猫というと、陽だまりの中で気持ちよさそうに丸くなって寝ている姿を想像する方も多いのではないでしょうか。

日の光を求めて、太陽の動きに合わせて寝る場所を移動する「猫時計」の姿もよく見られます。

しかし、ひなたぼっこをしていたら眩しくないのかな、暑くないのかなと不思議に思ったことはありませんか。

そもそも猫は、暗くて狭い場所も大好きな動物です。

ではなぜ猫はひなたぼっこが好きなのでしょうか。

ここでは3つの理由をご紹介します。

体温維持のための、ひなたぼっこ

一つ目の理由は、正に日の光の中で寝れば「温かいから」ということです。

哺乳類である猫もちろん恒温動物であり、自分の体内でエネルギーを燃やし熱を作ることで体温を維持しています。

しかし、熱を作るためには多くのエネルギーが必要となります。

特に寝ているときには代謝が低下するため、体内で生み出される熱が少なくなってしまい、体温が大きく下がってしまいます。

人間ならば服を着たり脱いだりして体温を調節することもできますし、寝る時には布団をかけることで就寝中の体温低下を防ぐことができます。

しかし、猫にはそのようなことはできません。

そのため、温かい日の光の中で寝ることで、体を温め体温の低下を防ぎ、体内で熱を生み出すエネルギーの消費量も節約しています。

猫が陽だまりの中で気持ちよさそうに寝ているのは、日の光という温かい布団に包まれているからです。

ダニや細菌から毛を守り、清潔に保つため

二つ目の理由は、ひなたぼっこにより、毛を清潔に保つことができるからです。

人間もお布団のダニを駆除するために布団を干します。

それと同様に、猫も毛を日光に当てることでダニなどの体についた害虫を駆除しています。

猫にとってダニは大きなストレスの原因となります。

とてもかゆく、肌を刺してチクチクしたりもするので、ダニ駆除は猫にとって必須の作業です。

ひなたぼっこをすれば、カーッペットや布団、土などから毛に移ったダニを退治することができます。

また、日光の熱によって体表面の湿気を蒸発させることで、皮膚病の防止にもなります。

外で過ごしている猫は雨や空気中の湿気によって毛が濡れることが多くありますし、毛づくろいで体をなめることでも毛には水分がつきます。

これをそのままにしておくと菌が繁殖しやすく、また、ダニやシラミなどの寄生虫が寄生しやすい環境となり、そのような状態が続くと最悪の場合皮膚病にもなりかねません。

そこで、ひなたぼっこをすることで、毛の表面についた水分を蒸発させ、毛が常に乾燥している状態をキープします。

更に、紫外線を浴びることは毛についてしまった細菌を殺菌したり消毒したりすることにもつながります。

このように、猫にとってひなたぼっこは清潔な毛を保ち、皮膚病を防ぐために欠かせないものです。

ビタミンD生成のため

三つ目の理由は、ひなたぼっこをすることで、体内でビタミンDが生成されるからというものです。

人間と同じように、哺乳類である猫も紫外線に当たることでビタミンDが作られます。

ビタミンDとほかのビタミンの違う点は、ビタミンDの多くは食事で摂取するのではなく、肌から紫外線を吸収することで体内で作られるという点です。

猫の場合、紫外線を浴びると毛の一本一本でビタミンDが作られ、それを毛づくろいをすることによって体内に取り込みます。

ビタミンDは骨を丈夫にし、体内のカルシウムの吸収を助け、筋肉や神経細胞の働きをサポートし、免疫力をあげてくれるなど、数々の大切な働きをする栄養です。

健康維持のためになくてはならないビタミンD、食事からの摂取では補いきれないビタミンDを生成し体内に取り込むために、猫はひなたぼっこをして、紫外線を浴びているのです。

この説は広く言われていることですが、これはあくまでも一説です。

1999年に行われた研究ではこれとは異なる結果が示されています。

その研究では、室内であっても屋外であっても、また、太陽光であっても人工の紫外線であっても、子猫のビタミンD量にはさほど変化が見られなかったと報告されています。

そのため3つ目の理由は、そのような可能性があると言われている、という程度に認識しておけばいいでしょう。

ひなたぼっこに隠された深いわけ

ただ気持ちよさそうにひなたぼっこをしているように見える猫ですが、彼らはその間にも毛を清潔に保ち、健康を維持するための栄養を作っているのです。

正に太陽の光は恵の光です。

猫好きの方は陽だまりで気持ちよさそうに寝ている猫を見ると、つい触ったり近づいたりして起こしたり、逃げられてしまいがちです。

これからはそのようなことを考えつつ微笑んで見守ってあげてはいかがでしょうか。

また、猫を飼われている方は、カーテンを開けて日の光を積極的に部屋に取り込むなどして、猫がひなたぼっこをできる空間をぜひ作ってあげてください。