犬を飼っている人は、犬にはちみつは与えない方がいい、と、一度は耳にしたことがあるかも知れません。
しかしなぜそう言われているのか詳しくは知らない、という人が実は多いのではないでしょうか。
犬を飼っている人はもちろん、これから犬を飼おうかなと思っている人にも、その理由をいくつかまとめてご紹介します。
カロリーオーバーになるから
犬は「甘味」に対する嗜好性が高い動物だと言われています。
味を感じるのは、舌にある「味蕾」という器官ですが、基本的な味の要素である甘味・酸味・苦味・塩味・うま味の中で、犬が最も感じやすいのは甘味です。
つまり、一度「おいしい」と感じた甘味は強く記憶され、また食べたいと求めてしまう、ということが起こりやすいと言えます。
例えば、犬の食欲が落ちた時などに、しっかり餌を食べて欲しいからと、はちみつで甘みを足して与えたとします。
すると、その次からもはちみつの甘味がなければ餌を食べたがらなくなってしまう、というような状況になってしまう可能性が高いのです。
はちみつは、人が食べてもとても甘くておいしいと感じるものですから、犬の味覚にとっても魅力的な食品であることは確かでしょう。
しかし極めて糖度が高く、与えすぎるとカロリーオーバーになります。
特に普通の食事を十分に与えているのに、それとは別にはちみつを与えると、簡単にカロリーオーバーになってしまいます。
そうなると、肥満を招く心配がありますし、もっと重大な健康被害をもたらす可能性もあります。
市販されている犬用のおやつには、はちみつを使用しているものがありますので、注意が必要です。
はちみつの甘味がクセになってしまう事態を防ぐためにも、まず与えないということが一番の方法です。
軟便・下痢を招くことがあるから
犬がはちみつを食べると、軟便になったり下痢をしたりしてしまうことがあります。
その理由には、以下のようなものがあります。
まず、はちみつは熱による殺菌処理を行うと変質してしまうために、稀に細菌などが含まれていることがあり、それが原因となる場合です。
はちみつそのものは糖度が高く水分量が少ないために、ほとんどの細菌が生きていくことができない環境ではあります。
しかし、例えば製品にする過程で細菌などが混入し、まだ生きた状態で口にしてしまうと、軟便や下痢を引き起こすことが考えられるのです。
もう一つの理由は、はちみつの糖を分解する酵素の働きが弱い、あるいは酵素を持っていない犬が、はちみつを食べた場合です。
牛乳の乳糖を分解する酵素が弱い、あるいは持っていない人が牛乳を飲むと、下痢をしてしまうことがありますよね。
それと同じだと思っていただければ、分かりやすいのではないでしょうか。
この場合は個体差があり、ほんの少しのはちみつでもダメな犬もいれば、ある程度はちみつを食べても平気な犬もいるでしょう。
それでもやはり、そのような可能性があるのなら、与えない方がいいと言えるのではないでしょうか。
ボツリヌス中毒の可能性があるから
はちみつは、中で細菌が増殖したり、腐ってしまったり、ということは理論上起こりません。
糖度が非常に高く、細菌が生きていくために必要なだけの水分が含まれていないからです。
果物を煮詰めて水分を減らし、砂糖などを加えて糖度を高めたジャムの保存性が、もとの果物より格段に高まる、ということでも分かりますね。
しかし、増殖などの活動をすることはできなくても、はちみつの中で生き続けることができる菌が存在します。
それが、ボツリヌス菌です。
ボツリヌス菌は、「芽胞」と呼ばれる休眠している状態で、はちみつに含まれていることがあります。
その可能性は、5~10%ほどだと言われています。
ボツリヌス菌の芽胞は熱に強く、120℃で4分間(または100℃で6時間)熱しないと、死ぬことはありません。
人間の場合でも、1歳未満のこどもにはちみつを与えてはいけないと言われます。
その理由は、まだ消化器官の発達が未熟なために、腸内に入ったボツリヌス菌の芽胞が発芽・増殖して毒素を出すことがあり、それを体内に吸収することで中毒症状を引き起こした事例があるためです。
犬でも同じことが起こりうるので、特に子犬には注意が必要です。
現在までのところ、犬がはちみつのボツリヌス菌によって中毒症状を起こした、という事例は見つかっていないようです。
とはいえ、危険性はゼロではないので、与えない方がいいことは間違いないでしょう。
はちみつは犬にあげるメリットがない
以上のような点を踏まえると、やはり犬にはちみつを与えることは、やめた方がいいのではないでしょうか。
そもそも、はちみつが犬にとって不可欠な栄養素を含んでいることや、犬にとって有効な栄養素を含んでいる、といったことはないと考えられます。
犬に必要な食品ではありませんし、これだけのデメリットがあるのですから、愛犬の体のことを思ってはちみつは与えないと決断することも大切ですね。