お腹を見せる犬

犬を飼っている方は見た事が有るかもしれませんが、犬はよくゴロンと寝転んでお腹を見せる事があります。

このお腹を見せる行為は一般に「へそ天」と呼ばれています。

何故犬はこの「へそ天」をするのでしょうか。

お腹を見せている時の犬の心理をご紹介します。

絶対服従、降伏のサイン

骨に覆われていないお腹は犬の最大の弱点です。

お腹を噛まれでもしたら内臓をやられてしまうので、犬は普通お腹を見せる事はしません。

この弱点を態々人に見せるのは、その人物への「降伏」「絶対服従」を意味します。

自らの弱点を相手に見せる事で「貴方に従いますから攻撃しないで下さい」ということを表しているのです。

また意味合いは少し異なりますが、犬同士などでは争いを避ける為に、片方が下手に出て「こちらに敵意はありませんので、落ち着いて下さい」と言うサインでも行われる事が有ります。

飼い主が怒っている時や飼い犬を叱るときなどにお腹を見せるようであれば、それは「怒らないで少し落ち着いてよ」と言っているのかもしれません。

服従等の意味合いでへそ天をする場合には耳を伏せたり、尻尾を丸めたりする事が多い様なので、そこも見逃さない様にしてあげます。

尻尾を巻き込んだ状態でのへそ天は犬が極度に緊張している事を示していて、気の弱い犬は特にこういった行動を多く取りがちですので、あまり叱らない様な躾をしてあげましょう。

究極にリラックスしている

先に述べたように、犬にとってお腹は最大の弱点です。

この弱点を見せるもう一つの理由として「犬がこれ以上なくリラックスしている」と言う事が有ります。

犬は警戒していると自らを守る為に弱点や隙を見せないようにします。

しかし平和で安心できる環境に長く置かれると周囲を警戒する必要が無いので、徐々に隙だらけになっていきます。

お腹を見せて寝転ぶ、と言うのは、人間でいえば「自分の部屋でだらしの無い恰好で寝転んでいる」事と同じと考えられます。

飼い犬が家でお腹を見せて寝転んでいたら、今の環境に「平和で何の心配も要らない」と安心してリラックスしていると考えても問題ありません。

服従の時との見分けるポイントは「尻尾が伸び切って眠そうにしている」かどうかです。

飼い主を信頼している

特に何かした訳でも無いのに飼い主さんにお腹を見せる事があります。

そんな時犬は「貴方を信頼していますよ」と表現している場合が有ります。

子犬等は母犬にお腹を見せて甘える事が有りますので、それと同じ事を飼い主さんにしている可能性があるのです。

こういった場合にお腹を見せるのは、飼い犬からの最大の愛情表現です。

犬の気持ちに応えるように、お腹を撫でてあげましょう。

服従やリラックスでへそ天をする時との違いは、「犬が尻尾を振って嬉しそうにしている」かどうかです。

こんな時は存分に甘やかしてあげましょう。

犬はとても喜んで、益々貴方の事を信頼してくれる事でしょう。

ただ撫でて欲しいだけ

お腹を見せる事=服従、信頼と考える事が多いですが、それ以外でも犬がお腹を見せる時があります。

それは「撫でて欲しい」ときです。

これが長く飼っている犬だった場合は飼い主への信頼+撫でて欲しい気持ちの現れで有る事が多いですが、飼い始めて日の浅い犬や他の人が飼っている犬が同じ事をした場合は注意が必要です。

