秋口になると、犬の散歩中、銀杏が路上に落ちているのを、よく見かけるようになります。

好奇心の旺盛な犬が、しきりに匂いを嗅いだり、時には咥えてみたりする光景は微笑ましいのですが、実はここに大きな危険が潜んでいるのです。

銀杏が起こす中毒について

銀杏は糖質とタンパク質が豊富な他、カトリンやビタミンCといった栄養素も含まれている事で、古くから食材として珍重されてきました。

それ故に見過ごされがちですが、銀杏にはチルビリドキシ(NPN)という毒素が内包されていて、これがビタミンB6の吸収を邪魔してしまう効果があります。

ビタミンB6は生物の体内で、GABAという神経伝達抑制物質を生成する働きがあり、精神状態の安定に役立っています。

従って、これが不足すると、神経伝達が抑制されずに異常興奮に繋がり、痙攣などの中毒症状を引き起こす事があります。

これが一般的に、銀杏中毒と呼ばれる症状です。

人間の場合、大人ならば多くの量を一度に摂取しなければ深刻な発作に繋がる事は少ないのですが、子供の場合、少量でも発作を起こした例が報告されています。

その為、料理に使う場合でも、大人でも20粒、子供は多くとも7粒程度までに留めるのが安全とされています。

犬と銀杏中毒

人間の子供でも発作を起こすのですから、それより身体の小さな犬にとっては、銀杏中毒は命取りにもなりかねない、危険なものです。

犬の場合、主な症状は人間とほぼ同じで、嘔吐や痙攣が最もよく表れます。

特に痙攣に関しては、一度収まったように見えても、何度も繰り返して症状が出るものなので、決して油断しないようにしましょう。

他にも下痢や発熱、更には呼吸困難を引き起こす事もあり、このレベルになると、最悪の場合、命を落とす可能性も出てきます。

特に、まだ毒に対する抵抗力が弱い子犬の場合は、少量でも中毒になりやすい為、迅速に対処しなければなりません。

また、毒素以外の要素でも、犬にとって危険となる場合があります。

例えば、銀杏の硬い皮を無理に噛んだ際に、口内を怪我してしまう場合や、殻つきのものをそのまま飲み込んだ事で、消化器官が詰まってしまう場合などです。

これらの場合は、大人の犬であっても起こりうる為、ある意味では毒素以上に気を付ける必要があります。

異常が見られなくとも病院へ

「銀杏を犬が食べてしまったけれども、特に異常もないし、中毒の心配は不要では…」という場合もあるでしょう。

実際、飼い主さんのブログなどでは、そういった例が報告されています。

本当に何ともなければ、それに越した事はありませんが、銀杏の食中毒は、食べてから発症まで、だいたい1~12時間の間があるのが普通です。

そもそも、銀杏に限らず、食中毒の症状には個体差がありますから、「食後何時間を経過して異常が見られなければ良い」、という絶対的な基準はありません。

ですので、食べた直後は問題なくても、数時間経過した後に突然痙攣や嘔吐をし始める、という事も十分起こりえます。

例え、傍目からは変わりないように見えても、食べてしまった、もしくは食べた疑いがある時は、念のため獣医の診察を受けるのが安全です。

散歩の時間は要注意

犬にとって危険な食べ物は幾つかありますが、その中で銀杏が特に危険なポイントは、「散歩中の路上で触れる機会が多い」という事です。

例えば、同じく犬が中毒を起こす食べ物として知られるチョコレートは、人間が敢えて与えなければ、それ程道端で拾い食いする機会がありません。

レーズンやタマネギといった、他の中毒要因も同様ですし、近年で危険視されつつあるキシリトールにしても、歯磨きの原料に気を配れば、大きな危険はありません。

これらに対して、銀杏は秋の公園に大量に落ちており、拾い食いの危険がかなり高いのです。

特に犬を散歩させるような広い道では、景観を考えてイチョウが植えられている場所が幾つもあります。

普段は関心がなさそうだから大丈夫と思っていても、ある時に気まぐれのように口にしてしまう、という例もありますので、イチョウの木の傍を散歩する際には注意しましょう。

食べてしまった後の応急処置

実際に犬が銀杏を食べてしまった後の対処法には、どのようなものがあるでしょうか。

まず、銀杏の中毒は異常興奮が原因ですので、なるべく静かで落ち着きやすい場所へ移動させてあげましょう。

より直接的な対処としては、「吐かせる」という手段が一般的です。

体重に応じてスプーン1~7杯程度の塩を混ぜた水を飲まると、水分を大量に必要としますので、水をとにかく大量に飲ませ、その上で飲み込んだものを吐き出させるというやり方です。

ただし、この方法にしても、絶対に安心という訳ではありません。

既に中毒に苦しんでいる最中、犬が自分で嘔吐してしまうのならともかく、無理に吐き出させようとすると、それがまた痙攣の発作を引き起こす事もあります。

いずれにしても、これらの対処法はあくまでも応急処置であり、早めに獣医の診察を受けさせる事が最良の方法と言えます。

その際には、食べてしまった銀杏の量と、食べてからの経過時間などの詳細を、忘れずに伝えるようにしましょう。

犬に銀杏は厳禁

銀杏は栄養があり、見かけからはそれ程の毒性を持っているとは想像できないので、犬が興味を示していると、ついあげたくなります。

しかし、軽い気持ちで与えた銀杏が命に関わる事もあります。

身近な食べ物が引き起こす、中毒に対する知識を普段から覚えておき、愛犬の健康を守ってあげましょう。