トカゲ、カナヘビ、ヤモリ、イモリなど似て非なる生物をまとめてトカゲと呼んだりします。
ヤモリやイモリは区別できますが、トカゲとカナヘビを見分けるのは困難です。
そこで今回は2種の違いについてご紹介します。
種族分類、生息場所の違い
トカゲとカナヘビはよく似ていて見分けがつきにくいですが、生物学的には異なる種族に分類されます。
トカゲもカナヘビも大きくは、有鱗目という共通点のある生物分類とはされています。
トカゲはトカゲ科、カナヘビはカナヘビ科で、れっきとした違う種類の爬虫類です。
さらに、その生息環境にも異なる点が見られます。
まず生息場所ですが、カナヘビもトカゲも低地と山地のどちらでも見ることができます。
しかし、カナヘビが街中や道路、コンクリート塀の上などで見られるのに対し、トカゲは森や茂みや植込みの中などで見ることが多いのです。
これはトカゲが土を好み潜る習性があるのに対し、カナヘビにはそれがないことに起因しています。
体色ではどうしても見分けが付かないという場合は、土に潜る習性があるかどうか観察すれば、カナヘビであるかトカゲであるかが分かります。
また、カナヘビは壁など高所に登ることが多いですが、トカゲはそのようなところには好んで行かないという違いもあります。
身体的違い、成長上の変化
トカゲとカナヘビは、ぱっと見ただけでは分かりませんが、身体的にも異なる特徴を持っています。
まず体色ですが、トカゲがつやつやと光沢がある見た目をしているのに対し、カナヘビは鱗っぽくてカサカサした印象を与えます。
尻尾の長さにも違いがあり、カナヘビは尻尾が体の全体の3分の2程度と長いのですが、トカゲは半分ぐらいと短めです。
目、舌にも違いがあり、トカゲは目の真ん中で瞬きをしますが、カナヘビは人間と同じような瞬きをします。
舌についてはカナヘビのほうは、舌先が蛇のように二又ですが、トカゲは先が分かれていません。
歩き方にも異なるところがあり、カナヘビは四肢と尻尾で体を支えてしっかりと歩きますが、トカゲは地面にお腹をつけて動きます。
臆病な性格で一目散に走って逃げるのもトカゲの方が多くなります。
ちなみにトカゲの尻尾切りとも呼ばれる、敵から逃げる際の行動については、カナヘビもトカゲも行うようです。
また、成長過程の変化にも異なる特徴が見られます。
カナヘビは幼体から成体まで色の変化がありません。
トカゲは幼体の頃は体に金色の3~5本の縦縞がついており、尻尾もメタリックブルーであるなど、成体と異なる体色の特徴が見られます。
トカゲは成長すると尻尾の色が次第に褪せて、縦縞も消えてカナヘビに近い見た目に変化します。
傾向としては、オスは体色が茶褐色に変化し、メスは縦縞がなくなり尻尾の色が薄くなる等の変化が見られるようです。
子育て、繁殖期の変化
トカゲとカナヘビには子育てや繁殖期などにも異なる点があります。
まずカナヘビですがこちらは産卵すると、しばらく卵を抱きかかえるなどしている場合もあります。
ただ基本的には、産卵した時点で親は役割を終えて、卵は孵化するまで放置されます。
一方、トカゲは卵が孵化するまでの一カ月余りの間、親がかいがいしく卵の世話をします。
このように卵を守る習性が異なるため、トカゲには縄張り意識がありますが、カナヘビには縄張り意識というものがありません。
また、トカゲに関しては、4月~5月の繁殖期になると、オスの喉のあたりがオレンジ色に変化するという特徴もあります。
学習能力の違い
トカゲとカナヘビの学習能力については、どちらともある程度の賢さはありますが、トカゲの方が若干学習する能力に長けているという特徴が見られるようです。
自然科学研究コーンクールで文部科学大臣奨励賞を受賞した黒田純平君は、小学1年生から6年生までの長期間、トカゲとカナヘビの違いや習性について観察研究を行いました。
その研究観察によると、トカゲ、カナヘビ共に迷路や図形を認識できるなどの高い学習能力があることが分かりました。
対してトカゲの方がエサを与え続けるなどすると、手に乗ったり、人に馴れたりする傾向が見られたそうです。
カナヘビにもエサを与えて訓練しましたが、人に懐くことはなかったそうです。
まだはっきりとは解明されていませんが、カナヘビを上回るトカゲの賢さは、子育てをするなどの習性にも起因しているのかもしれません。
トカゲとカナヘビの違いを知ろう
普段見かけることがあっても、あまり違いを意識しないカナヘビとトカゲですが、両者には身体的な特徴から習性、子育て方法までいろいろと異なる点があります。
もし路上や植え込みなどでこれらの仲間を見かけることがあったらよく観察してみましょう。
飼育下で生態を研究するのも面白いでしょう。