大きな口を開けて犬があくびをしている様子を見ると、とても可愛らしくて心が和みます。
しかし、実はただ可愛らしいというだけで見過ごしてはいけないメッセージが犬のあくびに込められていることをご存知でしょうか。
もちろん疲れている時や眠たいときなど、私たち人間があくびをするのと同じように犬があくびをすることもありますが、それ以外にも犬のあくびにはさまざまな意味が込められているのです。
そこで、犬があくびをする際の心理や意味についてご紹介します。
犬のあくびは不快を表す黄色信号
人間の場合、不快というよりは退屈な時にあくびが出ますが、犬の場合はより率直に不快感を表す行動としてあくびをすることがあります。
つまり犬の心に大きなストレスがかかっている、これ以上はかまってほしくない、などというサインがあくびです。
初めて会った心を許していない人に頭を撫でられたり、スキンシップをされたりしているときに犬があくびをすることがありますが、この種のあくびはまさに不快感を相手に伝えるためのもの。
犬があくびをし始めたら「いい加減にしてよ」と黄色信号を出していると考えた方がいいでしょう。
自分と相手もリラックスさせるため
自分が極度の緊張状態にあるとき、あるいは相手の緊張状態を見て取ったとき、犬はあくびをすることがあります。
あくびをすることで自分や相手の緊張状態をほぐそうとしているのです。
例えば飼い主に叱られているとき、犬があくびをすることがあります。
これは決して飼い主を馬鹿にしているわけではないのです。
怒られている状況で自分も緊張しているので、これをほぐそうとしていると同時に、怒っている飼い主の緊張状態をもほぐし、「もうしませんから、そんなに怒らないでください」と伝えたいと思っているのです。
これを誤解して、「この犬は私を馬鹿にしている」と語気を荒らげては逆効果。
より深い緊張状態に陥った犬は、さらにあくびを繰り返すことになるのです。
よく耳にするのが、夫婦げんかを見た犬があくびをしたという話ですが、これも理由は同じです。
「お二人とも落ち着いて、リラックス、リラックス」と犬が必死に夫婦の仲を取り持とうとしているのですね。
また他の見慣れない犬に出会った時にあくびすることもあります。
これも相手と自分の間にある緊張感をほぐそうとしているサインです。
体に不調を抱えている可能性も
犬があくびをするのは疲労や眠気だけが原因ではない、ということは前述のとおりです。
犬は不快感や緊張状態にあるときにもあくびをします。
それらの状態が恒常的に続けば、犬の体には変調が現れるのも当然です。
あまりにも頻繁にあくびをしている、特に生あくびのようなものが多い場合には、単なるストレスや緊張をこえて、何らかの病気に侵されている可能性もあります。
特にあくびの際に強い口臭などが伴うときは注意してあげる必要があります。
なるべくストレスを感じさせない環境を用意するか、動物病院へ連れて行ってあげる方が良いでしょう。
嬉しい時にもあくびが出ます
散歩に出る前やご飯の前に、犬が大きな口を開けてあくびをすることがあります。
これを見て「散歩に行きたくないのかあ」と思ったら早とちりで、実は散歩に行く喜びが押さえられないのです。
前述のように、犬は自分や相手をリラックスさせたいときにあくびをするのですが、リラックスとは悪い状態から自分を解き放つだけとは限りません。
喜びが絶頂に達して、ワクワクしすぎている自分を落ち着かせるという意味も持っているのです。
お散歩やお食事前のあくびはまさにこの、喜びすぎている自分を落ち着かせるためのもの。
ある意味では最上級の喜びの表現といってもいいでしょう。
犬にもあくびはうつってしまう
人間でも他の人のあくびが移ってしまうということがありますが、同じ現象が犬にもあるようです。
犬同士であくびが移るということはまれですが、飼い主がしたあくびにつられて、犬があくびをするということはあるようです。
いわゆる「もらいあくび」です。
一般に犬は共感力の強い動物だと言われます。
人間が肩を落としてしょげていると、その隣で犬もしょんぼりしている、なんて光景はよく見かけます。
この共感力の強さが、犬にもらいあくびをさせるともいわれています。
犬のもらいあくびは彼らの優しい気持ちの表れとも言えるでしょう。
あくびで何かを伝えようとしている
このように犬のあくびにはさまざまな意味があるのです。
これらの意味を正しく理解してあげることが、犬の気持ちを読み解き、効果的なしつけやコミュニケーションをとる上では欠かせません。
また犬の体調の変化を読み取ってあげるためにも、欠かすことができないのです。
私たち人間にとってはただのあくびに見えても、言葉を持たない犬たちは、そのあくびで必死にこちらにメッセージを伝えようとしています。
そのメッセージをしっかりとキャッチしてあげたいものです。