飼い猫が壁や床をいつまでもペロペロとなめている光景を見たことのある飼い主は少なくないでしょう。

少し異様にも見えて、病気ではないかと飼い主を心配させる猫の奇行の一つですが、猫はどうして壁や床をなめてしまうのでしょうか。

エサやマタタビのカスがある

台所の近くやリビング、食卓など普段食品を触るスペースでは、知らず知らずのうちに食べ物のカスが床にこぼれてしまったり、油や飲み物がとんで壁についてしまう事があります。

人にはわからないような少量の食べ物も鼻の良い猫はすぐに気付きます。

猫がいつも同じ場所をなめ続けたり、以前に食べ物をこぼした所をなめ続けるのは、人にはわからないようなごく少量の食べ物を感じ取っているからです。

普段遊んでいるオモチャの臭いやストレス解消に与えているマタタビの粉など、人には何でもないように見える壁や床も猫には魅力的なものが沢山付着しています。

壁や床に付いているかすかな食べ物をなめる程度なら、ほとんどの場合問題はありません。

しかし、猫には毒になる食べ物や壁についてから時間のたった食べ物をなめてしまうとお腹を壊してしまうかもしれません。

壁に付いた食べ物は、できるだけすぐに丁寧に拭き取りましょう。

舌触りが気に入った

猫の舌は食べ物の味を感じ取るだけでなく、他の猫や興味深い物を舐めて情報を得るといった役割も持っています。

人が手で触って物を確かめるように、猫は舌でそのものを確かめることがあります。

子猫のころからいつも壁や床をなめる癖のある猫は、壁紙のザラザラした感触や床のツルツルした舌触りに病み付きになってしまったと考えられます。

まだ目の見えにくい子猫のうちは特に、なめてそのものを確認する行為がよく見られます。

ほとんどの猫は成長するとこの行為は減っていきますが、おもちゃや毛布、大好きな飼い主などお気に入りのものに対して大人になっても続けてしまう猫は多々います。

壁や床をなめる癖も、子猫のときに頻繁にしていたこの行為の名残かもしれません。

猫によっては、他にも布やビニールなどを好んでなめる猫もいます。

好きな舌触りは猫によって違いますが、誤って飲み込んでしまうと大変危険です。

壁紙や床なら誤飲の危険は少ないですが、剥がれかかっていたりテープや画鋲が付いたままになっていないか注意してください。

ミネラル不足

いままで壁や床をなめていなかった猫に突然なめ癖が現れた場合、何らかの栄養が不足し、それを補おうとして床や壁をなめているのかもしれません。

なめ癖が突然始まったなら、獣医さんに相談してみましょう。

エサの量が少なかったり、エサが猫の体に合っていないか見直す必要があります。

玄関や庭に続く出入り口の周りには、飼い主が外出先で靴や体に付けて持ち込んだ砂や土が床に落ちています。

床に落ちた砂や土には鉄分やミネラルが含まれています。

栄養不足の猫は、これをなめとって不足しているミネラルなどの栄養を体に取り入れようとしています。

猫の栄養不足の原因は、与えているエサ以外に内分泌の異常も考えられます。

放置すれば症状を悪化させかねません。

できるだけ早めに病院で診てもらいましょう。

ストレス

猫が壁や床をなめる理由には、他にもストレスが原因であることもあります。

引っ越しや部屋の模様替え、結婚などで新しい人と住んだり新しいペットを迎えることになるといった大きな環境の変化は、猫にとって大きなストレスになります。

ストレス過多の状態が続くとノイローゼに発展してしまったり、異食が進み、壁や床をなめるだけでなく猫にとって毒になるものを食べてしまうこともあります。

環境を大きく変える必要があるときは、寝床や猫が一番長く過ごす空間はできる限りそのままにしたり、一人になれる場所を作るなど一か所でも猫が安心して過ごせる空間を作ってあげてください。

認知症

8歳を過ぎた猫が壁や床をなめ始めたら、老化による認知症も考えられます。

壁や床をなめてしまう以外に大きな声で鳴いたり、動きが鈍くなったりと他の症状も見られるなら、一度認知症の検査を受けてみましょう。

認知症は、症状の進行を抑える薬はありますが認知症自体を治療することはできません。

できるだけ早く対処すればそれだけ症状の進行を抑えることができます。

獣医さんと今後の生活を相談しましょう。

認知症による異食は、トレーニングや叱ってやめさせる事はできません。

逆に老猫に余計な負荷をかけることになり、ストレスが認知症をより進行させてしまいかねません。

年老いた猫が認知症によって壁や床をなめ始めても、特に害がないようならそっとしておいてあげましょう。

壁や床を舐め始めても特に害はありませんが、認知症が進み他の物も口に入れ始めると有害なものを食べてしまうかもしれません。

異食には十分注意してあげてください。

なぜ猫が壁や床を舐めるのかを知ろう

猫が壁や床を舐めていても、この行為自体が猫にとって害になることはないのであまり気にする必要はありません。

しかし、他にも奇行が始まったなら病気の兆候の一つであることも考えられます。

壁や床を舐める他にも気になる点があるなら、一度病院で診てもらうことをオススメします。