犬の健康は便によく現れます。
便がゼリー状の場合は、大腸性の下痢である場合がほとんどで、大腸の粘膜と一緒に排出されることが多いため、ドロドロとした粘膜上の便になります。
その原因は一体何が考えられるのでしょうか。
大腸炎
ゼリー状の便のほとんどの原因が、大腸炎です。
何かの影響により消化吸収機能が低下し、消化がされなかった食べ物のカスが大腸に入ることで、大腸がそのカスを便として排出しようとします。
このとき大腸の粘膜が傷つくことで大腸炎を起こします。
大腸炎の原因は、食べなれないものを食べたり、油脂の多いものを食べたりすることで起こりやすいです。
次第に便の回数が増え、ゼリー状の粘液が混ざった便や血便が出てしまう症状が現れます。
大腸は自ら炎症を治す働きがあるため、下痢がずっと続くこともあれば、時々普通の状態になることもあります。
症状は3~4日ほど続き、腸の働きを抑える薬と、状態によっては整腸剤や保護剤などの薬で回復を待ちます。
大腸炎のほとんどは、腸の異常音が聞こえるため触診と聴診で判明することが多いです。
ウィルス感染
ウィルス感染による原因のほとんどは、パルポウィルスです。
激しい嘔吐と下痢の症状がでます。
パルポウィルスに感染すると排出物が緑色になることが特徴です。
感染した他の犬の便や嘔吐物への接触や人の手を経由して感染します。
下痢や嘔吐以外にも、体内のリンパ組織や骨髄、腸の機能などが破壊されてしまいます。
ジステンパーウイルス感染では、下痢だけでなく目ヤニや鼻水、神経症状などが起きます。
既に感染している犬の目ヤニや鼻水、唾液、尿、便などへの接触や、くしゃみや咳での空中感染が原因です。
ワクチンを接種していない子犬に多く見られます。
細菌感染
食中毒で有名なサルモネラ菌に感染すると、腹痛、嘔吐、下痢、粘血便などの症状が起きます。
子犬やシニア犬、免疫力が低下する病気にかかっている犬が感染すると、菌が血液に広がる菌血症を起こし重症化する場合があります。
また、最も恐れなくてはいけないことが、細菌が発生させる毒素によるショック症状です。
最悪の場合死に至ることがあります。
次に、カンピロバクターです。
下痢をしていない犬にも感染が確認されることがあり、他の菌に比べよく動き回るコイル状の細菌です。
カンピロバクターは家畜などの腸管に寄生し、感染した肉を十分に加熱していないことで感染します。
体力が弱って、免疫力が低下しているときに感染しやすい菌です。
最後に大腸菌です。
通常の腸内にいる菌ですが、O-157のような毒性の強い菌も存在します。
細菌感染による下痢は人にも感染する場合があるので注意が必要です。
寄生虫
身体の中に入り込み様々な症状を引き起こす、寄生虫による原因も考えられます。
まず回虫症です。
腸内で卵が孵化して体内を移動しながら成長し、再度腸内に戻り寄生するものと、最初から最後までずっと腸内に寄生する2種類がいます。
下痢、嘔吐、腹部膨張感、腹痛、貧血や、寄生している数が多いと腸閉塞や痙攣、麻痺などの症状が起きます。
感染源は口からの感染や、母犬から子犬への胎盤感染、母乳感染があります。
子犬への感染がほとんどで、生後半年を過ぎた犬からはあまり見られません。
次に、鉤虫症(犬十二指腸虫症)です。
皮膚や口、胎盤、母乳から感染します。
感染すると腸内粘膜に食い込み血液を吸うため、貧血や血便などの下痢、食欲不振、胃腸障害などが起こります。
重症の場合は死に至る可能性のある恐ろしい虫です。
その他にも、口感染により盲腸や結腸に感染する鞭虫症、体長が50cmを超える紐状の寄生虫で小腸に寄生する条虫症(瓜実条虫症)などがいます。
自律神経バランスの崩れ
自律神経は、自動的に身体の機能を整える機能や、血管の収縮、ホルモンの分泌や体温の調整などを行います。
病気や怒られたことによる刺激、引っ越しなどの環境の変化などによるストレスによって腸内の細菌が増加し、下痢を引き起こしてしまいます。
この場合は抗生物質の入った整腸剤などの薬で治療し、様子を見る必要があります。
下痢の症状はしばらく続くため、脱水症状に注意しなくてはいけません。
犬の首の後ろの皮が引っ張っても元に戻らない場合は脱水症状のサインなので、充分に水分補給をさせましょう。
そして、ストレスを減らすために、ゆっくりと休息を取らせよく眠らせてあげることが大切です。
ゼリー状の便になっている原因を取り除くことが第一
ゼリー状の便の原因のほとんどが、大腸炎やストレスです。
大腸炎の場合は、症状がひどくなる前に病院で薬をもらうこと、ストレスの場合は、犬が何に対してストレスを感じているかを特定し、安心できる状態にさせてあげることが大切です。
犬たちの不調のサインを見逃さずによく観察して、いつまでも健康でいさせてあげましょう。