金魚の飼育には「カルキ抜き」がつきものです。
ハイポといった中和剤を使ったり、水を汲み置きしたりしてカルキを抜きます。
これをしないと、どういった害が起きてしまうのでしょうか。
カルキ抜きとは
カルキとは、水道水に添加されている塩素で、厳密には「次亜塩素酸カルシウム」のことです。
殺菌・消毒のため日本の水道水に含まれています。
プール等で「独特のニオイがする」のは、水に塩素が高濃度で含まれているからです。
また、有機物と塩素が結合して「クロラミン」という物質が刺激臭を出します。
水道水に含まれる塩素は、濃度的に人体には特にこれといった害がなく、犬猫などの飲料水も水道水で問題がありません。
しかし小さな体を持つ魚や、魚を含めてエラ呼吸をする生き物には当てはまりません。
50gの金魚に対し、50kg(50,000g)の人間は1,000倍もの体重があります。
5gの魚に対してなら10,000倍。
人間の感じる塩素の刺激等で考えてはNGです。
エラを害する
金魚を含め、魚はエラで呼吸しています。
ここから水に含まれる酸素を取り込んでいるのです。
水に含まれる残留塩素はこのエラの細胞を破壊してしまいます。
たいへん大型の魚では、水に若干の残留塩素があっても害にならないこともあります。
しかし、金魚を含む観賞魚全般で注意が必要です。
魚の体表の粘液に害がある
魚は、表面にぬるぬるとした粘液を持ち体を保護しています。
塩素によってこの粘液が保てなくなり、病気が発生しやすくなります。
新しい水に入れた魚が一斉に白点病を起こすなどの状況があります。
これには色々な原因が考えられますが、ひとつには残留塩素により粘液が保てなくなることとの関連があります。
ろ過バクテリアが死滅する
水槽をキレイに保つには「ろ過」が大事ですが、これには2つのプロセスがあります。
1つめは、フンなどひと目でわかる汚れをひとまずキレイにする「物理ろ過」です。
2つめは、それらをニトロソモナスやニトロバクターといったバクテリアが無害化していく「生物ろ過」です。
水道水に含まれる塩素は、ろ過に重要なバクテリアを死滅させてしまいます。
水に含まれるものはもとより、フィルターや底砂に生息するバクテリアも殺してしまいます。
生物ろ過は目に見えないのでビギナーは軽視しがちですが大事な要素です。
自然の池などがキレイに保たれているのも、この要素が大きいです。
水換え・掃除ごとに水質が不安定になる
物理ろ過と適切な生物ろ過が行われても、最終的には「硝酸」といった物質が溜まっていき、
水質が悪化してくるので、金魚飼育で水換えは必要です。
しかし、このときに中和していない水道水を使うと、せっかくのろ過バクテリアが死滅してしまいます。
換えた分の水に含まれるバクテリアがいなくなるのは避けられませんが、
塩素によってもとから水槽(フィルター・砂)にいたバクテリアまでがダメージを受けるのです。
ごく少量の換水では中和なしでも大丈夫です。
「フィルターのスポンジ・マット」洗いも可能な限り中和した水で行います。
またフィルター内や底床の「砂」について物理的汚れを取り除きたい時も中和した水が良いです。
ホースやコケ取り用具、隠れ家などのアクセサリー、フィルターのケース、
温度計、水槽のフタなどを洗う水までは中和しなくて大丈夫です。
特にカルキに弱い生物が死んでしまう
エビなどを金魚とともに飼育しているケースでは、
カルキ抜きをしていないとエビだけが全て死亡してしまう状況も起きます。
塩素その他有害物質に対しての反応は生物によってかなり違います。
金魚が大丈夫だからとカルキ抜きについて雑な管理をしていると、他生物にとって困った状況を引き起こします。
カルキ抜きが不要なケースも
カルキ抜きは行わないとか、きわめて少量の中和剤しか使わないという観賞魚の飼育家がいます。
この理由として、水道に含まれる塩素濃度に地域差があることがいえます。
また「水のおいしさ」を求め、平成以降では全国的に水道水の塩素濃度も低くなってきています。
確かに「水道水のカルキくささ」は感じないことも増えています。
しかし、近接した地域でも浄水場との距離で水道水の残留塩素濃度は違います。
さらに季節や、その時その時の天候にも影響されます。
様々な状況とリスクを総合判断すれば、魚飼育ではカルキ抜きを行うのが良いです。
総じて丈夫な金魚でも「カルキ抜きは行う」を基本にして飼育します。
なお中和剤の入れすぎも無害ではありませんが、よほど極端な量を入れなければ問題はなく、
そのことには神経質にならなくて大丈夫です。
カルキ抜きをする大切さを知ろう
金魚の飼育では、カルキ抜きは適切に行なって飼育しましょう。
金魚はエラ呼吸をしており体表に粘液を持ちます。
水道水の残留塩素はこれらや微生物(ろ過バクテリア)に害を与えます。
また金魚は人間とは体の大きさも全く違う生き物です。
いかに丈夫と思えても日頃からひと手間かけることはとても大事です。