ツシマヤマネコ

日本にいる野生の猫は「イリオモテヤマネコ」と「ツシマヤマネコ」の2種類のみです。

イエ猫が野生化したものを「ヤマネコ」と呼ぶこともありますが、それは「野良猫」であって野生の猫とは違います。

この2種の猫はどちらも狭い島の中だけを生息地としていて、現在は数が減って「絶滅危惧種」に指定されています。

イリオモテヤマネコのルーツと歴史

イリオモテヤマネコは1965年に沖縄県八重山諸島の西表島で発見されました。

イリオモテヤマネコの生息地はこの島内だけで、近隣の島には生息していません。

発見当時は、20世紀後半になって発見された数少ない哺乳動物の新種の一つとして話題になりました。

最初に発見されたときは独立種と思われていましたが、その後の研究でアジア東部に住むベンガルヤマネコの亜種ということがわかりました。

イリオモテヤマネコの生息数は現在100頭ほどで、環境省では「もっとも絶滅の危機が高い種」に分類されています。

国の「特別天然記念物」に指定されています。

イリオモテヤマネコの形態

イリオモテヤマネコのオスの体長は55㎝~60㎝、体重は3.5㎏~5㎏、メスはそれよりやや小型です。

長く太い尾を持ち、胴は長く四肢は短いです。

体毛の色は暗灰色から淡褐色で、背中には暗褐色の不規則な斑点模様が見られます。

腹部や四肢の内側の毛は色が薄く、顎には白い毛が入ります。

普通の猫と違って、額に縦じま模様があり目の周りが白く縁どられているのが特徴です。

耳は丸く先端は黒い毛で覆われて、耳の裏には斑紋があります。

光彩は淡い琥珀色で、肉球は普通の猫より大きいです。

また体臭が強いのが特徴です。

イリオモテヤマネコの生態

イリオモテヤマネコは夜行性で、夕方か明け方頃に行動することが多いです。

普通は地上で生活しますが、木に登ったり水に潜って魚を取ることもあります。

水を恐れないのは猫としてはとても珍しいことです。

雑食性で、ネズミなどの小型の哺乳類のほか、鳥類、爬虫類、両生類、昆虫、魚やエビなど何でも食べます。

寿命は野生のもので7~8年くらい、人間の保護を受けた猫で15年生きた例もあります。

イリオモテヤマネコの保護

西表島の開発と観光化が進むにつれて、環境破壊が野生動物の生態を脅かしています。

特にイリオモテヤマネコは、埋め立てによる生息地の縮小、農薬やごみの廃棄によるエサの減少、交通事故、犬による捕食、イエ猫からの病気の感染が懸念され、またイエ猫との交雑で純血種を守ることが難しくなっています。

政府やNPOの団体がイリオモテヤマネコを守る活動をしていますが、状況は大変厳しいです。

個体数が100頭を切っているので、近親交配による先天的な病気や障害が起きたり、適齢期のオスとメスがなかなか巡り合えないといった問題があります。

このため個体数を維持することがますます困難になっています。

ツシマヤマネコのルーツと歴史

ツシマヤマネコの生息地は長崎県の対馬のみです。

ツシマヤマネコは中国や朝鮮半島に生息するアムール猫の亜種とされています。

約10万年前に大陸と地続きだったころに祖先の猫が大陸から対馬に渡ってきたと言われています。

イリオモテヤマネコと外見が良く似ていますが、その祖先は別の種で、別のルートから渡って来たようです。

現在生息数は70~100頭で、イリオモテヤマネコと同様に「絶滅危惧種ⅠA類」に指定されていて、国の「天然記念物」です。

ツシマヤマネコの形態

ツシマヤマネコは体長が50~60㎝、体重は3~5㎏で、普通のイエ猫より少し大型です。

毛の色は灰褐色で、背中に灰色や褐色の斑点模様があり、額には縦じま模様があります。

胴長短足で長くて太い尾を持ち、耳は丸く耳の裏に白い斑点模様があります。

ツシマヤマネコの生態

ツシマヤマネコは夜行性で日暮れや明け方頃に行動することが多いです。

雑食性で、小型哺乳類、爬虫類、鳥類、昆虫のほか、イネ科の植物も胃腸の調子を整えるために食べます。

メスは2kmほどの範囲で行動するのに対して、オスは繁殖行動のためか7~8㎞と広い範囲で行動します。

ツシマヤマネコは警戒心が強く、普通は森林に住んでいますが、時々田畑や人家の近くに来ることもあります。

それによって交通事故にあったり、イエ猫から「猫エイズ」などの病気を移されたりして、ますます数が減っています。

ツシマヤマネコの保護

対馬で開発が進むにつれてツシマヤマネコの数が減り、現在野生のものは100頭を切っていて絶滅の危機に瀕しています。

森林の伐採によるエサの不足、交通事故、イエ猫からの猫エイズの感染に加えて、誰かが持ち込んだイノシシが天敵になり、ツシマヤマネコの生息環境はますます厳しいものになっています。

特に島の南半分ではもうほとんど生息していないと言われています。

現在は政府が天然記念物に指定するほか、ツシマヤマネコを守るNPOの団体が活動しています。

ツシマヤマネコが住みやすくなるように対馬の環境を改善したり、複数の動物園でツシマヤマネコの繁殖を行うなどの試みがされています。

日本の野生の猫を知ろう

日本に2種だけ生息する野生の猫「イリオモテヤマネコ」と「ツシマヤマネコ」はイエ猫とは違ったワイルドな特徴を持ったヤマネコです。

しかし残念なことに、どちらも絶滅の危機に瀕しています。

もしご興味を持たれたら、それぞれの保護団体に連絡して寄付をしたり保護活動に参加するなど、何かできることをしてみましょう。