金魚は鰓で呼吸を行いますが、鰓を使って呼吸するということは、人間とは異なる呼吸を行っていることを意味します。
酸素不足の時はいつもと様子が違っていたりしますが、金魚が酸素不足の時はどのような行動や仕草が見られるでしょうか?
口を水面でパクパクしている
金魚を室内の水槽で飼っていたり屋外の池で飼育している金魚も多いですが、常に呼吸を行っているため水中の酸素濃度は変化します。
時間当たりの水中に溶け込む酸素の量より、金魚が呼吸で消費する酸素の量が多いと、酸素濃度は時間経過と共に減少していきます。
通常は水中に留まり、鰓を用いて呼吸しますが、体に取り込める酸素が少なくなると呼吸方法が変化します。
水面近くに口を持っていき、エサを食べるように空気を口から飲み込み、鰓から空気の泡を出す動作を繰り返します。
空気は水より酸素濃度が高いため、水中に酸素がほとんど無い状態では空気を用いる方が効率が良いためです。
口から飲み込んだ空気を鰓に送り、体に酸素を取り込む動作は魚体内の酸素を急激に消耗します。
この行動が見られる場合、水中の酸素濃度は極度に低下しています。
放置しておくと酸欠で死亡することもありますので、速やかに水中に酸素を供給する必要があります。
鰓を大きく動かす
金魚は鰓で呼吸していますが、水中の酸素濃度によって呼吸の方法が変わるため、鰓の動きが変わります。
水中に酸素が十分ある状態では、鰓をほとんど動かさずに鰓蓋を少し開いた状態で呼吸します。
最小限の動きで体内に十分な酸素を供給できるためです。
酸素濃度が低下してくると鰓の動き(鰓蓋の開き方)が大きくなり、呼吸の回数が増加します。
鰓での酸素供給が消費量に追いついておらず、魚体中の酸素濃度が低下しているためです。
鰓呼吸のみでは酸素の確保が難しくなると、水面で口をパクパクさせ、空気から直接酸素を取り込もうとします。
水温が短時間で上昇すると、水中の酸素飽和量の上限が下がり、溶存酸素量が減少します。
同時に呼吸によって排出された二酸化炭素濃度が上昇するため、飽和気体量における酸素の割合は低下します。
先の行動が見られた場合、水温を徐々に下げるか、酸素を水中に溶け込まして濃度を上げます。
あちこちに移動する回数が多くなる
金魚は遊泳しながら鰓呼吸を行い、酸素が多い箇所に移動します。
水は空気に比べて、粘性が高いため、流れが無く、循環が起こらないと酸素が多い個所と少ない箇所(酸素勾配)が生じます。
水温が低いと酸素飽和量が多くなります。
また、魚体の活性も下がり、酸素を多く必要としないため、同一個所に留まる事が多くなります。
水温が上昇するにしたがって、酸素飽和量は減少します。
また、金魚の活性も上がり行動が活発になるため酸素の消費量が増加します。
活性が上がるにつれて、金魚は遊泳する範囲を広げていきます。
静止していると近くの酸素を消費するため、より多くの酸素が含まれている場所に移動するためです。
通常と異なった動きをする
金魚が突発的に遊泳したり、動きが鈍くなったり、遊泳方向を変える頻度が多くなったりする場合があります。
鰓に損傷が起きて酸素交換を行える面積が狭くなり、体内に十分な酸素が供給出来ていない事が原因の一つです。
魚体に魚病の発症、怪我などの外傷が見られず、通常では行わないような行動が見られる時は注意が必要です。
水中で口を大きく開けると同時に、鰓蓋を外に開く動作を数回連続して行う。
連続しない場合でも、頻度が多い場合は鰓の機能低下を疑います。
閉鎖環境を作ってからあまり時間が経っていない状態で飼育を始めると、環境内に排泄物を分解、還元する細菌が少ないため、アンモニアが発生しやすくなります。
アンモニアは非常に水中に溶け込みやすいため、発生するような環境では高濃度になります。
また鰓などの粘膜組織を破壊してしまいます。
そのため、立ち上げ数日から数週間は換水頻度を多くする、エアーレーションを行うなどの対応を行います。
閉鎖環境で飼育し、換水の頻度が少ないと亜硝酸が蓄積することがあります。
亜硝酸は酸素と結合して硝酸になる化学的性質を持つため、水中の濃度が高くなると含有酸素量の低下を招きます。
魚体内で濃度が高くなると、血液中のヘモグロビンと比較して酸素への結合力が高いため、魚体内が慢性的に酸素欠乏状態に陥る、との知見も見られます。
鰓に損傷が起きていない原因が見当たらない場合は、同一環境内に水草等が多く含まれていないか確認します。
水草は十分に光が当たって光合成が開始され、二酸化炭素吸収量が酸素放出量を上回っている場合は水中への酸素供給源となります。
その反面、光量が少ない、もしくは夜間など光が当たらない状況下では、水草自体が呼吸を行って酸素を消費するため、水中の酸素は減少していきます。
水草は、夜間に環境内の酸素が減少すると、内部に蓄積した合成物を分解する回路を用いて酸素を体内で生成できます。
金魚は同様の回路を持たないため、酸素量が極度に減少すると鼻上げを行ない、空気中から酸素を取り込みます。
金魚の酸素不足の原因を知ろう
金魚は呼吸による酸素供給を外部の環境に影響を受けやすい生き物です。
金魚の様子を観察して普段と異なる行動や仕草が見られるなら、速やかに環境を改善するよう心掛けましょう。