昔から日本人の生活の中で親しまれてきたヤモリという存在。

今でこそ「気持ち悪い」と思われがちですが、昔はありがたい存在として親しまれてきました。

それでは、なぜヤモリは家にとって良いものだと言われてきたのでしょうか。

ヤモリと言う名前は「家守」

ヤモリと言う名前は、家を守るので「家守」とされたと言う説があります。

また、似ている名前で「イモリ」と言う水生生物がいます。

こちらは井戸などに住んでいるため「井守」としたという説があります。

どちらも生活に密着した場所に住んでいて、人間に向かってくることもなく、とても大人しい性格をしています。

ですので、人間もヤモリがすぐ傍に居たとしても、何も身構える必要は無く、グロテスクで好みが両極される容姿はさて置き、安心して共存できます。

元々は南の国の生き物で、寒い冬が苦手です。

岩の陰や戸袋の中などで冬眠をし越冬します。

ヤモリは人のためになっている

ヤモリは夏場活発に動き回ります。

夏と言えば、蚊やハエ、蛾やゴキブリなど、出来れば家の中には入れたくない虫たちが、窓から漏れる部屋の明かりや玄関の明かりなどに集まってきます。

夜、ふと窓を見ると細かい虫が無数に集まってきている、などという事があるはずです。

そのような時こそ、ヤモリの出番です。

ヤモリは夜行性で肉食性。

夜間、明かりの下に集まった虫たちを、気付かれないようにそっと近寄っては食べてくれます。

ヤモリの手のひらには細かい毛が沢山付いていて、その毛がガラスなどに密着し忍者のように窓や壁を伝って歩いては、虫を食べます。

その結果、家の中に進入してくる嫌な虫たちを退治してくれているわけです。

昔は電気など無かった

よく、昔を題材にしたテレビドラマなど見かけると思いますが、夜になると外灯も各家庭には電気も無く真っ暗になり、頼りになるのは月明かりだけです。

しかし、そんな中にぼんやりと明かりを灯している家があります。

昔の電気など各家庭に無かった頃、窓から光を漏らす家があるとすれば、よっぽどのお金持ちの家に違いありません。

先に申し上げましたが、ヤモリは明かりに寄ってくる虫を捕食するために明るいところへやってきます。

ですので、その昔、ヤモリがやってくる家はお金持ちの家に限られていたわけです。

ヤモリが集まってくる家はお金持ちの家、庶民がそう思うのも無理はありません。

結果として、ヤモリがいる家はお金持ちの家、と言われ、お金持ちはヤモリに家を守られているかお金持ちなんだ、と妬み半分に言われてもおかしくない訳です。

毒もとがった歯もない

爬虫類、特に蛇の仲間は毒を持つものが多く、前歯も尖っているため、素手で触って噛まれようものなら命を落とす危険さえあります。

ヤモリには小さな歯があるだけで、蛇のような毒も牙もありません。

ですので、オススメはしませんが、素手でも捕まえられます。

捕まえると、小さな声で「チーチー」と、鳴きます。

普段鳴かないヤモリが鳴くのは自分の縄張りを主張するときと求愛するときだけなので、捕まえたとき鳴くのは悲鳴なのかもしれません。

また、トカゲの仲間であるヤモリは、捕まえたときに自ら尻尾を切ることがあります。

再生しますが、一度切れた尻尾は見た目が元に戻っても、その中にある尻尾の骨が再生することはありません。

ですので、「また生えてくるから大丈夫」と言いますが、本当は大丈夫ではないのです。

ヤモリを飼ってみる

家を守ってくれるヤモリ。

だったらいっその事自分で飼ってみよう。なんて思っていませんか?

ヤモリを飼うにはそれ相応の覚悟が必要です。

まずは、エサの問題があります。

ヤモリは生きている虫を食べるので、生きている虫を手に入れる必要があります。

ペットショップに行くとコオロギを売っていますが、このコオロギをそれなりの量購入し部屋に置いておくと言う行為、あまり気持ちの良いものではありません。

野生のヤモリは小さな蜘蛛や蛾を主に捕食しているので、これらを捕まえてきて与えても良いでしょう。

別の方法に、バナナなどショウジョウバエが湧きやすい食べ物をケースに入れ、ショウジョウバエが湧くのを待つ方法もありますが、これも気持ちの良いものではありません。

生きているエサがどうしても苦手と言う方は、ピンセットなどで比較的新しい虫の死骸、特に前述した虫の死骸などをピンセットで生きているかのように目の前で動かしてやり、その匂いをも嗅がせてやることが必要です。

また、どうしてもエサをを食べない場合は、室温、ケース内の温度が低いことが考えられます。

動物全般そうなのですが、水分量が足りない場合も食欲が落ちるので、水は常にたっぷりあげます。

また、ヤモリは夜行性で昼間は何かの影に隠れています。

その為、ケースの中には石や木など容易に身を隠す為のものが必要になります。

以上がヤモリを飼う場合の注意点ですが、出来るだけ自然の中でそっとして置いてあげた方が、より家を守ってくれそうな気もします。

家を守る、ありがたいヤモリ

ヤモリは夏の暑い時期に家に明かりに集まってくる不快な虫たちを駆除してくれる、人間にとってはありがたい爬虫類です。

家の中に小さな虫が入らないように明かりの下で家を守ってくれていると言っても過言ではないでしょう。

間違えて、家の中にヤモリが入ってきてしまったら脅かさないように外に誘導してあげてください。

きっと家を守ってくれます。

その見た目から「気持ち悪い」なんて嫌わずに暖かい心で、家族の一員として迎え入れてあげ、興味本位で捕まえたりせず、夏の夜、窓ガラスの向こうにくっついていたら「よろしくね」の一言でもかけてあげたら、より沢山の虫を駆除してくれるかもしれません。