猫が身体をなめる理由。なめることで猫は健康を維持している

何気なく我が家の飼い猫を見たときに、自分の体を丹念になめていることはないでしょうか。

猫を飼っている人なら、間違いなく見たことがあると思います。

起きている時間のうち3割は身体をなめているとされている猫ですが、なぜこのような行動を取るのでしょうか。

体をキレイにし、においを消している

ご存知かもしれませんが、猫はキレイ好きです。

キレイ好きなので、体についたチリやホコリ、抜けた体毛などはなめとってしまうのです。

こうすることによって体を清潔にし、皮膚炎などを自ら防止しているのです。

また、体をなめることで、体毛にノミが付くことを防ぐこともできるとされています。

猫は比較的手間のかからないペットだとされていますが、それは自ら体を清潔に保っているため問題が起こりにくいということです。

付け加えると、猫は本来、狩りをする肉食獣です。

狩りをする際にもっとも問題になるのは、自らのにおいによって獲物に存在を知られてしまうことです。

このため、なめることによって自らについた排泄物のにおいなどを消しているのです。

猫を撫でてあげたとき、何かが気に食わなかったかのように自分の体をなめることがありますが、これは自分の体についた人間の手のにおいを消しているのです。

猫の鼻は人間よりもはるかに性能がいいですから、人間が気づかない匂いでも気になるのです。

ペットとして、猫は匂いの少ない部類に入りますが、これは足の裏の肉球にしか汗腺が存在していないため、足の裏以外には汗をかかず、体に匂いがつかないようになっているのです。

これに加えて体をなめて匂いを消していれば、匂いで気づかれることはほとんど無いといっていいでしょう。

現代社会における猫は愛玩動物の意味合いが強く、かつてのようにネズミを捕るなどの狩りの機能は必要とされなくなってきていますが、狩人としての意識はいまだ健在だということですね。

体温を調節している

実は猫の体に備わっている体温調整機能は、あまり優秀とはいえません。

気温の高いところにいる場合、人間の場合は全身から汗をかくことで体温を下げるようになっています。

水分不足が熱中症の原因になってしまうのは、この汗の材料が不足してしまうからです。

ところが猫の場合、上に書いたように汗腺が足の裏の肉球にしかないため、足の裏しか汗をかくことができません。

汗をかかなければ暑い場所でも体温を下げることが簡単にはできないため、必然的に体温が上がり、グッタリとした状態になります。

猫が夏場にだらしない格好をしているのはこのためです。

猫はもともと水の少ない砂漠の生き物だったとされているため、少量の水分でも生きられる仕組みになっています。

逆にいえば大量の水分を摂取する猫は、腎機能などに異常が起きている可能性があります。

自分の体をなめることで唾液が体表につき、その気化熱を利用して体温を下げる仕組みになっているのです。

この仕組みによって、より少量の水分で体温を調節することができるのです。

また、砂漠は一日の寒暖差が激しいため、昼間に体温を下げるだけではなく夜に体温を下げないことも必要になってきます。

猫は同じように体をなめることで、毛の中に空気を取り込んで、体温を逃さないようにすることもできるのです。

体温が上がりすぎたり下がりすぎたりしないようにしないよう、自分が意識的に調節しているのですね。

自分をリラックスさせる

意外と気づいてないかもしれませんが、猫が体をなめるときは、けんかをしたとき、飼い主に怒られたとき、何かに驚いたときなど、極度の緊張の後にも多いのです。

これは、猫が自分をリラックスさせるために行っていることで「転移行動」といわれています。

体をなめることによって、相手に不安感を悟らせないようにしたり、自分の不安な気持ちを紛らわせたりすることができるのです。

これによってメンタル面の健康を保っており、これは猫の精神状態や体調を把握する目安にもなります。

例えば飼い猫が頻繁に自分の体をなめるような場合は、何らかの大きなストレスを抱えていて、それから逃れようとするために「転移行動」を繰り返している可能性があります。

また、こまめに体をなめていた猫がほとんど毛づくろいをしなくなってしまった場合は、何らかの病気を抱えていて体調が悪化している可能性があるのです。

ですので、細かい動作に注意を払うことが大切です。

身体をなめることで、健康を保っている

猫はその外見もあって、あまり物事を深く考えていないと見られがちですが、自分の体をなめるという行動ひとつとってみても、いろいろと考えられています。

もし飼い猫が自分の体をなめているのを見たら、それは自分なりに体調管理をしていることの証でもありますから、「えらいえらい」と撫でてあげるのもいいかもしれませんね。