「赤ちゃんはコウノトリが運んでくる」という言い伝えで有名なコウノトリですが、皆さんはこのコウノトリが一体どの様な鳥かご存知でしょうか。

日本人なら名前くらい知っているでしょうが、いざどんな鳥なのかと聞かれたら返答に困ってしまうでしょう。

そんな問いにもすぐに答えられるように、コウノトリについてご紹介します。

コウノトリの基本情報

コウノトリはコウノトリ目コウノトリ科に分類される鳥で、広い意味ではペリカンやトキの仲間でもあります。

生息地は東アジアに限られ、ロシアや中国北部を中心に生息しています。

今でこそ国の天然記念物として指定されているコウノトリのですが、かつては日本国内にも広く分布していました。

しかし明治期になると庶民の狩猟の解禁による狩りの対象となってしまいます。

住処を作る木の伐採、また戦時中の食料として乱獲されことでも一気にその数を減らし、1956年には生息数が僅か20羽にまで減ってしまいました。

1971年には野生に生息する最後のコウノトリが死亡してしまった為、実質的に日本のコウノトリは絶滅してしまいました。

しかしコウノトリの復活を望む声は多く、多摩動物公園では1988年に国内初の人工繁殖に成功しています。

2005年には兵庫県で飼育・繁殖した個体を野生に還す試みが実行されました。

現在ではコウノトリの飼育数は世界で350羽ほどで、そのうちの100羽以上が日本で飼育されていると言います。

コウノトリの生態

コウノトリは主に湿地や水田に生息する大型の鳥で、体長は110㎝~125㎝、体重は4~6㎏にもなり、日本に生息する水鳥の中では最大級の大きさになります。

主にロシアや中国東北部で繁殖し、その後中国南部まで渡って越冬します。

日本には越冬の際に立ち寄る事もあり、日本に生息していたコウノトリは留鳥だったと言います。

主な食性は肉食性で、水田でカエルや魚、バッタなどの昆虫、時にはネズミなどの小動物も捕食します。

かなりの大食漢で、1日に500gものエサを食べると言います。

コウノトリは全身を白い羽で覆われた姿をしていますが、風切羽だけは真っ黒で、クチバシも黒味がかった褐色をしています。

脚は赤く、目の周囲にも愛リングと呼ばれる赤い模様があるのが特徴です。

また成鳥は鳴き声を出さないことが有名で、鳴き声の代わりに「クラッタリング」と呼ばれるクチバシをカタカタ鳴らす行為を行います。

主に樹上で巣を作り、1回の産卵で3~4個の卵を産みます。

巣作り・子育て共に雄と雌の2匹で行う為、夫婦仲が良いとされ、それが「赤ちゃんはコウノトリが運んでくる」と由来になったとも言います。

コウノトリの歴史

上記したように、コウノトリはかつて日本ではごく普通に見られる鳥でした。

特に江戸時代までは水田などに生息するという性質上、田園地帯では当たり前のようにコウノトリが飛んでいる光景が見られたそうです。

コウノトリは吉兆を表す縁起の良い鳥であると保護されることがあった一方で、田畑を荒らす害獣とみなされてきた一面もありました。

このことが後のコウノトリ乱獲に繋がったのではないかと言われています。

明治25年になると狩猟規制の配布が行われ、ツルやツバメ等は保護の対象になりました。

コウノトリは害鳥と見なされていた為保護対象にはならず、コウノトリはますます姿を消していく事になりました。

昭和30年になってしばらくコウノトリの保護活動が高まり、翌年31年になってコウノトリは天然記念物に指定されました。

その時にはすでにコウノトリは20羽にまで減少しており、存続は危ぶまれていました。

昭和34年の野生での繁殖を最後に、コウノトリは繁殖が見られなくなってしまい、昭和37年にコウノトリ保存のための人工飼育が決議されました。

しかし昭和46年に最後の野生のコウノトリが死亡したことで、日本から野生のコウノトリは消えてしまいました。

コウノトリの一生と寿命

コウノトリは卵を産むと、オスとメスが揃って温め、孵化した後も暫くは面倒を見ます。

しかし生後2ヶ月前後になると、親鳥たちはヒナを放置するようになります。

多くの鳥類は群れを形成して集団で生きていくのに対し、コウノトリは単独で生きていく為、この頃には既に親鳥はヒナを独り立ちさせるのです。

巣立ったヒナはその後たった1匹で生きていく事になります。

コウノトリは非常に繊細で好き嫌いが激しい性格をしています。

その為繁殖期になっても、少しでも気に入らない相手だと繁殖行動は起こしません。

それどころか気に入れない相手には攻撃を加えて追い払ってしまう程です。

その為中々夫婦となる事がありませんが、一旦夫婦となったらそれ以降は一生その相手と添い遂げると言われています。

コウノトリの寿命は、過去に保護された個体は34年飼育され、別の個体は40年以上飼育されていることから、少なくとも飼育下であれば30年以上は生きると考えられています。

もっとコウノトリの数が増えれば正しいことも分かってくるのでしょうが、現状では数が少ないことと、野生の個体が絶滅してしまった事などからはっきりとしない点が多いです。

コウノトリのことを知ろう

コウノトリは認知度の高さの割にはっきりと生態が分かっていない点が多い鳥です。

例えば雌雄の違いについても判断基準が曖昧だったりします。

これは詳しく研究される前に数が減ってしまったことが原因だと言えるのですが、近年では徐々にその数を増やしているようで、国内でも野生に還った個体が存在しています。

コウノトリの数が増えれば、もっと詳しい生態が解明されるかもしれません。