、首の痛み、精神失調、行動障害や言語障害などが引き起こされます。
肺に感染した場合には高熱や息切れ、喀血(咳の時に血が出てくること)などの症状が出ます。
ワイル病は、レプトスピラ菌の感染を放置すると重症化しやすいですが、早期に治療が開始できれば防ぐことができます。
感染の機会に心当たりがあって、上記のような症状が少しでも出てきたら、早い段階で感染症関連の医療機関を受診することをオススメします。
人とペット、両方の幸せのために
今回は4つの病気について紹介しましたが、他にも爬虫類から人へと感染する病気はあります。
ですが、衛生管理をしっかりしていれば、基本的にこのような病気に感染することはほとんどありません。
爬虫類やそのケースなどを触った後はしっかりと手を洗う、定期的に飼育ケースなどを掃除して清潔に保つなど。
こうしたごくごく当たり前なことにさえ気を付けていれば、多くの場合は問題ありません。
今回紹介したのは人の症状だけですが、場合によっては感染している爬虫類自身にも、何らかの症状が出てしまうこともあります。
私たち自身も、大事なペットである爬虫類も不幸にならないために、常に注意を払いながら、大切に飼育してあげることが、こういった病気を防ぐ一番の手立てになるでしょう。