エンゼルフィッシュは古くから親しまれている熱帯魚で、南米産のシクリッド科です。
伸長したヒレや他にない体の形もとても美しく人気です。
エンゼルフィッシュは丈夫で長生きし、繁殖も比較的容易です。
しかし、特に工夫なく放置しているのだと繁殖は上手くいきません。
改良されたものと原種に近いものとがいて、改良種のほうが飼育は楽です。
良い環境で育てる
エンゼルフィッシュを繁殖させるにしても、まずは良い環境で育てることが大事です。
成魚は12センチほどとなるので水槽は最低でも45センチ以上、60-90cmあればなお良いです。
またできるだけ高さのあるタンクが理想です。
水は弱酸性~弱アルカリまで順応しますが、強いて記すなら弱酸性がより良いです。
水は徐々に酸性に傾くので「弱酸性」は水換えでキープできます。
水温に関しては24~28℃ほど。
高めのほうが代謝が良くなる傾向となり成長も早くなりますが、
あまりそれにこだわらず、実際にエンゼルが元気に泳ぐ状態を保ちます。
良く分からない時は26℃あたりとしましょう。
えさは栄養バランスの良い乾燥のフレークや顆粒を基本とします。
冷凍赤虫なども与えて大丈夫ですがそれをメインとはしません。
魚同士の折り合い.
エンゼルはシクリッドの中ではおとなしく、同種同士では適度に張り合います。
単独より同居させたほうが調子がでます。
成魚では60cm水槽に5匹程度が最大です。
ただし、一部個体がいじめられるなどの状況も生じるので、
そうなった場合では他の水槽に移動させるなどします。
シクリッドは頭がよく、他者をよく認識・意識するタイプの魚です。
混泳は比較的しやすいのですが、スマトラなどエンゼルのヒレをつつく魚は避け、
反対にグッピーなどはヒレをエンゼルにつつかれるので不適です。
温和なカラシンやバルブとは折り合いが良いですが、
サイズ的にエンゼルの口に入らないもの(5cmほどあれば平気)とします。
コリドラス・ローチ類は問題ありません。
気をつけたいのがエビで、エンゼルに攻撃されて食べられます。
他のシクリッドとの混泳では激しいケンカとなり、原則不可です。
ディスカスとエンゼルの混泳をしている事例も多いですが、ある程度の経験が要ります。
エンゼルは大食漢、水をキレイにキープ
エンゼルフィッシュは中型魚であり、さらにサイズの割に食事量・排泄量があります。
小型魚の感覚で飼育していると水が汚れがちなので注意します。
気の向くままに与えるのではなく、数分で食べられる程度のえさ量までとします。
余裕あるフィルターを適切に使い、水草も適度に植えることで水質を保ちます。
いわゆる丸太飼い・ベアタンク(レイアウトをしない水槽)よりは、
レイアウト水槽のほうが調子が出て、結果的に繁殖も起きやすくなります。
流木や岩などで隠れるスペースも作ります。
また、ゆったりと泳ぐ魚なので、あまり激しい水流は避けます。
水換えに関しては2週間に1回、1/3~1/4が基本です。
ただし換水し過ぎは水槽バランスを崩し病気も呼ぶのでさじ加減が大事です。
成熟と寿命
エンゼルフィッシュの寿命は5~10年ほどです。
また約1年で成熟し、繁殖可能となります。
熱帯魚としてはかなり寿命が長い部類なので、きちんと最後まで飼えることを確認して購入します。
また繁殖させる場合では、それらをすべて飼えるのかも頭に入れておきます。
500円玉程度の幼魚(生後2ヶ月ほど)から飼育すると、育ちも良くなり繁殖が起きやすくなります。
自然にペアを作らせる
エンゼルフィッシュは、相手を選んでペアになります。
オスとメスを1匹ずつ買ってきて適切に飼育すれば繁殖が起きるというものではありません。
