少し前まで元気だった子猫が、ある日突然死んでしまう。
寿命の場合と違い、心の準備ができていない飼い主さんにとっても、大変なショックであり、悲しみでしょう。
猫の突然死に繋がる要因には、どのようなものがあるのでしょうか。
また、予防の為にはどうすれば良いのでしょうか。
心筋症による発作
猫に限らず、人や犬などにおいても、心臓の疾患は、突然死に繋がりやすい病気です。
心臓病と一口に言っても様々ですが、猫の場合、心臓の筋肉が不全を起こしてしまう、いわゆる心筋症が大半を占めます。
心筋症は、心臓の壁が厚くなって送り出す血の量が減る「肥大型」、逆に壁が薄くなって血を送り出す力が弱くなる「拡張型」、心臓内部にある繊維質の膜が厚くなり、心臓が広がらなくなる「拘束型」の三つに分けられます。
どの型が発症するかは、個体差や年齢によって異なりますが、全体としては肥大型が最もよく見られるようです。
症状としては、循環する血液量の減少による呼吸困難の他、血の塊が血管に詰まってしまう血栓が起こり、激しい痛みや手足の麻痺などを引き起こす恐れもあります。
心筋症については先天性の要素も多く、根本的な治療は不可能とされています。
治療においては現状維持を目的とし、投薬や生活習慣の改善等の手段で、心臓に負担のかからない環境を作り上げていく事が第一です。
寄生虫によるアレルギーや呼吸困難
猫の寄生虫の中でも、最も猫の突然死に繋がりやすいのが犬糸状虫、通称フィラリアです。
名前からもわかるように、これは本来、犬に寄生するものとして知られてきましたが、最近になって猫の肺動脈などから発見される例も出てきています。
媒介ルートとしては、犬を吸血した蚊の体内にフィラリアの幼虫が入り込み、更にその蚊が猫を吸血した際に、幼虫が猫の体内に入る、と推測されています。
フィラリアが突然死を起こす要因は、まず肺動脈で死滅したフィラリアの死骸に、猫の身体がアレルギー反応を起こしてしまった場合。
もう一つは、死骸が肺動脈に詰まってしまい、急性の呼吸困難が引き起こされた場合です。
これらの前には、咳や嘔吐などの症状が出ますので、早い段階での治療が必要となります。
ただ、元々猫の病気でない事もあり、症状が目立たず見過ごされる事もありますので、定期的に予防薬を投与し、まず寄生されないようにする事が重要です。
食べ物や薬品による中毒
猫に与えてはいけない食べ物として、一番に挙がるのがタマネギです。
ネギ類やニラ、ニンニクには、アリルプロピルジスルファイドという成分が含まれています。
これが体内の赤血球を破壊してしまう為に、急性の貧血や血尿を引き起こしてしまうのが、一般に猫のタマネギ中毒と呼ばれる症状です。
これと並んで危険なのが、チョコレートによる中毒で、原因は中に含まれているカカオの主成分・テオブロミンです。
これは猫が上手に消化できない成分である為、中毒を起こす原因となります。
その他、キシリトールガムやレーズンなど、最近になって新しく報告されている中毒症状も存在します。
いずれも症状としては、嘔吐や下痢、痙攣などの発作が多く見られ、発症までの時間や症状の重さもまちまちですが、重篤であれば突然死の危険があります。
対策としては、上記の食べ物を絶対に与えない事はもちろん、猫の手の届かない所に保管しておくことも大切です。
猫は好奇心が強く、少し隠しただけでは、すぐに探し出して口にしてしまう恐れがあります。
例えば鞄に入れるのなら、ジッパーを固く締める等、物理的に口をつけられない場所に保管するようにしましょう。
ウィルスによる発病
猫のウィルスによる病気の中で、突然死の可能性が高いのは、パルボウィルスによって引き起こされる「猫白血球減少症」が挙げられます。
これは猫伝染性腸炎とも呼ばれ、激しい嘔吐や下痢の症状を引き起こします。
また、ウィルスによって白血球の数が大幅に減少し、抵抗力が極端に低下しますので、脱水症状などにより、体力が著しく落ちていきます。
早期に発見して治療すれば回復の見込みはありますが、特に抵抗力の弱い子猫の場合、発症から衰弱に至るまでがとても早く、間に合わない場合も多く見られます。
感染のルートは、既に感染した猫や、その猫の排泄物が原因とされていますので、便器の消毒は特に念入りにする必要があります。
最も有効な対策はワクチンを打つことで、これによってほぼ確実に予防できます。
また、原因であるウィルスを直接退治する薬はありません。
上記の症状が出て感染が疑われた時は、対症療法が不可欠ですので、速やかに獣医の診察を受けさせましょう。
外傷、あるいはそれによる血腫
病気ではなく、怪我によって突然死してしまう事もあります。
猫はよく高い所に登りたがりますが、この時、高い所に登りすぎて降りられなくなってしまうという猫が時々います。
この時、無理に飛び降りようとした為に着地に失敗して、頭などを打ってしまうと大変危険です。
例えその場では問題がないように見えても、出血が頭の内部で固まって血腫となり、それが脳を少しずつ圧迫すると、数日後に突然死んでしまう事もあります。
特に子猫は、成猫と比べて動作も未熟である為、転落事故の可能性も高いのです。
ただ、これは猫の習性でもあるので、あまりきつく禁止すると、それがストレスになって体調を崩してしまう場合もあります。
事故防止のためには、周りと比べて極端に高い場所を作らないよう、家具などを配置しておくと良いでしょう。
自宅周辺の環境によっては、完全室内飼育も検討する必要があります。
子猫の突然死を防ごう
成猫と比べ、抵抗力の弱い子猫は、発症してからの治療が間に合わない事も多く、悲しい思いをされた飼い主さんも大勢いらっしゃいます。
幸いな事に、近年は突然死の原因もかなり判明しており、適切な対策を取っていれば、防ぐことは十分に可能です。
苦しむ子猫に、手を施すまもなく最後を見守るという、悲しい事にならないよう、普段から正確な情報を仕入れ、病気や事故の予防・防止に努めていきましょう。