犬の舌は、ショ糖に反応する味蕾(みらい)の数が多く、甘味に対する感受性が強いとともに、カカオ味を好む犬が多く、チョコレートを与えれば喜んで食べます。
しかし、犬にチョコレートをあげてはいけません。
そこで今回は犬にチョコレートをあげてはいけない理由をご紹介します。
テオブロミン中毒を起こすから
哺乳動物は、一般的に甘味を好み、苦味を嫌うと言われていますが、犬も苦味を忌避(きひ)します。
苦いものを毒物と認識すると言う説もあります。
しかし、甘味に対する感受性が強いとともに、カカオ味を好む犬でテオブロミンによる中毒の発症例が知られています。
テオブロミンとは、カカオの種子に含まれるアルカロイドの一種です。
メチル化するとカフェインになります。
血管拡張薬、中枢神経興奮薬、利尿薬として用いられるそうです。
犬は、このテオブロミンに対する感受性が強い上にその代謝速度が遅く、多量に摂取すると中毒を起こすと言われています。
犬におけるテオブロミンの中毒量は、体重1kg当たり90~100㎎と言われています。
例えば、明治のチョコレートの場合、1枚50gの板チョコに含まれているカカオポリフェノールは、メーカーにより異なりますが、ミルク味が410mg、ブラック味で700mg入っているそうなので、チワワなどの小型犬種は、板チョコ1枚で重篤な中毒症状が起こりえます。
コーヒーに含まれるカフェインにもテオブロミンと同じような作用があるため、コーヒー牛乳も与えない注意が必要です。
コーラにも若干含まれています。
中毒を起こしたときの症状は、下痢、嘔吐、頻尿、尿失禁、けいれん、てんかん、興奮などで、重篤な場合は死に至ることもあります。
虫歯の原因になる
犬の歯は、人の歯よりも本数が多く、永久歯は42本です。
食べ物を、すりつぶすのではなく、引き裂くように出来ています。
犬は、唾液のアルカリ度が人よりも高く、虫歯になりにくい代わりに、歯周病になることが多いと言われていました。
また、犬などの肉食獣は、炭水化物を多く摂取しません。
そのため、口腔内に、虫歯の原因になるミュータンス菌は常在していませんでした。
しかし、人とともに生活するようになり、人からうつされたと考えられています。
人間の赤ちゃんも、母親や、家族からミュータンス菌をうつされていることは、知られています。
ミュータンス菌が最も好むのはショ糖なので、甘いチョコレートは虫歯の栄養源になってしまいます。
口腔内疾患は、口腔内はもちろんのこと、全身にも悪影響を及ぼしますので、注意が必要です。
口腔内への影響としては、口臭、よだれ、物を飲み込みにくくなるなどです。
口腔内以外では、食欲の低下、ひどくなると食べ物を受け付けなくなる、という症状が表れます。
これは、動物の生死に関わります。
また、増殖した菌が血液中に入り、全身にばらまかれると、心臓、肝臓、腎臓に悪影響を及ぼします。
口腔衛生には、毎日の歯磨きを行う習慣を身につけることが最も有効です。
毎日のお手入れに加えて、定期的に動物病院で歯石の除去を受けることも重要です。
肥満や偏食の原因になる
チョコレートは、脂肪分や糖分も高いため、日常的に与えてしまうと適正体重を15%以上超えてしまう肥満状態になりかねません。
また、本来のフードを食べなくなるなど偏食の原因になります。
通常、犬が必要な栄養はドッグフードだけでまかなえます。
栄養学的には、品質の良いドライフードと新鮮な水を与えておけば、他に何も与える必要はないのです。
人間のように決まった時間に、おやつとしてチョコレートを与えて栄養を補給する必要はありません。
おやつは、しつけをするときの動機づけや、良いことをしたときのご褒美、として使うものと考えるのが望ましいのです。
与える量は、犬用のおやつを、1日に与える食事全体のカロリーの、10%以下の量が良いとされています。
肥満は、ただ太っているだけではなく、他にも色々な悪影響をおよぼします。
関節・運動器疾患の増大、心臓、肝臓機能の低下、繁殖能力の低下、手術の危険性の増大、熱射病や日射病に陥りやすい、皮膚病や糖尿病も引き起こしやすくなります。
肥満は、最も多い疾患と言われています。
しかし、多くのペットオーナーは、肥満が病気と気づいていません。
肥満を解消し、予防してあげられるのは、食事の管理をしているペットオーナーです。
犬にチョコレートは厳禁
昨今は、犬も家族の一員として暮らし、とても近い関係になっています。
つい、犬も人間も同じと錯覚してしまいます。
しかし、犬は犬であるということ、人間よりも遥かに身体が小さく、構造も、必要な栄養素も違うということを認識することが大切です。
犬にとっても、美味しいものを食べることは楽しみの一つです。
愛犬が、きらきらした眼で美味しそうに食べる姿を見たいと思うのは自然なことです。
そして、食べ物の質と量に注意してあげられるのは身近にいるペットオーナーです。
いつまでも、愛犬の生き生きとした姿を見られるように、身体の栄養と心の栄養に気をつけてあげたいですね。