「胴長短足の犬はヘルニアになりやすい」ということは有名です。
実際には遺伝的な影響により、軟骨の成長障害を発症する軟骨異栄養性(なんこついえいようしょう)の犬種がヘルニアになりやすいと言われ、胴長短足ではない犬(ビーグルやコッカー・スパニエルなど)でも幼いうちにヘルニアになる可能性があります。
それでは犬がヘルニアになった際、一体どんな症状が現れるのでしょうか。
ひとりで遊んでいて「キャイン」と鳴く
犬がボールなどを口にくわえて、自分で投げて追いかけて遊ぶという光景は何とも可愛いですね。
そんな遊びの最中にも急に「キャイン」と鳴いたらあなたはどうしますか?
「どうしたの?」と言って近づくと、犬も喜んで何事もなかったような顔をするので、おかしいとは思うかもしれませんが、まさかヘルニアとは思わないのではないでしょうか?
この時、しっぽの振り方を見てください。
通常、健康な犬が喜んで尻尾を振るときは腰やお尻のお肉が動くほどぶんぶんと振っていると思います。
しかし、腰が痛い場合は尻尾をぶんぶんとは振れなくなります。
軽度のうちは尻尾を振ることができますが、だんだん小刻みにしか振ることができなくなるので、しっぽの振り方も健康なうちからよく見ておくと、犬のヘルニアに早く気づくことができるでしょう。
お散歩が嫌いになる
子犬から成犬のうちはほとんどの犬が運動を好みお散歩を嫌がりません。
今までお散歩が大好きだったのに急に嫌がるようになったり、散歩中に座り込んで動かない、けれども自分でぐいぐい引っ張って家に帰ろうとするわけではないといった時は、ヘルニアでなくとも足腰の骨の具合が悪い可能性があります。
「今日は雨だから早く帰りたい」という犬はぐいぐい引っ張って自分の家へ帰ろうとうします。
けれども、どこかに痛みのある場合は飼い主さんを引っ張ることができずに、飼い主さんが気づいてくれるまで(帰る気になるまで)座り込むしかないのです。
犬が散歩を嫌がるのならどこか病気の可能性もあるので、無理にたくさんの運動をさせず、様子を見てみましょう。
いつものベッドで寝ない
室内犬は人間のようにふかふかのベッドやふかふかのクッションの上で眠るのが習慣となっていると思います。
夏の暑い日は別として、普段ならベッドを使うはずの季節にふと見ると今までと違う絨毯の片隅で寝ているといったことが多くなったら、犬が眠そうなときにベッドへ向かうか見ていてください。
ベッドやクッションの前で立ち止まり、前足などでちょと触って、残念そうに絨毯の片隅へ行くのであれば、それはベッドやクッションの高さすら痛みで登れない可能性があります。
ヘルニアになるとちょっとした段差を嫌がります。
家の中を一定のスピードで歩き続ける
いつもなら飼い主さんのそばに来たり、勝手に遊んでいたりしている犬が、なぜか一定のスピードでゆっくりとトボトボ歩き続けていたら何かおかしいと思ってください。
いつもと違う行動は何か理由があります。
1時間もゆっくり歩いていたらどう思いますか?
これは「歩きたい」のではなく「座れない」のです。
犬も座ろうとすると痛くてどうすることもできず、ただひたすらに歩いているのです。
背中をなでると固まる?
背中をなでると固まったり、撫でたときに「キャイン」となくようであれば、飼い主さんも「ヘルニアかもしれない」と気がつくでしょう。
この反応があれば、すぐに病院へ連れて行くことをオススメします。
もちろん、もっと前の段階で気づいてあげられれば病院へ連れて行ってあげてください。
病院へ連れて行くとヘルニアの場合は「すぐに専門病院で手術が必要です」と案内されパニックになるかもしれませんが、冷静になってセカンドオピニオンを考えてください。
初めの病院でヘルニア手術をした場合の完治の可能性(確率)や、ヘルニア手術の失敗した場合の状態などを丁寧に教えてもらったうえで、納得して決断したのであれば問題ありません。
分からないうちに手術して、手術が成功した後に脊髄軟化症(せきずいなんかしょう)になり、背中から血を噴き出して1晩で亡くなってしまう例もあります。
もちろん完治の犬もいますが、少ない上にお金もかかります。
完治の可能性については毎年技術も上がると思いますから、飼い主さん自身でも情報を集めてから決断してください。
支えてあげれば歩ける
さて、手術をしなかった場合に犬がどうなっていくかです。
ヘルニアは軽度であれば内科治療の方法があります。
骨の栄養剤と痛み止めの注射などです。
ヘルニアは腰から下の麻痺が始まると思ってください。
飼い主さんが補助をすると歩けるのであれば、犬の介助用品でお散歩の歩行補助ハーネスがありますので、そういったものを利用してみてください。
四肢すべてが弱いのであれば、胴の部分を包むような介助用品もあります。
ヘルニアの犬はどんどん筋力が衰えていきます。
運動量が減っていくからです。
ペタンと座って歩かない
すでに麻痺が進行して前足だけで犬が歩き回るようになると、飼い主さんの負担がぐっと増えてきます。
歩かなくなったらもうダメかというとそうではなく、犬の足裏の肉球をぐっとかなり強く押してみてください。
健康な犬は反射神経を使わずとも嫌がって足を引っ込めます。
ヘルニアの犬は反応が薄いですが、反射神経でビクっとしたように足に反応があります。
それはまだ足先に神経が通っている証拠になります。
この反応があるうちはなるべく長く神経が通っていてくれるように願を込めて、毎日時間が許す限りマッサージして犬の足に刺激を与えてあげてください。
だんだん反応が薄くなるようであれば、そろそろ車いすの用意をするべきか病院の先生と相談をしましょう。
オシッコが自分でできなくなる
いよいよ麻痺が完全なものになってくると犬は自分の力でオシッコできなくなります。
踏ん張る力がなくなってくるからです。
飼い主さんがオシッコを絞りだす方法を習得して、毎日お世話をしてあげることになるでしょう。
ヘルニアの症状を見極めよう
「犬がヘルニアの時に見せる症状」は軽度なものから重度なものまで色々あります。
いつも家の中で一緒に暮らしている室内犬は異変に気づきやすいかもしれませんが、外飼い犬だと難しいかもしれません。
飼い主さんが日ごろから「いつもの行動」を見て「おかしな行動」に気づくことがヘルニア早期発見の手掛かりになるでしょう。