動物のいろいろな器官や感覚というのは、その生態に合わせて進化してきました。

その中には、私たち人間とは大きく違っている点などもあります。

私たちにとって身近なペットである犬は、非常に嗅覚に優れていることはご存じでしょう。

しかし、人間にとってもっとも大切な視覚は、犬の場合にはどんな風になっているのでしょうか。

目の構造

犬の目の構造は、私たち人間とほぼ同じような作りになっています。

しかし、細かな部分を比較してみると、いろいろと人間との視覚の違いについてわかってきます。

犬の場合には、とてもよく優れた虹彩を持っています。

そのため、犬の目は黒目がちに見えたりして、可愛いチャームポイントになっていますよね。

しかし、この発達した虹彩のおかげで、より多くの光を目に取り込むことができるという大切な役割を果たしています。

また、よく知るように、犬は嗅覚の動物とも言われています。

私たち人間が120万本ほど持っている視神経ですが、犬は17万本ほどしか存在していません。

こうしたことから、視覚をそれほど重要視していないことがはっきりとわかります。

タペタム層

犬の目の構造について、もう一つ特徴的なのはタペタム層の存在です。

このタペタム層は人間にはない構造ですが、猫やキツネなどにも備わっています。

犬は、もともと現在のように家の中で飼われているわけではありません。

ずっと昔は、夜暗い中でエサを追ったりしていた動物です。

そのため、暗い場所でも良く見えるような目の構造になっています。

タペタム層というのは、目の中に入った光を反射させて視神経に伝える役割をします。

このタペタム層があることによって、わずかな光でもしっかりと視界を確保することができます。

夜に犬の写真を撮ったときに、目が光って見えたりするのは、このタペタム層によるものです。

手元でピントを合わせるのが苦手

少ない光を有効に使って、暗い場所でも良く見えるように発達した犬の目…しかし、近くにあるものにピントを合わせるのはうまくできません。

一般的には、1m以内にあるものにはピントが合わず、ぼやけて見えているのだそうです。

野生で暮らしていたときには、獲物を追ったりするときに遠くのものを見る能力が必要でした。

サイトハウンドのように、視力を活かして狩猟をしている犬もいるほどです。

しかし、近くにいるものは、嗅覚でしっかりと識別できるのかもしれませんね。

すぐ目の前にいるのに、くんくんと人の臭いを嗅いだりするのは、こうした目で識別できないという理由があるのでしょう。

色の見え方

犬の目の構造は、人間と非常に良く似ています。

しかし、やはり多少の違いはあり、もっとも顕著なものが色の見え方です。

人間の目には青、緑、橙の色を識別する錐状体という細胞があります。

この錐状体の働きによって、私たちはとても多くの色を認識することができています。

一方で、犬の場合にはこの錐状体が極端に少なく、また青と黄色にしか反応しません。

そのため、赤や緑といった色を識別することができないと言われています。

こうしたことから、人間にははっきりと違いのある色でも、犬にとってはわかりにくいことがあります。

色とりどりの美味しそうなご飯も、犬にとっては、それほど美味しそうには見えていないのです。

動体視力

犬の目は色の識別が苦手だったり、視神経はそれほど発達していません。

しかし、だからといって、視覚がおざなりになっているというわけでもありません。

犬の動体視力を考えれば、やはり視覚も重要であることをうかがい知ることができます。

人間の目では、1秒間に60回ほどのコマ送りをつなぎ合わせて脳が映像を作っています。

しかし、犬の場合には、1秒間に80回ほどの画像を取り込むことができます。

そのため、遠くでわずかに動くものをしっかりと捉えることができるようになっています。

犬の場合には、遠くにある動かない対象物を見つけるのはとても難しい作業になります。

しかし、動いているものであれば、ある程度離れていてもしっかりと反応できるんだそうです。

視野の広さ

動体視力以外にも、犬の目が人間よりも優れているのは視野の広さです。

犬種によってばらつきはありますが、犬の顔の形をイメージしてみればわかりやすいと思います。

正面を向いた人間の目よりも、左右に広く視野が取れているというのは想像に難くないでしょう。

サイトハウンドなどの視覚に優れた犬では、270度くらいまで見えていると言われています。

しかし、立体視野という観点からすると、少し話は変わってきます。

人間は、両目それぞれが対象物を見ることで、その対象を立体的に識別できています。

人間の場合には、120度くらいの範囲が両眼視野という立体的にものを見ることのできる範囲です。

しかし、犬の場合には左右に広い視野が取れる一方、両目で識別でいる範囲は80度と狭くなっています。

犬の視覚について知っておこう

同じような構造でも、犬と人間の目には、いろいろな部分で違いがあります。

私たち人間は目から入る情報というのを非常に重要視します。

しかし、犬の場合には、まず目で情報を捉えますが、そのあとは嗅覚などに頼ることが多くなります。

そのため、細部までみると、視覚や嗅覚の使い方についておもしろい違いを見つけることができます。