それほど普段から馴染み深いというような鳥ではありませんが、「ヨタカ」という名前はどこかで聞いたことがありませんか。

きっと、学生の頃に、宮沢賢治の「よだかの星」を読んだことがある人も多いのではないでしょうか。

そこに登場した「よだか」が、今回ご紹介するヨタカです。

ヨタカは鷹やフクロウとも違い、まだまだ謎の多い鳥なのですが、その生態についてまとめてみました。

ヨタカの外見的特徴

ヨタカの体長は約29cmと言われていますが、それ以上になる個体も多くいます。

一見するとハトよりは少し大きく感じるでしょう。

カラスほどではありませんが、わりと大きなサイズの鳥です。

全身の羽はいくつかの色を組み合わせて、かなり複雑なまだら模様を作っています。

色は総じて地味な色で、グレーや黒、茶系の褐色になっています。

頭部は大きめで、全体的に平ベったくのっぺりした形をしています。

口は左右には大きいのですが、くちばし自体は小さめで、正面から見ると精悍さのようなものはありません。

こうした体や体つきの特徴から、ヨタカはフクロウやミミズクと勘違いされることも多くあります。

また、漢字では「夜鷹」と書きますが、タカともまったく違う鳥です。

ヨタカの生態

フクロウと似ている姿形から想像できるように、ヨタカは日が落ちてから活発に行動する夜行性の鳥です。

主な食べ物は昆虫で、大きな口を開けたまま飛び、そのまま口に入った昆虫を食べてます。

フクロウは積極的に狩りをしてネズミなどを食べているので、それと比べるとちょっと変わった方法と思ってしまいます。

口を開けて飛んでいるだけで、ちゃんと食べていけるのかなと心配になります。

昼間はと言うと、木の枝の上に止まって休んでいることがほとんどです。

複雑な羽の模様は、こうした樹木の枝に擬態するのに大いに役立っています。

ヨタカは木の上に巣らしい巣は作らず、地上で卵を産んで温めます。

地上でも、体の色や模様が枯れ葉や地面の保護色になり、見つけるのはなかなか大変だったりします。

ヨタカは渡り鳥

ヨタカは日本では夏鳥とされ、南北を移動する渡り鳥の一つです。

九州から北の地域で、春から夏にかけて繁殖を行うために北上してきます。

日本では全国で見ることができ、低地の雑木林や林道などでその姿を見かけることができます。

冬になるとフィリピンやインドなどの温かい地域で越冬をするために南下するようです。

ヨタカの特徴的な鳴き声

ヨタカは「キョキョキョキョ」と、単調ですが特徴的な鳴き声をしています。

うまく周囲の木々などに擬態しているので、姿は見えなくても、鳴き声は耳にしたことがあるかもしれませんね。

古くからその特徴的な鳴き声から「キュウリキザミ」や「ナマスタタキ」などという別名があるほどです。

鳴き声を聞くと、「ああ、この声か〜」と納得できる人も多いのではないでしょうか。

また、抱卵中に敵が近づいたり命の危険を感じると、翼を大きく広げて声をあげて威嚇することもあります。

ヨタカの寿命

ヨタカの寿命は約10年くらいだと言われています。

大人のヨタカの天敵となるのは、渡りの途中にヨタカを捕食するハヤブサなどの猛禽類です。

それ以外にも、地面で卵を温めているので、猫や犬、イタチなどの地上の肉食動物も天敵になります。

大型の蛇や鷹も、抱卵中のヨタカや小さな雛たちにとっては脅威となる存在です。

ヨタカは最近数が減ってきている

ここ最近、ヨタカは準絶滅危惧種として、数の減少が心配されている動物の一つでもあります。

以前は西日本でよく見られていましたが、そうした地域でも珍しいとされるようになってきてしまいました。

日本での数が減っているのには、ペットのイエ猫が野生化した野猫の増加が原因ではないかと言われています。

そうしたの猫が増えることで、落ち着いて生活したり繁殖できる場所が減ってきてしまっています。

ヨタカの数の減少の最も大きな原因は、東南アジアの森林開発です。

雑木林や低地の山林など里山で生活する鳥のため、経済成長や開発にはとても影響を受けやすいと言えます。

冒頭で紹介したように、ヨタカは宮沢賢治の有名な童話「よだかの星」でも登場した鳥です。

そうした鳥の数が少なくなっているというのは、寂しい感じがしますよね。

ヨタカの特徴を知ろう

日本で見るヨタカは渡り鳥ということもあり、まだまだその生態についてわかっていないことが多くあります。

日本で見られるヨタカは一種類ですが、世界には実はたくさんのヨタカがいます。

南米やアマゾンにはやはり特徴的な表情をしたヨタカもいて、その独特の表情が注目を集めています。

地面や樹木への擬態に適したヨタカの地味な見た目と、ずんぐりむっくりした形は決して目立つものではありません。

しかし、ミステリアスな雰囲気や、ある種のダサさが一部の鳥好きには非常に受けています。

少しヨタカに親しみを持つことができたのではないでしょうか。