犬は人間の1億倍と言われる嗅覚を持つと言われています。

優れた足跡追跡能力と臭気能力を活かして、警察の捜査の手助けをしているのが警察犬です。

過酷な勤務なので、第一線で活躍できる期間は意外と短いと言われています。

私達人間のために働いてくれた警察犬達は、引退後、どの様な場所で、どの様に過ごしていくのでしょうか。

警察署の施設で過ごす

警察犬の所属には、警察が直接管理する直轄警察犬と、民間人が非常勤として管理している、嘱託警察犬の2種類があります。

警察が直接管理する、直轄警察犬は全体の1割ほどしかいません。

この直轄警察犬を持たない県もあります。

特に定年はなく、10年ほどで引退する犬が多くなります。

直轄警察犬は、国の所有物なので引退後も譲渡などは認められていません。

そのため、施設を出ることも、原則的には禁止されているのです。

引退後は、施設の中で生涯を終えるまで過ごします。

直轄警察犬の老後が、この様なものだとということを、ご存知ない方も多いのではないでしょうか。

第一線で活躍していた警察犬は、引退後、燃え尽き症候群のような状態になり、落ち込んでしまったり、自分の体を傷つけたり、食欲をなくしたりして数ヶ月で亡くなってしまうこともあります。

もちろん、幸せな老後を過ごしている警察犬達もいます。

しかし、一方で人間のために働いてくれた警察犬たちの老後が、誇り高く幸せなものになるように、私たちも考えなければいけないのではないでしょうか。

飼い主の元で過ごす

嘱託警察犬は、元の飼い主に戻されますが、飼い主が新しい警察犬の育成を始めるケースが多いので、引退した犬にまで手が回らず、あまりケアーされないでいる場合もあります。

そのため、残念ながら長生きできないこともあります。

ただ、直轄警察犬よりは個人の所有となるので、一般の家庭犬のような静かで幸せな余生を過ごす犬も多くいます。

一般の家庭犬のように、愛されながら長年の疲れをゆっくりと癒し、家族の元で最期の時を迎えられるのが、警察犬はもちろん、どんな犬にとっても一番良い余生でしょう。

訓練所経由で里親に出される

警察犬訓練所の所有となっている警察犬は、引退後一般家庭に里親に出されることもあります。

警察犬訓練所は、警察犬になるための訓練を行い、第一線で活躍できる警察犬を育成することが本来の仕事です。

個人が訓練所に自分の所有する犬を預けて、警察犬になるための訓練をしてもらう場合と、訓練所自体が犬を所有して訓練する場合があります。

そうした場合に引退した警察犬は、大切にしてくれる人に里親となってもらうことがあります。

訓練所によっては里親になるための厳しい条件を設けているところが多く、こうして見つけられた新しい里親のところでは、幸せな余生を過ごすことができます。

警察犬になれるのは、ほんの一握りの優秀な犬なので、高度な訓練の入った素晴らしい犬の里親になりたいという人は多くなります。

飼い主の元で様々な活動をする

何度も警察犬になる試験に落ちて、それでも諦めずに頑張って警察犬になった、ラブラドール・レトリバーの、きなこ、という警察犬のことをご存知の方も多いのではないでしょうか。

きなこの警察犬になるまでの話は、映画化もされました。

きなこは無事に警察犬の試験に合格し、嘱託警察犬として活躍しましたが、その後引退して、現在は香川県の広報活動や県警の様々な啓発活動を行っています。

きなこの子供や孫も警察犬となり、きなこの活動を引き継いでいます。

警察犬として引退した後に、この様な違った形で活動を続けている引退犬もいます。

海外の警察犬の引退後はパートナーと過ごす

アメリカの警察犬は、パートナーの警察官と常に行動を共にしながら任務にあたります。

そのため、引退後もパートナーである警察官の家に引き取られることがほとんどです。

犬にとって大好きなパートナーと離れることは、何事にも代えがたい悲しみです。

人々の平和や安全を守るという誇りある仕事を共にしてきたパートナーと、最後まで一緒に過ごせるということは、警察犬にとって最高に幸せな老後だと言えます。

日本の警察犬たちも、その様な老後が過ごせることが本来ならば一番良いのですが、アメリカと日本という国の動物に対する意識の違いや、システムの違いもあるため、なかなかその様にはいきません。

警察犬たちの幸せな余生

引退後の警察犬達は、長年の激務から解放され、警察や訓練所、一般家庭などで、短い期間かも知れませんが、幸せな余生を過ごす犬がほとんどです。

中には引退後のストレスなどで不幸な余生を送ることになる警察犬もいますが、そのような警察犬が一頭でも少なくなることが望まれます。

死後も手厚く葬られ、年に2度、春と秋のお彼岸の時期に慰霊祭を執り行ってもらっています。

しかし、一番大切なのは警察犬への敬意と感謝の思い持ち、幸せな余生を過ごさせてあげることです。