「日本猫」と言われて、私達が真っ先に思い浮かべるであろう猫の特徴を持った猫、それが「ジャパニーズ・ボブテイル」です。
日本のラッキーアイテムとしておなじみの「招き猫」が三毛のボブテイルであることからも分かるように、古くから日本ではなじみの深い猫です。
ジャパニーズ・ボブテイルの身体的な特徴
ジャパニーズ・ボブテイルの一番の特徴は、何といってもその「ボンボンシッポ」などと形容されることもある、うさぎの尾を思わせるような短い尻尾です。
この尻尾は、短い尻尾をクルリと巻いたような形になっているために、見た目は丸いボンボン状になっています。
これは劣性遺伝子による形質のため、両親が共にこの遺伝子を持っていないと、このような尻尾にはなりません。
1,000年ほど前に中国から日本へ輸入された猫は、既にこの遺伝子を持っていたと言われます。
日本では江戸時代以降に、「長い尻尾の猫は尻尾が割れて猫又になるという」「猫又伝説」と相まって人気が出て、それからは日本猫と言えばボブテイル、というくらい一般的となりました。
ちなみに現在では日本猫の中に、長くて縮れた「カギ尻尾」の猫が見られます。
これは長い尻尾の遺伝子にボブテイルの遺伝子が入り込んだもので、洋猫との混血の過程で誕生したものと考えられています。
そんなジャパニーズ・ボブテイルの体型は、アメリカでの品種改良により、元々の日本猫に比べるとやや細くスマートになり、胴体や脚は細長いけれども頑丈です。
体重はオスで3.5~4.8kg、メスで2.8~3.7kg程度と、一般的な猫と比べあまり大きくはなりません。
また、ジャパニーズボブテイルといえば短毛種のイメージが強い品種ですが、実は繁殖の中で長毛の遺伝子が混ざっていたことも判明しました。
そのため1992年には、長毛のジャパニーズ・ボブテイルも「ジャパニーズ・ボブテイル・ロングヘア」として、CFAより公認されています。
ジャパニーズボブテイルの性格
ジャパニーズボブテイルは比較的穏やかで、優しい性格の猫が多いです。
人にもよく馴れ、言うこともよく聞きます。
人間の言葉に対して「にゃあ」と返事をよくする、おしゃべりな子もいます。
新しい猫も容易に受け入れる子が多いため、多頭飼育にも向いています。
更に、引っ越しなどの環境の変化にも、比較的容易に順応できると言われています。
アメリカ人女性をも魅了した日本の猫は、人間と暮らすのにはぴったりな性格の猫だったのです。
ただし、もちろん個体差があります。
慣れないうちに無理に抱っこをしたり、無理矢理一緒に遊ばせようとすると、機嫌を損ねてガブリ。と噛みつかれることもあります。
猫自身のストレスにもなってしまうので、控えましょう。
また、この種の猫の母猫は、子猫が自立してかなり大きくなっても世話を焼くことがあることが知られています。
同じ家に親子で仲良く同居している例もあり、家族意識も高いことが伺えます。
ジャパニーズボブテイルの歴史
ジャパニーズボブテイルは、その昔、当時の日本の天皇に中国の皇帝から贈られた猫がルーツと言われています。
当時の猫は、貴族などの屋敷で大切に飼育され、宇多天皇などは「乳粥」を与えて可愛がっていました。
人間でも、庶民はなかなか牛乳など飲めなかった時代の話です。
このエピソードだけでも、どれだけ猫が大切に可愛がられていたかが窺い知れます。
また清少納言の「枕草子」には「命婦のおとど」という猫が、なんと官女の位を与えられて大切にされていた様子が描かれています。
1960年代後半、そんな日本の猫にアメリカのジュディ・クロフォードという女性が目を付け、つがいで母国アメリカの友人に送りました。
そこから計画繁殖と品種改良が行われるようになり、1976年にCFA(キャット・ファンシアーズ・アソシエーション)公認となりました。
日本へは、いわば「逆輸入」という形で入ってきました。
ジャパニーズ・ボブテイルと同じように、短い尻尾、またはほとんど尻尾がない猫種としては、「マンクス」「クリルアイランド・ボブテイル」「ピクシー・ボブ」などが知られています。
「クリルアイランド・ボブテイル」は、遺伝子的にはジャパニーズ・ボブテイルと似ていますが、全く別の猫種です。
また「マンクス」は、独特の「無尾遺伝子」によって短い尻尾となりますが、ジャパニーズ・ボブテイルとは無関係です。
ジャパニーズボブテイルの寿命
ジャパニーズボブテイルの平均寿命は、13~15年程度と言われています。
これは、一般的な猫の平均寿命とほぼ同じくらいです。
しかし、近年ではキャットフードの改良、動物医療の進歩、室内飼育の増加などの影響もあり、以前よりは猫の平均寿命も延びています。
大切な愛猫と長く一緒に暮らせるように、日々のケアを大切にしましょう。
日本に縁の深いジャパニーズボブテイル
私達日本人にとっては、一見どこにでもいる猫に見えるジャパニーズ・ボブテイルですが、調べれば調べるほど、歴史があって奥が深く、魅力的な猫であることが分かります。
近年、日本猫と洋猫との混血が進み、日本古来の日本猫らしい日本猫の数は減少しています。
こんな時代だからこそ、可愛くて優しくて美しい、「日本猫本来の特徴」を持った猫を守っていきたいものです。