犬の排尿の状態は、健康状態を示す大切なバロメーターです。
もしあなたが、愛犬の「おしっこが出ていないかも知れない」と気づいた場合、どのような原因が考えられ対処したらよいのでしょうか?
犬の水分摂取不足、発熱
尿がどのようにできているかをご存じでしょうか。
尿は、血液の中の不要物を腎臓が濾過し、必要なものだけを吸収し濃縮したものです。
腎臓で作られた尿は、尿管という細い管を通り膀胱に貯められ、そして尿道を通って体の外に排泄されます。
摂取する水分が少ないと、血液量が減りますので尿の回数も少なくなります。
また、発熱時は体の中の水分が蒸発しやすくなるため血液量が減り、尿量も減ることになります。
このケースでは「尿が出ない、もしくは出せない」のではなく、「出すほど尿が貯まっていない」状態ですから、散歩に連れ出せば濃くて少ないながらも排尿は見られるでしょう。
もし犬が外出などで水を十分に飲めていない可能性があるのであれば、しっかり水分を補給してあげましょう。
また、発熱していたり熱中症の可能性が考えられるようであれば、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
人間同様、熱中症は命に関わる病気です。
犬の頻尿
犬では膀胱炎の発症が非常によく見られます。
膀胱炎になると、尿が膀胱に少しでも貯まると刺激されてしまい、大して尿が貯まっていないのに排尿姿勢をとることがあります。
これが頻尿です。
その様子を飼い主の方がみると、「排尿姿勢をとっているのに、尿が全然出ていない=尿がでない」と勘違いされることもあります。
このケースは、実際に触診や超音波検査などで膀胱の中にどれだけ尿が貯まっているのかを見ないと判断が難しいですので、早めに動物病院に行って診断してもらいましょう。
もし細菌性膀胱炎であれば、尿検査を行い抗生物質の内服で症状が改善します。
また、細菌性膀胱炎と同様に頻尿の原因に多くあるのが膀胱結石です。
膀胱結石は、「ストルバイト結石」といわれる種類のものであれば食事療法で溶解することもあります。
サイズが大きかったりその他の種類の結石であれば外科手術で摘出しなければ完治は望めません。
尿が作られていない
腎が機能しなくなることを腎不全と言います。
腎不全は、慢性腎不全と急性腎不全に分類され、尿を作り出すことができないほどに腎臓の機能が落ちてしまうことがあります。
尿量が著しく減少している状態を「乏尿」、全く作られていない状態を「無尿」と言います。
乏尿や無尿の状態であれば、膀胱に尿が貯まりませんので、排尿姿勢をとることがありません。
慢性腎不全は高齢の犬によく見られ、その症状の経過は長いことが知られています。
尿が薄く水を飲む量が多い、時々吐く、食欲が落ちてきたという症状が出て気づかれるケースが多いです。
一方急性腎不全は、薬物中毒や感染症などによって腎臓が突然障害され、機能しなくなる病気です。
この病気になると非常に強い嘔吐、元気食欲がなくなり、ぐったりします。
この病気であった場合非常に深刻な状態ですので、早めに動物病院を受診しましょう。
尿管がつまっている
尿管結石も膀胱結石と同じように犬では珍しい病気ではありません。
腎臓で作られた尿は尿管を通って膀胱に貯められます。
しかし、尿管が結石などでつまってしまうと、膀胱に尿が流れていかず尿が貯まってこないという状態になります。
そして尿管が詰まってしまうと、腎臓が自ら作った尿でふくれあがり、「水腎症」という状態になります。
これに気づかずに進行させてしまうと腎不全になります。
ただ、腎臓も尿管も2本あります。
両方が同時に障害されなければ、尿量が減るということはなく、片方だけの障害であれば何の症状なく生活していることも多いです。
万が一残されたもう1本の尿管すらも詰まってしまった場合は、上記の通り腎不全の状態になるので、緊急性が高いです。
尿管結石は膀胱結石と同じように、改善するには手術で摘出する必要があります。
尿道がつまっている、圧迫されている
尿道は膀胱からつながっている1本の管で、雄犬では雌犬に比べ尿道が細いくなっています。
そのため、小さい膀胱結石が流れて尿道をふさいでしまうことがあります(尿道結石)。
治療法としてはやはり摘出手術が必要で、尿道にある結石を膀胱まで移動し摘出を行います。
また、会陰ヘルニアという病気でも尿が出にくくなることがあります。
会陰ヘルニアは去勢していない雄犬にみられ、ホルモンの影響で骨盤の筋肉が弱くなり、腸や膀胱が肛門の方へ移動してしまう病気です。
膀胱が移動すると、尿道が曲がったり押しつぶされたりして、尿が出なくなります。
尿道に異常があって尿が出にくい場合、排尿姿勢を試みるもののほとんど尿がでない、もしくは勢いよく尿が出ないという症状が表れます。
おしっこが出ない病気を知ろう
排尿に大きな影響を与える病気に尿路結石(尿管結石・膀胱結石・尿道結石)などがあります。
結石ができてしまう主な原因は、食事の内容や飲水量です。
できるだけ結石に作りにくいように配慮されたフードを選ぶようにし、いつでも新鮮なお水を飲めるようにしましょう。
また、散歩でしか排尿しないという習慣のある犬ですと、尿の量や色などの異常に気づきにくいです。
可能であれば自宅のペットシーツで排尿する習慣をつけるとよいでしょう。
飼い主の方が、犬の尿の出にくい原因が膀胱炎なのか尿道結石なのかを鑑別することは非常に難しいです。
水分摂取不足以外は病院での治療が必要な病気ばかりですから、気になる症状が見られたら早めに動物病院を受診しましょう。