ハンドラーと犬

ハンドラーという仕事には大きく分けて2種類あります。

一つは、ドッグショーの歩行審査などで犬を引いてハンドリングする仕事。

もう一つは警察犬や麻薬探知犬など、職業犬の調教などをする仕事です。

ドッグショーのハンドラー

ドッグショーとは、犬の品評会です。

犬種ごとに「犬種標準」というものが定められており、それに最も近い犬を評価して犬種保存をするために開催されています。

ドッグショーでのハンドラーは、自分のハンドリングする犬をより美しく見せるための高度な技術を必要とします。

ハンドラーとしてドッグショーに出場するためには特に資格は必要ありませんが、JKC(ジャパン・ケンネル・クラブ)認定のハンドラー資格があります。

JKCとは、日本で最もポピュラーな認定団体で、犬の品種認定や犬種標準の指定をしたり、ドッグショーの開催をしています。

ハンドラーの多くはこのJKC公認資格を持っていることが多いですが、資格を持っていなくてもドッグショーに出場することができます。

よって、プロのハンドラーでなくても、自分の飼っている犬を自分でハンドリングするケースもあります。

ただし自分の犬を自分でハンドリングする場合は、プロのハンドラーと肩を並べなければいけませんので、かなりの勉強や経験も必要になります。

警察犬のハンドラー

警察犬には、「直轄警察犬」と「嘱託警察犬」の2種類があります。

直轄警察犬の場合は、ハンドラーは鑑識課の警察官です。

よって、ハンドラーになるためにはまず、公務員試験を受けて警察官になる必要があります。

一方、嘱託警察犬の場合は一般の人がハンドラーになります。

特に資格は必要ありませんが、警察犬になるために犬を育て、訓練し、試験に合格させる必要があります。

そのためJKC公認訓練士や日本警察犬協会公認の訓練士の資格を取得する人が多いです。

警察犬のハンドラーの仕事はといえば、テレビなどでよく見かけるように、自分の担当する警察犬を伴って事件現場に赴くことが挙げられます。

もちろん、そこに至るまでの警察犬の育成や訓練なども、担当犬と二人三脚で行います。

麻薬探知犬のハンドラー

麻薬探知犬のハンドラーは、税関職員です。

ですので、ハンドラーになるためには国家公務員試験に合格し、税関職員になる必要があります。

直轄警察犬の場合と似ていますが、麻薬探知犬の育成、訓練をし、実際の現場で麻薬を捜索する業務を行うのが仕事です。

一般の人でも見ることができるのは、空港の手荷物検査場で旅客の荷物に対して検査をしている姿です。

警察犬と違い、お客さんの前で仕事をしますので、麻薬探知犬のハンドラーはお客さんを怖がらせないように工夫をする必要もあります。

警察犬といえばシェパード犬がすぐに思い浮かぶかと思いますが、麻薬探知犬の場合は上記のような理由で、より柔らかい印象の犬が選ばれています。

最もメジャーな犬種は、ラブラドールレトリーバーです。

また、薬物の匂いを発見した場合には、吠えたり激しく引っ掻いたりするとこなく、静かにその場に座るように訓練されています。

災害救助犬のハンドラー

災害救助犬は、災害の現場で被災者の捜索などをする犬です。

どんな犬でも試験に合格すれば災害救助犬として活動することができますが、他の職業犬と同様、特別な訓練をさせる必要があります。

そのための訓練士として、また、実際の災害現場でのハンドリング役として、ハンドラーが活躍します。

日本での災害救助犬の歴史はまだ浅く、阪神大震災の時にスイスやフランスの救助犬が活躍したことで注目されるようになりました。

災害救助犬のハンドラーには特に資格は必要ありませんが、JKC公認訓訓練士などの資格を取得する場合が多いです。

セラピードッグのハンドラー

近年では「動物介在療法」などと呼ばれる「アニマルセラピー」が広まり、セラピードッグと言われる犬が病院や高齢者施設などで活躍するようになりました。

このようなケースで、犬とともに施設を訪問する人も、ハンドラーと呼ばれることがあります。

アニマルセラピーには、治療を目的とせず、動物との触れ合いによる情緒的な安定を目的とするものが一般的に知られています。

これは「動物介在活動」と呼ばれていて、ハンドラーに特別な資格が必要なものではありません。

一方、「動物介在療法」と呼ばれるものは、医療現場で専門的な知識を持つ医療従事者が中心になって行うもので、治療行為にあたります。

この場合、セラピードッグのハンドラーは特別な訓練を積むことが必要とされ、医療スタッフらとともに患者さんの治療にあたります。

信頼関係がものをいう仕事ハンドラー

ハンドラーという仕事には色々な種類がありますが、全てに共通しているのは、犬との信頼関係が必要だということです。

犬はもともと集団生活をする動物で、集団の中での上下関係にとても左右されます。

飼い犬の場合は飼い主が自分より上の存在、「主人」です。

ショーハンドラーで、飼い主以外がハンドリングする場合でも、そのハンドラーのことを信頼できなければ良いパフォーマンスをすることはできません。

職業犬の場合は訓練士が主人になりますが、やはり自分の主人であるハンドラーを信頼できなければ、職業犬としての役割を十分に果たすことはできないのです。

ただの動物好きでは務まらないのがハンドラーという仕事です。