日本犬の中でも、いわゆる純血種の種類は多くありません。

具体的には秋田犬、甲斐犬、紀州犬、柴犬、四国犬、北海道犬の6種類です。

いずれも国の天然記念物に指定されており、それぞれサイズや毛色などの特徴が異なっています。

この6品種についてご紹介します。

秋田犬

1931年、日本犬の中で最初に天然記念物に指定されたのが秋田犬です。

体重はオスで60キロ近く、雌でも40キロを超える個体がおり、体高も60センチを超えています。

日本犬純血種の中では唯一、大型犬に分類されています。

秋田犬はもともと、闘犬のために育てられていました。

江戸時代の出羽藩では闘犬が奨励されていたためで、地元で狩猟に使われていた「マタギ犬」と土着犬を交配させることで秋田犬が作られました。

闘犬というイメージから相当に気性が荒いのではないかと思われるかもしれませんが、実は忠犬として有名な「ハチ公」は秋田犬です。

サイズが大きいので室内飼いには不向きですが、飼い主には極めて忠実で、不審者に対しては闘犬らしさを見せる秋田犬は、番犬にうってつけではないでしょうか。

甲斐犬

天然記念物に指定されたのは1934年ですが、それ以前から地元・山梨県では保存会が設立されていました。

体重20キロ弱、体高50センチ弱と日本犬の中ではやや小さめですが、中型犬に分類されています。

体色は黒虎、中虎、赤虎の3種類で、山間部で狩猟犬として行動する際の保護色になってくれます。

もともとは狩猟犬で、鹿狩りやイノシシ狩りに使われていました。

現在残っているのは、鹿狩りに使われていた個体の子孫で、体重がやや軽めなのは岩場で自由に動くのに便利なためだとされています。

甲斐犬の性格は、かつて猟犬だったとは思えないほど性格が穏やかなことです。

やや頑固で、飼い主以外には懐きにくい面もありますが、賢いためか、むやみに吠えるようなことはありません。

紀州犬

天然記念物に指定されたのは1934年で、体重20キロ前後、体高50センチ前後の中型犬です。

紀州犬といえば白犬というイメージが強いですし、実際に個体のほとんどの被毛は白です。

ただ、数は少ないですが、中には虎毛や胡麻毛の個体もいるようです。

もともとはイノシシやシカの猟に使われていた猟犬で、それだけに気性の荒いところがあります。

うまくしつけないと飼い主を襲うこともあり、実際に人を襲った紀州犬が射殺されたこともあります。

しかし、一度慣れるとその気性がプラスに出て、優秀な番犬になってくれます。

地元・和歌山市教委では優秀な個体に「優良紀州犬章」を与えるなど、種の保存に努めています。

柴犬

日本犬の中でもっともポピュラーなのがこの柴犬で、個体数は日本犬の8割を占めると言われています。

天然記念物に指定されたのは1936年で、体重は大きくても10キロ、体高も40センチ弱と日本犬の純血種の中では最も小さく、小型犬に分類されています。

体高30センチ前後の小柄な「豆柴」もいますが、あくまでも小柄な柴犬というだけで、独立した品種とは認められていません。

もともとは本州各地で小動物の狩猟犬として飼われており、かつては信州や美濃、山陰など色々な柴犬のグループがありました。

現在の柴犬のルーツの多くは、山陰産の個体と四国産の個体を掛けあわせて長野で生まれたものが源流となっているそうです。

個体数が多いだけに、性格は比較的気性の荒いものから、室内飼いに向きの温和なものまで幅がありますが、基本的には狩猟犬時代の気性を残していると言えるでしょう。

四国犬

天然記念物に指定されたのは1937年で、体重は20~25キロ、体高は50センチ前後の中型犬で、毛色は胡麻、赤、黒褐色が一般的です。

もともとの名前は「土佐犬」だったのですが、別の品種である「土佐闘犬」と混同される可能性があったため、現在の名前になったとされています。

かつては高知、愛媛の両県の山岳地帯で、狩猟犬として飼われていました。

ニホンオオカミとの混血であるという説もあり、近年でもニホンオオカミと間違われたことがあるそうです。

それだけ野性味を残している犬種だと言えるでしょう。

ちなみに、土佐闘犬はブルドッグを初めとする外来種を掛けあわせることによって作られており、日本犬とはされていません。

北海道犬

北海道犬は先住民族であるアイヌ人によって飼われていた狩猟犬で、かつてはアイヌ犬と呼ばれていました。

天然記念物に指定されたのは1937年です。

体重は30キロに達することもありますが、体高は50センチ弱と一般的な中型犬のサイズです。

これは後述する理由から、比較的がっしりした体形をしているためです。

かつてのアイヌ人は、そのルーツともされる縄文人と同じ狩猟民族で、狩猟犬である北海道犬はパートナーでもあり家族でもありました。

ただ、北海道の猟はヒグマやエゾシカなどを相手にしなければならないこともあり、生半可な猟犬では通用しません。

北海道県ががっしりとした体形をしているのは、猛獣に互角に対応するためです。

性格の方は猟犬としての適性が高く、飼い主に忠実で我慢強いのが特徴です。

ちなみにソフトバンクのCMに出てくる「お父さん犬」はこの北海道犬です。

日本犬を飼ってみよう

以上が日本犬の中でも純血種とされる「日本犬の中の日本犬」です。

ペットショップで人気があるのは海外産の犬種で、柴犬以外はあまり見る機会も多くないとは思いますが、秋田犬や北海道犬は海外で繁殖が行われるほどの人気があるのです。

せっかく日本に生まれたのですから、一度日本ならではの犬を飼ってみるのも悪くないのではないでしょうか。