多くの人は、自分に何かあったときのために、生命保険に入っていることと思います。
病気になったり、事故に遭ったり…万が一、死んでしまったときに、残された家族への負担がなるべく軽くなるようにと考えていることでしょう。
しかし、自分がそのような状態になってしまったときに、残されたペットがその後どうなるかを考えたことはあるでしょうか。
今回は、そうした万が一のときに安心が得られるペット信託についてご紹介します。
1.ペット信託とは
まず、そもそもペット信託とは、飼い主に万が一のことがあったときに、その後のペットの生活を支える仕組みです。
投資信託という言葉は、実際にしているいないに関わらず、誰でも耳にしたことがあると思います。
投資信託とは目的は異なりますが、同じように資産を預けて、自分のペットのために使ってもらうためのものです。
ペット信託は、つい最近になって考案されたサービスで、2013年2月に商標登録されました。
それほど知名度も高くなく、現在のところ一般的なサービスとは言えないでしょう。
しかし、遺産、相続のトラブルや動物愛護の精神の高まりによって、徐々に浸透しつつあります。
簡単に言ってしまえば、自分の可愛がったペットが最後まで幸せに生きるための保険のようなものです。
自分が死んでしまったときに、「ちゃんとペットの世話をしてくれるかな」といった不安を取り除くものです。
ですので、大切なペットがいるのなら、ペット信託の存在を知っていて損することはないでしょう。
2.ペット信託の利用にはどんな手続きをするのか
では、ペット信託を利用するにあたって、実際にはどのような手続きがあるのでしょうか。
まずは、信託会社やNPO法人などの信託機関と信託契約を締結するところから始まります。
少し言葉を簡単にすると、「信託契約する」というのは「資産を信託して、そのお金をきちんと管理してもらう契約をする」ということです。
そして、ペットのために残す資産を管理会社に移していきます。
これは、自分が亡くなったときに、親族などへの相続からペットの飼育費を切り離すためです。
将来、ペットのお世話をお願いするための積立のようなものだと考えておきましょう。
さらに、ペットのお世話をお願いする次の飼い主を信託の受益者とする遺言を作成します。
受益者というのは、つまり、信託したお金を受け取る人のことです。
この受益者との信託契約をすることで、一通りの準備は完了したことになります。
3.ペット信託の利用した時、ペットのその後は?
それでは、実際に飼い主がなくなったり、自分でお世話ができなくなってしまったときにはどのようになるのでしょうか。
まず、飼い主が亡くなった後は、受益者にペットと信託していた飼育費を相続してもらいます。
飼育費に関しては、信託時の契約内容によって月額での支給にしたりすることも可能です。
そして、受益者は信託契約に基づき、ペットを預かり、そのお世話をすることになります。
家族同然の存在だったペットも、法律上ではものとして扱われます。
しかし、食事や散歩、ワクチン接種などをきちんとしたお世話をして、幸せに暮らせるようにする必要がありますよね?
こうして預けられたペットの生活は、しっかりと見守り管理されるようになります。
というのも、弁護士や行政書士などが信託監督人となり、きちんとお世話がされているかをチェックしてくれます。
このようにして、ペットは次の飼い主の元できちんとした生活することができるようになっています。
4.ペット信託の利用にはどんなメリットがあるの?
ペット信託のいちばんのメリットは、安心できる人に、ペットのお世話を任せることができるということです。
悲しいことに飼い主を亡くしたペットを、遺族が手に余してしまったり、引き取り手がなく保健所に連れてこられることもあります。
大切にしていたペットが、自分の亡くなった後にそういう状況になるというのはいたたまれないですよね。
また、生前に次の飼い主に飼育費用を工面してあげることができるのも、大きなポイントです。
これは、遺産トラブルなどで、お世話をしてもらいたい人に遺産がきちんと渡るかはわからない部分があります。
ペットを育てるには多少なりともお金がかかりますので、次の飼い主にしっかりと飼育費用を確実に渡せるというのは大きな安心に繋がります。
また「信託」という形を使うメリットとしては、しっかりと飼育が保証されるということです。
次の飼い主に渡った後のペットの世話は、その人の善意を信じるしかありません。
しかし、信託監督者がきちんと世話がされているか見てくれるというのは心強いものです。
5.ペット信託の利用のデメリットは?
このようにペット信託は、大切なペットが最後まで幸せに生活できるように残す、飼い主としての愛情の形のひとつでもありあます。
ですが、大きなデメリットとしては、初期費用が高額であるということが挙げられます。
そのため、誰でも気軽にできるわけではないというのが、いちばんのネックになっています。
また、飼育を見守る監督機関がしっかりと機能するかはわからない部分もあります。
多くの信託監督人は、動物愛護に関するNPO法人などと相互に協力してその監督にあたります。
しかし、信託監督人がきちんと監督責任を果たしてくれるかは、しっかりと見極める必要があると言えます。
また、このようなサービスが登場してから歴史が浅いということもデメリットのひとつです。
今後、まだ見つかっていないトラブルや問題点などが浮上する可能性も大いにありえます。
ですので、まだまだ多くの人は様子見といった感じも見受けられます。
飼い主や犬にとっても安心なペット信託
ここ最近では、動物愛護の精神から、ペット向けの保険やペットと宿泊できるホテルななど、さまざまなサービスが充実してきています。
そうした中で、このようなペット信託も登場するようになりました。
また、高齢者のみの世帯が増えていることも、ペット信託に注目が集まる理由のひとつです。
自分で世話ができなくなったり、亡くなってしまっても、ペットには元気でいてもらいたいですよね。
そうした人にとって、お守りとも言えるサービスではないでしょうか。