現在、多くの犬は人間の良き伴侶動物としての役割を求められ、ペットとして飼われています。

ですが、犬は元々は人間の仕事を手伝うため、様々な用途に合わせて姿かたちや性質を特化するように改良を重ねられてきました。

特別な訓練を受け、人に使役される犬を使役犬と呼びます。

今回は、代表的な使役犬をご紹介します。

盲導犬

視覚障害のある方が外出する際、障害物を避けたり、曲がり角で曲がったり、交差点を判断して止まったりして、目的地まで安全に誘導するように訓練を受けた犬のことを言います。

盲導犬を使役する為には、視覚障害のある方にも犬と一緒に訓練を受ける必要があります。

盲導犬に適した犬は性格が温和であること、人を誘導するので犬の体もある程度の大きさが必要である等の適正があり、ゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーなどが盲導犬としてよく使われる犬種です。

しかし、その犬種であればどんな犬でもなれる訳ではなく、より盲導犬に適した素質を持つ血統を守るため、計画的に繁殖がされています。

聴導犬

聴覚障害のある方が日常生活を送るためのサポートをしたり、危険を知らせたりするように訓練を受けた犬のことを言います。

聴導犬は色々な音を聞き分け、聴導犬利用者を音源まで導いたり、睡眠時にも警報機の音を知らせ危険を知らせる役割を持っています。

チャイムの音やタイマーの音が鳴った時、聴導犬は利用者の体に触れ、音が鳴っていることを知らせ、その音がなっている場所まで導いてくれます。

他にも赤ちゃんの泣き声などにも反応して知らせてくれます。

盲導犬のように特定の犬種である必要はないため、いろいろな大きさや犬種の犬が活躍しており、行き場のない犬が訓練を受けて聴導犬として活躍している場合もあります。

介助犬

手足の不自由な方のために、ドアの開閉をしたり、リモコンや携帯電話を持ってきたり、利用者の非常時に人を呼んでくるような訓練を受けた犬のことを言います。

介助犬は全ての犬が同じ訓練内容という訳ではなく、利用者によっても介助を必要とする内容が違うので、利用者に合わせた訓練がされます。

犬種に指定はありませんが、日本では主にラブラドールレトリーバーやゴールデンレトリーバーが多く、アメリカでは小型犬の介助犬も多く活躍しています。

犬種に限らず、性格は温和で人と作業するのが好きで、集中力がある犬が介助犬として向いています。

災害救助犬

海や川で溺れた人を救助したり、地震や土砂崩れや雪崩などで行方不明になってしまった人を探し出すように訓練を受けた犬のことを言います。

人が入れない場所に入って行って、わずかな行方不明者の臭いをかぎ分け探し出すという犬の能力を最大限に活かした仕事をする犬たちです。

警察犬は地面の臭いを嗅いで臭いの発生元を追跡しますが、災害救助犬は空気中に浮遊する臭いを嗅ぎ分けるという方法で行方不明者の捜索にあたります。

災害はあらゆるシチュエーションが想定されるので、災害救助犬もあらゆるシチュエーションに備え訓練を受けます。

基本的に災害現場は足場が悪いことが多いため、がれきの上などの足場の悪い場所に慣れる訓練だったり、海や川で溺れた人のもとに浮き輪を泳いで持っていくというような訓練だったりします。

警察犬

警察犬の仕事は大きく3つに分かれており、人間の残したわずかな臭いを嗅ぎ、追跡し、犯人や犯人の残した遺留品、行方不明者の足跡を発見する追及活動。

犯罪現場に遺留品が残されていた場合、容疑者が後に判明した場合にその遺留品と容疑者の臭いを嗅ぎ分けるという臭気選別活動、一定の地域内から人や遺留品を探させる捜索活動に分けられます。

警察犬には各都道府県の警察が飼育管理・訓練をしている直轄犬と、一般の人が飼っている犬を訓練し、毎年各都道府県警察開く審査会で先行され指定される嘱託犬とがいます。

警察だけでは犬の飼育管理・訓練をする財政的な問題と人件的な問題があるため、嘱託警察犬という方法が採用されています。

探知犬

国際空港や港などで、荷物の中に麻薬が混入していないか嗅ぎ分ける麻薬探知犬、火薬の臭いを嗅ぎ分けテロなどを未然に防ぐ爆発物探知犬などがいます。

また、ガン患者の体内から発せられる特有の臭いを嗅ぎ分けて、ガンの早期発見に役立つことが期待されるガン探知犬や、糖尿病患者が低血糖を起こしたときに発する特有の臭いを嗅ぎ取り、いち早く低血糖を知らせてくれる低血糖探知犬などがおり、人の医療に役立つことが期待されています。

人間の生活を支える使役犬たち

昔も今も、犬は人間とともに生活し、人間の仕事を手伝ったり犬の能力を最大限活かして人を助けてくれています。

日本ではまだまだ使役犬に対しての理解が得られない場合も多く、理解が得られないことは使役犬の育成にも影響を及ぼします。

ペットとは違う役割を持ち、私たちが犬の助けを必要としなければならなくなる場合もあります。

これからも人間の良きパートナーとして存在してもらうためにも、使役犬への正しい理解が必要なのではないでしょうか。