「猫がイカを食べると腰が抜ける」と言われることがあります。
猫にイカを与えること自体は基本的に問題ないのですが、与えるに当たっては注意しなければならないことがあるのも確かです。
そこで今回は猫にイカをあげる際の注意点をご紹介します。
ちゃんと加熱してから与える
まず知っておいてもらいたいのは、生のイカには「チアミナーゼ」という酵素が含まれているということです。
特に、古くなったイカにはこの酵素が大量に含まれています。
この酵素の何が問題なのかというと、猫の体内のビタミンB1を破壊してしまう働きを持っていることです。
ビタミンB1は神経や筋肉、心臓の機能を正常に保つ働きがあります。
人間でもこのビタミンB1が不足すると脚気という病気になってしまいます。
脚気かどうかを診断するために、膝を叩いたときに足がピクンと動くかどうかという検査をすることがありますが、これはビタミンB1によって神経の機能がちゃんと保てているかどうかを調べるためです。
猫の場合も、ビタミンB1が足りなくなると神経の機能がおかしくなってしまいます。
チアミナーゼによってビタミンB1が破壊されると、急激に体内のビタミンB1が減少しますので、より強い症状が出ることになります。
神経がおかしくなった結果、歩き方がフラフラしてきます。
「猫がイカを食べると腰が抜ける」というのはこの症状のことを指しています。
急性ビタミンB1欠乏症は命にかかわることもありますので、注意が必要です。
ただ、チアミナーゼは酵素ですので、熱を加えれば分解してしまいます。
つまり、チアミナーゼが含まれているのはあくまでも生のイカで、熱を加えたものには含まれていないのです。
猫にイカを与えるときには、チアミナーゼを分解させるために必ず加熱しておく必要があるのです。
コレステロールが多いことに留意する
最近は完全室内飼いの猫が増えてきているためか、肥満が問題になりつつあります。
人間と同様に猫にも糖尿病や動脈硬化といった成人病がありますので、愛猫の体調を考えるならば気を付けなければならないところです。
成人病のうち動脈硬化は、コレステロールの過剰摂取によって引き起こされることが分かっています。
コレステロールは血管壁に蓄積される性質があるのですが、コレステロールが血管壁に蓄積されればされるほど血液の通る部分は狭くなってしまい、血流が悪くなります。
これが動脈硬化で、進行すると狭くなった部位に血栓ができて血が流れなくなってしまうこともあります。
動脈硬化を防ぐには、コレステロールを過剰摂取しないことが必要になってきます。
そして、イカは困ったことにコレステロールを大量に含んでいる食べ物だったりするのです。
生のイカは100グラム当たり270ミリグラムのコレステロールを含んでいます。
マグロの赤身が50ミリグラム、カツオが58ミリグラム、キングサーモンが54ミリグラムですから、4~5倍ものコレステロールを含んでいることになります。
これはかなり問題なのではないでしょうか。
もちろんコレステロールそのものは必要な栄養素で、ダメなのはあくまでも過剰摂取です。
愛猫に長生きしてもらいたいと考えているのでしたら、イカを与えるときにはコレステロール過剰にならないよう、少なめにするのが良いのではないでしょうか。
消化が悪いため与えすぎない
そして最後に気を付けておいてほしいのは「イカは必ずしも消化が良くない」ということです。
いくらタウリンが含まれているといっても、与えすぎればお腹を壊してしまい、ちゃんと栄養素の吸収が行われない状態になってしまいます。
上にも書きましたが、イカは必ずしも消化が良くありませんから、胃腸に与える負担も大きめになってしまいます。
このため、まだ大丈夫かなと思える量でもお腹を壊す原因になってしまうケースがありますので、イカを与えるなら量には気を付けるべきでしょう。
また、スルメが好きな猫というのも珍しいものではないでしょうが、気を付けてほしいのは、スルメは猫の消化器内で10倍に膨らんでしまうということです。
それほど与えていないはずなのに消化器内で膨らんでしまった結果、胃腸に負担を与えてお腹を壊してしまう原因になりかねません。
ちなみにスルメは100グラム当たりのコレステロールが980ミリグラムと極めて多い食べ物でもありますから、少量だけ与えるのが良いようです。
イカを猫に正しく食べさせよう
イカは猫に必要なタウリンを含んでいます。
タウリンには血圧上昇を抑えたり、血糖値を下げたり、心臓や肝臓の働きを良くしたりする効果があります。
猫がイカを食べるメリット自体はありますので、あとは飼い主のあなたが上記のことに気を付けておく必要があるのです。
イカは与えること自体がダメなのではなく「間違った与え方をしてはダメ」な食べ物です。