昔から動物園や絵本で慣れ親しんでいる動物の代表格と言えば、象でしょう。
その大きな身体、優しい眼差し、親子や群れでの行動など、象には魅力的な要素がたくさんあります。
そんな象は果たしてどれくらい生きるのでしょうか。
そしてどういった生態を持つのでしょうか。
象の寿命は色々な外的要因で変わる
象の寿命は一般的に60年から80年とされています。
ただしこれは、健康に問題がなく、自然の環境の中で無事生きのびることができればの話です。
アフリカ象、アジア象ともに60~80年生きるとされていても、その生命に危険を及ぼす要因は数多くあります。
例えば、ケニヤの国立公園内にいる象の生態を調査したところ、その1/3は寿命を全うする前に、なんらかの原因で命を落としてしまっていることがわかりました。
国立公園と言えども、象牙の密輸が今よりももっと横行していた時代もあり、象が殺されることもあったのです。
また、ミャンマーなどでは、木材を運ぶという仕事を課せられる象もいます。
こういった象は、重労働の末に、40年ほどで生涯を終えることがわかっています。
動物園で飼われる象にいたっては、20年生きないものもいるのです。
これは狭い檻や空間の中で育てられていることや運動不足、長時間人間の目にさらされるといった明らかなストレス要因が多いからとされています。
井の頭自然文化公園で飼われていた象の花子は、劣悪な環境で育てられていると、海外のどうぶつ愛護団体が懸念を表明したこともあります。
象はコンクリートの上で飼われている場合もあり、足の裏が傷つくこともあります。
十分なエサを与えられ、守られた状態にあると言えども、動物園という環境の中では様々なストレスを感じ、それが寿命に影響します。
象は繊細な動物
象の鼻は、まち針でも拾えるというほど、繊細な動きをします。
タイでお絵描きをする象がいるそうですが、鼻の先で絵筆を持ち、飼育員の指示に従いキャンバスに絵の具を塗っていくという難しい行為を行います。
それほど象は神経が細く、難しい動作ができます。
象は足の裏も敏感です。
象は自分の重い体重を支えるので、足に大きな負荷がかかっています。
足の裏に小さなものがあるだけで、気づくと言われています。
象の一番の特徴はその大きな耳ですが、象は聴力が高いことでも知られ、低周波の音を聞き分けることができると言います。
象にも右利き、左利きがある
興味深いことに、象には人間のように右利き、左利きがあります。
ただしこれは手ではなく、牙の話。
アフリカ象はメスもオスも牙はありますが、アジア象はオスしか牙を持ちません。
たいがい、先が丸く磨耗している方の牙が「利き牙」とされているのです。
これは木の表面を削ぎ、食べたりするときにより使いやすい利き牙を使うためです。
牙はとても重くて、長いですが、食べ物を調達したり、自分が進む方向に木など邪魔なものが落ちていた場合に、それを持ち上げ取り除くといった行為にも必要とされています。
象にもできないことがある
象はその巨体に似合わず、繊細な動きができる動物です。
しかし、不得意なこともあります。
その巨体を支える脚ですが、実は跳ねたり、ジャンプしたり、馬のように襲歩(ギャロップ)ができません。
これは象の脚の構造によるもので、スプリング構造のように上下に動くことができないからです。
ただし、重い巨体を動かす際に、身体の軋みを招かないために、足の裏にはクッションパッドのような働きをする脂肪がついているのです。
象の身体のうまくできているところ、うまくできていないところ。
いずれも興味深い特徴です。
象っていくら?
象そのものの密輸は当然のことながら禁止されていますが、以前インドで密輸された象の値段は約3万ドル(315万円)であったという報告があります。
ただしこれは密輸の値段。
タイやインドできちんと飼育された象を正規ルートで入手すると4万ドル(420万円:変動あり)ほどかかります。
ただし、象は購入金額だけでなく、エサ代が非常に高くつく動物です。
年間500万円ほどのエサ代がかかるとされています。
気軽に買える(飼える?)動物でないことは確かです。
人間と象が共存できる環境を作ろう
象は古くから人間を魅了してきた動物です。
タイやインドでは神聖な動物とされていることもあり、歴史や文化を顧みれば象が永く愛されてきた動物であることは確かです。
象は繊細でありながら、凶暴な動物でもあります。
その希少性は近年ますます高まり、保護対象動物として世界中の人が象の生態に注目し、生活環境を守ろうと努力しています。
外的要因で、その寿命も大きく変動します。
象を買うことに現実味はありませんが、ペットの値段にしてはべらぼうに高く、エサや身体の手入れ、飼育にかかる金額はその身体の大きさに比例するかのごとく、とても高額です。
動物園の人気者である象ですが、地球上で人間と共存していくには、人間の方が象を守る環境を整えてあげなくてはならないのです。