視覚障害のある人にとって、生活する上での1つの出会いである盲導犬。

厳しい訓練を受けた盲導犬は、とても立派にパートナーとして寄り添い続けます。

しかし、そんな盲導犬にも引退をする日が来るのです。

一般的に、盲導犬は10歳で引退を迎えます。

引退をすると、それまでのパートナーとはお別れし、第2の人生が始まります。

そんな引退をした盲導犬は、その後どのように暮らしているのでしょうか。

引退した盲導犬が歩む道はいくつかあります。その環境をご紹介します。

パピーウォーカーの元へ戻る

盲導犬は、仕事に就く前の盲導犬候補の間、具体的には生後約2ヶ月から1歳までの子犬の時期、パピーウォーカーという家庭での育成ボランティアさんの元で過ごします。

盲導犬候補の子犬達に、人間社会でのルールを学んでもらうため、様々な場所に一緒に出掛けて乗り物や人混み等に慣れさせたり、家庭で一緒に過ごすことで、人間との信頼関係を築かせたりする事が目的です。

基本的にパピーウォーカーは、子犬が1歳になり、盲導犬として歩み始めると、一切その犬との関わりは絶たれます。

会いに行くことはもちろん、偶然会っても、接触することは禁じられています。

小さな頃から育ててくれたパピーウォーカーに対して、犬が甘えてしまうからです。

しかし、盲導犬としての仕事を終えた犬が、そんなパピーウォーカーの元に再び戻ることは少なくありません。

盲導犬として働いている間、全くパピーウォーカーには会えないはずですが、やはり子供の頃に愛情を注がれて育った場所だからか、大抵の犬がパピーウォーカーを覚えていて、そのパピーウォーカーの元で穏やかに過ごします。

パピーウォーカーも、思い入れがある人が多いので、引退後にパピーウォーカーの元へ戻るのは、パピーウォーカーにとっても、引退犬とっても、お互いにとって喜ばしいことなのかもしれません。

引退犬飼育ボランティアに引き取られる

引退犬飼育ボランティアは、子供の頃を共に過ごしたパピーウォーカーと違い、引退した盲導犬を、新たな家族として新しい家庭に迎え入れる形になります。

そして、一般の家庭で飼われている犬と変わらない、のんびりとして穏やかな余生を過ごすことができるようにします。

盲導犬として働いていた犬は、しつけがきちんとされているため、引退犬飼育ボランティアにとって、あまり大変さは感じにくいかもしれません。

その代わりに、引退犬飼育ボランティアになるには、条件がいくつかあります。

例えば、室内飼いが出来ることです。

盲導犬は、室内での活動が多いため、幼い頃から室内マナーを学んでいます。

そのため室内に慣れており、逆に室外で飼うと、疎外感を感じ、それによるストレスで問題行動を起こす可能性もあります。

また、長時間家を空けることも、盲導犬時代に常にパートナーと居た犬にとってはストレスとなるため厳禁です。

このような、盲導犬にとってストレス無く共に暮らせる人がいると、盲導犬引退後も安心して生活することが出来るでしょう。

引退犬棟にて過ごす

盲導犬を引退した犬たちが過ごす、引退犬棟というものがあります。

例えば、静岡県にある「富士ハーネス」という施設。

この施設にある引退犬棟では、盲導犬を引退した犬たちをケアし、穏やかに過ごせるようにサポートしています。

日当たりの良いリビングルームのような部屋に、目の前には芝生もあります。

また、足腰の弱くなった犬のために、床はコルクタイルと、正に引退犬の事を考えて作られた場所です。

棟内には引退犬棟担当の職員もいて、犬たちの体調が良ければ、一般の方も見学することが出来ます。

盲導犬を引退しても、すぐに里親が見つかるとは限りません。

そんな犬たちも、このような施設があることによって、引退後も路頭に迷うことが無く、安心できるのではないでしょうか。

何頭か仲間が集まっている上、お客さんとの触れ合いもあり、環境も良く、とても安心できて過ごしやすい施設となっています。

引退した盲導犬がどのように過ごすのか知ろう

これを見ていると、「引退しても、そのままペットとして、今までのパートナーと暮らせば良いのでは?」とも思うかもしれません。

しかし、それは引退犬のためにはならないのです。

引退したということは、後に新たな若い盲導犬がやってきます。

今まで自分が支えてきたパートナーが、新たな盲導犬と過ごす姿を見るのは、とても辛いものです。

そのため引退犬にとって、上記のような環境は、とても大切です。

しかし、引退犬を引き取る事は、簡単なことではありません。

引退犬飼育ボランティアが不足しているのも現状です。

人のために頑張って活躍してくれる盲導犬が、引退してからも穏やかに過ごせる環境が充実してくれることを願うばかりです。