自分に慣れていない犬がお腹を見せた場合は「撫でろ」と「命令」している場合が有るからです。

これを服従していると勘違いして撫でたら噛みつかれた、なんてケースもあります。

この時の犬の心理としては「自分より下位の相手にマッサージをする様に命令したが、撫で方が気に入らなかったので怒って噛みついた」と考えられます。

お腹を見せるからと言っても、必ずしも良い意味合いばかりでは無いので注意しましょう。

背中が痒くて仕方ない

犬はお腹を見せながら地面をぐるぐる回ったり激しく動いていることがあります。

これは「背中が痒くて堪らない」と思っての行動です。

人間でも背中は手が届かなくて苦労する事はありますが、犬は余計にそうです。

自分で背中を掻く事が出来ない犬は何かに身体を擦り付けて痒い個所を掻くしかありません。

弱点であるお腹を見せてでも背中を掻きたいのであれば、それはもう大変に痒くて仕方がない時が多いです。

こういった場合は飼い主さんが代わりに掻いてあげてはいかがでしょうか。

またこういった行動をあまりにも繰り返すようであれば、蚤がいる可能性もありますので、シャンプーを変えたりする等して対策を取ってあげましょう。

甘えている

かまって欲しい、注目して欲しいという感情の表現である時もあります。

特に成犬になる前の子供の頃には、よく見られる光景でしょう。

また、お腹を見せたことで、飼い主がとても喜んでくれたり、相手をしてくれたことを覚えているケースもあります。

この場合は、またその時のようにかまってもらいたいとアピール目的として活用していることがあります。

幼い時は、じゃれ合ったり遊んだりと、仰向けの姿勢でいることに警戒することも少なく、遊びの中で自然とこのような姿勢になることもあります。

このような時は、一緒にボールなどのおもちゃを使って遊んであげたりしてかまってあげることを意識しましょう。

遊びの中で、しつけや特訓することも出来るので、幼いうちに色んなことを教えてあげると良いでしょう。

降参を表している

散歩やドッグランなどで、犬同士じゃれ合ったりしながら仰向けになることがたまに見受けられます。

犬の世界では、自分より上なのか下なのか、自分の立ち位置を調べたり、確認したりすることもあり、時に喧嘩のような状態になってしまうことがあります。

その時に、「もう降参です」という相手へのサインとして、お腹を見える行動をする犬がいます。

この状態の時は、上記のリラックスした状態とは違う為、尻尾でお尻を隠すように丸めた上で、仰向けの姿勢をとる犬が多いです。

もうこれ以上攻撃しないでほしい、あなたより私は下であることを認めますといったように、降参を態度で表現しています。

これは犬同士の付き合いの上でお互いに理解し合える行動でもあるので、暖かく様子を見守るだけで良いでしょう。

足が疲れている

犬は常に足を使っている状態で、お座りにしても、人間のようにお尻だけで座るのではなくて、足も常に使いながら座ります。

伏せの状態でも同じであること、また常に歩き回っていたり、熱いアスファルトの上を直接歩いていたりと、足には多くの場面で負担がかかっています。

実際に、小型犬や高齢犬の場合、足に負担がかかりやすいために、膝が早い段階で弱ってしまったり、歩きづらくなることも多いのです。

頻繁に使用している足を、仰向けになって負担を軽減することによって、足の疲れを癒している可能性もあるのです。

人間の場合も、寝る時に足を少し高くするとむくみが取れたり、疲労回復に繋がると言われています。

犬も同様、足の疲れから足に負担を感じているのかもしれません。

そんな時は少し休養をとったり、足のマッサージをしてあげるなどして、疲労回復に努めてあげると良いでしょう。

相手を信頼しきっている

相手をリーダーであると認識していて、さらに強く信頼している場合には、服従の行動としてお腹を見せることがあります。

だいたいの犬は、他の動物から襲われることを恐れて、外で気軽に仰向けになるという行動はとりません。

しかし、信頼している相手だけとの空間や室内などでは頻繁に見える行動でもあります。

まさにリラックスしていて、安心感でいっぱいになっている時に見せる、いわば全く緊張・警戒していない状態であることが分かります。

自分に対して心を許してくれている、安心してくれている、穏やかな状態であることを知れますから、こんな時は優しくお腹を撫でてあげると、犬も気持ちよくなってくれるでしょう。

触れ合うことによりさらに信頼関係を高めることが出来ますので、こんな行動に出た犬には優しく接してあげるようにすると良いでしょう。

犬がお腹を見せる心理を知って対応していこう

犬がお腹を見せる事は服従を意味する、こう考えている人は少なくありません。

それは勿論正しい事ではありますが、一方ではその相手を「下位」と判断して「奉仕」を命ずる様なケースも存在するので、必ずしも服従表す訳ではありませんし、服従よりもその人物への信頼や愛情などを示している事もあります。

犬は人間と違って話す事が出来ません。

犬の行動を正しく理解する事が、犬を飼う上で重要です。