イヌ同様なじみ深いペット、猫。
分類学上はイエ猫と呼ばれ、アフリカのリビアヤマ猫を起源とすることが、遺伝子研究から明らかになっています。
そんな、世界の猫の故郷ともいえるアフリカですが、交配による改良種がいないためか、原産とする品種はさほど多くはません。
アビシニアン
アビシニアンは、古代エジプトの壁画にみられる「聖なる猫」に似た、イエ猫の中でも古い歴史を持つ品種です。
現在のアビシニアンは、1868年にアビシニア(現エチオピア)戦争のイギリス帰還兵が持ち帰ったZulaという猫が起源とされています。
アビシニアンの外見で、まず目を引くのは美しい毛色としなやかなフォルムです。
アグ―ティダビーと呼ばれる被毛は、1本の毛が2~3本尾色で染め分けられており、光の加減でキラキラとゴールドに輝きます。
額にM字型の模様があるのも印象的です。
体つきは筋肉質でスマート。
尻尾や手足も長く、つま先立ちのエレガントな立ち姿から「バレエキャット」の異名を持ちます。
野性味と洗練されたエレガントさを併せ持つ品種です。
長い歴史や凛とした佇まいとは裏腹に、性格は一言でいえば「甘えん坊」です。
一般的な猫の特徴ともいえる性格の2面性はあまりなく、人懐っこく、飼い主とコミュニケーションを取るのが好きなタイプのようです。
また、非常に賢いことでも知られます。
猫と一緒に遊んだり、頻繁にコミュニケーションが取りたい方にはぴったりな品種といえます。
ただし、活発な性格から少々いたずら好きの個体も多くなります。
家具の配置を考え、アビシニアンが安全にのびのびと遊べるスペースを設けてあげることが大切です。
エジプシャンマウ
エジプシャンマウの起源は、古代エジプトにあるのではないかとされています。
その理由は、ピラミッドの壁画に同じような斑点模様を持つ猫が描かれているから。
しかし、現在のところ確証はありません。
1953年にイタリアに亡命中のロシア女王NatalieTroubetskayaが同国エジプト大使館で一目ぼれし、大使に頼み込み、カイロから取り寄せた数匹とイタリアの猫の交配から生まれたとされています。
エジプシャンマウの魅力は、全身にある美しいスポット模様。
スポットを持つ多品種とは異なり、エジプシャンマウは唯一の自然発生種です。
首元には、ネックレスのような模様があるのも、どこが神聖で印象的です。
女王が一目ぼれしてしまうのも納得できるような気品を備えています。
体つきは筋肉質で骨格もがっしりしており、運動能力も高いのが特徴です。
脇腹から膝にかけて「皮ひだ」が発達しており、一歩一歩を大きく取ることができます。
これはチーターに近い構造であるため、非常に速く走ることができます。
最高で時速40~50キロとされる足の速さは、イエ猫での最高記録を有しています。
運動能力抜群でまるでアスリートのような体形とは異なり、性格は非常におとなしいく、すこし人見知りです。
一人遊びが大好きですが、飼い主には従順で、素直な賢い品種です。
人見知りで、神経質なところもあり、不特定多数の人が出入りするような環境には向きません。
しかし、毎日長時間かまってあげられない一人暮らしや、一緒になって長時間遊ぶのが体力的につらい大人ばかりの環境には相性の良い品種です。
ソコケ
ソコケの起源は、ケニアにあるアラブコ・ソコケという森。
先住民ギリアマ族と共に数百年間生活してきたと考えられています。
近年になり、デンマークに数匹が持ち込まれたのを始まりに、ペットとして広まった品種です。
短毛の猫の中でも、非常に短い被毛と長い後ろ足が特徴的です。
先住民から樹皮を意味する名前で呼ばれていたとおり、変則的な縞模様は印象的です。
また、前足よりも長い後ろ足は、すぐれた脚力の証拠。
非常に俊敏に動き回ります。
性格は非常に活動的なうえ、猫には珍しく水をこわがりません。
愛情深い性格で、飼い主としっかりした絆を結ぶのも特徴ですが、知らない人にも比較的よく慣れ、人見知りということは少ないです。
遊ぶのも大好きですから、きっちり時間をとり猫じゃらし等で一緒に遊ぶようにすると、信頼関係を構築しやすいようです。
猫は一般的にマイペースな性格ですが、ソコケは飼い主が愛情をもって接した分、愛情をもって返してくれる情の深い性格といえます。
運動量の多い活発な品種で、特に高いところが大好き。
そのため、キャットタワーなど遊べるスペースを多く設置してあげると喜びます。
ただし、高所が大好きで、好奇心も旺盛、くわえて水も怖がらないため、ケガには注意が必要かもしれません。
また、ケニア原産であるため、暑さには強い一方で、寒さは苦手です。
暖房対策のとれた環境が必要です。
アフリカ原産の猫たちを知ろう
ここで紹介したアフリカ原産の3品種は、いずれも自然発生種です。
人懐っこい性格や高い運動能力を持つアスリートのような体形とは裏腹に、どこか神聖魅力を感じるのは、アビシニアン、エジプシャンマウ、ソコケの持つ、人の手の加えられていない長い歴史がなせるわざなのかもしれません。