日本の神社では八百万の神を信仰するので、神話に登場するような神々から近代の政治家や軍人などの有名人まで、様々な人々が祀られていますよね。

ですが、祀られているのは人間だけではなく、動物を祀っている神社もあるんです。

今回はその中で、犬を祀っている神社をご紹介します。

武蔵御嶽神社

第十代天皇である崇神天皇が創建したと言い伝えられている、武蔵御岳山の山上に鎮座する神社です。

犬を祀っている影響から、近年は犬を連れた参拝客が増えているんです。

文暦元年に荒廃していた社殿を大中臣国兼が再建しました。

武蔵御岳山は古くから関東の霊峰として信仰されていたので、中世以降は武蔵から相模で信仰圏を広げていた山岳信仰の霊地として崇められ、武蔵御嶽神社は発展を遂げてきました。

過去に奉納された数多くの国宝や重要文化財などが収蔵されています。

神仏分離の影響で明治時代になると「大麻止乃豆天神社に」改称し、その後「御嶽神社」となり、昭和27年に現在の「武蔵御嶽神社」に改称されました。

伊奴神社

伊奴(いぬ)の名前どおり、犬が祀られた神社です。

第40代天皇の天武天皇の時代に建立されたと言われており、約1330年の歴史をもつ名古屋市にある神社です。

その創建には民話集にも記録が残る、犬にまつわる伝説があるんです。

伊奴神社がある地域は昔から庄内川の豊富な水により稲作が盛んでしたが、洪水にも悩まされていました。

ある時、旅の途中でとある山伏が現在の伊奴村という現在の稲生を訪れます。

村人から洪水の件を相談された山伏は宿泊のお礼にと御札を立ててお祈りをしました。

すると、洪水が止まったそうです。

しかし、不思議に思った村人が山伏から絶対に開くなと言われた御札を覗くと、そこには1匹の犬の絵と、”犬の王”という文字が書かれていました。

そして約束を破ると御利益が無くなり再び洪水に襲われました。

村人が再び訪れた山伏に懇願すると、「御幣を埋め、社を建て祀れ」と言われ、その通りにすると洪水が止まったのです。

霊犬神社

霊犬神社には磐田市のイメージキャラクター「しっぺい」のモチーフになった霊犬・悉平太郎が祀られています。

その昔、見付天神裸祭では人身御供が行われていました。

棟に白羽の矢が突き刺さった家は、年頃の娘を生きたまま白木の箱に入れて見付天神にお供えするしきたりがありました。

ある時、この地を訪れて人身御供の件を知った僧侶が、それが怪物の仕業だと突きとめました。

その時に、怪物が信濃にいる悉平太郎という犬を怖がっている事を知り、僧侶は光前寺で飼われていた悉平太郎を見つけだします。

そして、人身御供の際に年頃の娘の代わりに悉平太郎を白木の箱に入れてお供えすると、現れた怪物を悉平太郎が撃退してくれました。

人身御供のしきたりが無くなった村人達は悉平太郎に感謝し、丁重に光前寺に送り届けたそうです。

そして現在では矢奈比売神社に悉平太郎の銅像が建てられ、その近くの公園に霊犬神社が建立されました。

老犬神社

老犬神社は秋田県の葛原山腹に建てられている神社で、一度火事によって社殿が消失しましたが改築されて現在に至ります。

この神社は「シロ」という忠犬を祀った神社で、多くの愛犬家達から愛されている場所です。

そのシロと定六というマタギにまつわる悲劇の物語が老犬神社が建立された理由ですが、根拠がない伝説ではなくて、物語に登場する狩猟免状が今も残されているんです。

その昔、定六はシロを連れて狩猟をしていましたが、領内の外で狩猟をした罪で役人に捕まります。

狩猟免状を見せれば無罪放免ですが、その日は家へ忘れていました。

定六は狩猟免状を持ってくるようシロに命じますが、ようやくシロが狩猟免状を持ってきた時にはすでに定六は処刑されていました。

その後、シロは姿を消して死骸で発見されますが、この地で天変地異や不審な事故が起こるようになり、シロの怨念だと恐れた村人たちが葛原の山腹に神社を建立してシロを祀ったのです。

黒犬神社

黒犬神社は静岡県藤枝市にある鬼岩寺の境内社です。

神の犬と言い伝えられる「くろ」を祀っている、江戸時代に建てられた神社です。

230年ほど前、田中城の城主である本多公は、鬼岩寺に神から遣わされたといわれる逞しいオオカミ犬、くろがいることを知ります。

本多公は闘犬が大好きで、自身も洋犬の血を引く「しろ」という土佐犬を飼っていました。

本多公はくろとしろを大衆の面前で戦わせますが、あっけなくくろがしろを倒してしまいました。

激怒した本多公は大勢の家臣に逃げるくろを追わせますが、追い詰められたくろは自ら古井戸に飛び込んで死んでしまいます。

そのとき、井戸から立ち上る黒い煙が天地を覆うと、無数の犬が吠える声が吠える声が轟いたのです。

そして神の犬が起こした神威に恐れをなした本多公が、くろの怒りを鎮めるためにこの黒犬神社を建立したのだと言い伝えられています。

人間を守った犬を祀る神社

ご紹介した以外にも犬を祀った神社は存在しますが、古代の神や歴史上の偉人と並んで犬が祀られる理由は、おもに犬が人間のために命をかけて闘ったり、ひどい仕打ちを受けた犬の祟りを鎮めるためなんです。

昔から犬は人間の忠実な友であり、人間にもひどい仕打ちを受けた犬のために神社を建立する思いやりがあったんですね。