日本には「猫」が出てくることわざがたくさんあります。

猫は昔からいつも人間の身近にいて人間の生活に溶け込んでいる動物です。

よく知られていることわざだけでもかなりの数がありますが、以下にいくつか代表的なものをご紹介します。

猫に小判

猫のことわざでまず思い浮かぶ代表的なものです。

貴重なものを与えてもその価値を理解できない人のたとえです。

実際猫にどんな高価な小判を与えても、当然何のありがたみも感じないでしょう。

用例は例えば「あの人に貴重なアドバイスをあたえてやっても全く理解せず変わらない。

これこそ猫に小判というものだ」といった使い方をします。

このことわざがなぜ「猫」なのかということですが、他人の価値観など気にかけない猫のマイペースな性格から来たように思われます。

似たようなことわざで「豚に真珠」というのもあります。

猫に鰹節

先ほどの「猫に小判」と全く逆のシチュエーションになります。

小判に全く興味が無い猫でも鰹節を与えたらどうなるでしょうか?

大好物の鰹節が目の前にあったら猫はたまらないでしょう。

このように「好きなものを身近においておくのは危険である」ということのたとえです。

例えば「セクハラ部長のいる部署にあんなにキレイな新入社員が入ってきた。これはまさに猫に鰹節だ」といった具合に使います。

しかし猫が大好物だからと言って鰹節を上げても良いのかというと、実はそうではありません。

鰹節には多量のミネラルが含まれていて猫の腎臓に負担をかけます。

たくさんとり過ぎると尿路結石症の原因になります。

猫がいくら欲しがっても鰹節はおあずけにした方が良いでしょう。

猫をかぶる

おとなしい猫のように、特定の人の前では本性を隠しておとなしくしている人のたとえです。

だいぶ前に流行った「ぶりっこ」という言葉に似ています。

確かに相手を見て態度を変える猫の性質をよく表したことわざと言えるでしょう。

猫は用心深いので、心を許した人とそうでない人に対して態度が全く違います。

それは猫が小狡いというより、小動物である猫が生きていくための本能です。

また「猫をかぶる」ということわざの起源にははもう一つ別の説があります。

昔は藁縄を編んだむしろを「ねこだ」と言ったそうで、戦場で武士がそれをかぶって身を隠したところから「ねこだを被る」という言葉ができたそうです。

「ねこだ」と「猫」の音が似ていることと猫の性質からいつしか「猫をかぶる」ということわざが良く知られるようになったのかもしれません。

猫も杓子も

誰もかれも皆、という意味です。

それにしても猫と杓子(しゃもじ)は一体何の関連があるのでしょうか?

一説によると、禰子(神の使い、神主)も釈子(お釈迦様の使い、僧侶)も、という言葉が「立派な人たちでも」というふうに使われていて、それがいつしか「猫」と「杓子」に変わって「誰でもかれでも」になったということです。

猫の性質と合わせて考えると「他人に合わせない猫ですら→そんな猫でもというくらい誰でも彼でも」というふうになったように思えます。

窮鼠猫を噛む

追い込まれたときに必死に抵抗すれば弱いものが強いものに勝つこともある、という意味のことわざです。

スポーツの試合などでよく使われます。

「予想を覆して追い込まれた○○選手が逆転勝ちした。窮鼠猫を噛むということだろうか」などと言います。

猫は本当にネズミを捕まえてくることがありますが、これは猫が野生動物だったころからの本能です。

しかし猫がネズミを捕まえるとネズミから寄生虫に感染することがあります。

トキゾプラズマ、エキノコックス、猫条虫などです。

これらの寄生虫は人間にもうつることがありますので十分な注意が必要です。

トキゾプラズマは妊娠中の女性にうつると胎児に深刻な影響を与えます。

またエキノコックスは肝臓に大きなダメージを与えるので要注意です。

猫とネズミが接触したらそのあとは特に手洗いを丁寧にして、猫に感染の疑いがあったら駆除薬などで処置しましょう。

猫の首に鈴を付ける

これは西洋のイソップの寓話からきています。

猫に仲間を捕られるネズミたちが相談して「猫の首に鈴を付けたら良いのではないか」というアイデアを出しました。

それでは誰が?という段になると実行するものは誰もいなかった、という話です。

アイデアはあるけれど実行できない「机上の空論」に似ています。

ところで実際猫の首に鈴を付けるのが良いのかどうかということですが、猫にとってストレスになるのでやめた方が良いでしょう。

あなたの首に鈴が付いていて動くたびに鳴りつづけたらどうでしょうか?

猫も同じように感じるものです。

猫にまつわることわざを知ろう

猫に関することわざはまだたくさんあります。

「猫の手も借りたい」「猫の子一匹いない」「鼠とらぬ猫」「猫の額」「猫の目のように変わる」…など。

どれも猫の性質をよくとらえた言葉です。

猫が昔からいかに愛されてきたかという証拠でしょう。

猫は十二支からははずれていますが実際の生活ではかなり人間と深いかかわりを持った動物です。

あなたの家の猫にはどのことわざがあてはまるでしょうか?そう思いながら猫を見るのもまた楽しいものです。