他のエンゼルなどとも共に泳がせて、つまり普段の自然な生活・水槽の中で相手を選ばせるのがポイントです。
「適当な2匹を隔離して繁殖をさせる」のではなく、
「繁殖が起きそうになったら別水槽に移動させる」というイメージを持ちましょう。
ペアを形成すると他の個体を威嚇し始めます。
数が多い場合はどれがペアかをしっかり把握します。
またオスメスそれぞれに輪精管・輪卵管が2mmほど突出してきます。
このままでも繁殖自体は起きることがありますが、他のエンゼルなどが卵や稚魚を食べてしまったりして、実際に殖える結果にはなりません。
数メートルと言った水槽では人間が関わらない繁殖も可能ですが、一般的ではありません。
ペアができたら、別の水槽に移動させる
ペアが確認できたら、2匹を別の水槽に移動させます。
これは突然水を張ったのでは水質が安定しないので、一週間ぐらい稼働させておきます。
今までいた水槽に限りなく近い水質とします。
メインの水槽が大きいなどで可能であれば、今いる水槽の水をそのまま使います。
このような水槽は常時稼働させる形でも大丈夫です。
繁殖に関係ないエンゼル個体や、アカヒレなど飼育容易な種を泳がせて水槽バランスをとっておいても良いです。
もちろん、エンゼルフィッシュのペアの繁殖時にはそれらは移動させてください。
繁殖用には45~60cmの水槽を使います。
あまり小さいプラケース等では環境に順応できず繁殖行動がストップすることもあります。
繁殖用水槽では、稚魚を吸い込んだりしないスポンジフィルターなどを使用します。
こちらの水槽には適度な水草(アマゾンソードなどロゼット型で管理の容易なもの)、及び産卵筒を入れておきます。
産卵筒は石や岩でも代わりになります。
このようなものをいくつか置くことでガラス面も含めて、産卵場所の選択肢が増えます。
どのような場所に産卵するかはエンゼルたち自身が決めます。
このときあまり観察しすぎたり、水槽に手を入れたりすると産卵が起きなくなることがあります。
産卵や放精などを見たいという気持ちがあっても我慢して、
どうしてもというならカメラを置いておき動画に収める等にしましょう。
シクリッドは他個体のほか、水槽を見る人間の行動も結構気にしますので、
繁殖時はストレスをかけないことが大事です。
孵化・稚魚のえさ
孵化した稚魚にはブラインシュリンプを基本に与えます。
ブラインシュリンプは飼育者が卵を入手して自分で孵化させる生きエサですから、
そのことも事前に練習しておけばより安心です。
各社の出しているベビー用フードを食べるようになれば、
そちらにシフトすると栄養バランスがきちんと保てます。
どうやって稚魚を育てるのか
給エサと水質キープをしてあげれば、産卵させた水槽の中で、
そのまま自分たちで稚魚を育ててくれるペアもいます。
一方で、産卵のあとで卵を食べ始めたり、ケンカがひどくなるペアも出てきます。
問題がある場合は無理をせず、卵や稚魚だけを残してペアはメイン水槽に戻します。
おおよそ一ヶ月を乗り切れば、稚魚たちの様子は安定します。
生まれた魚たちが500円玉に近い大きさまで成長したならば、
メインタンクや、幼魚用タンクに移します。
エンゼルフィッシュの繁殖方法を知ろう
エンゼルフィッシュは飼育が容易な熱帯魚です。
熱帯魚の入門にも適していて、「入門のその次」辺りにも良い種類です。
一般家庭での繁殖、あるいは人工繁殖自体が困難な熱帯魚も多い中、
エンゼルの繁殖は比較的容易です。
しかしそれだけに「繁殖についてどう考えるか」も飼い始めにあたって検討したい事柄です。
実際に繁殖行動が起きてから慌てるよりは、多少なりとも知識を持っておくことで安心できます。