体重5~6kgの成猫の一日に必要な水分量は、およそ250ml程度。
水分はエサにも含まれているので、純粋に飲む水の量はもっと少なくなります。
しかし、あまり頻繁に水を飲むようなら病気の可能性が考えられます。
慢性腎炎
まず、老猫の場合に考えられるのは慢性腎炎です。
慢性腎炎は年をとった猫の死因では最も多く、また定期検診を受けていても分からない事がある病です。
多飲の他に痩せる、吐く、口臭やおしっこが匂う、涎が出るといった症状がある場合、この慢性腎炎が考えられます。
腎臓は傷つくと、機能している他の部分が傷ついた腎臓の分も働くようになるため、初期はこれと言った症状はありませんが、腎臓の負担は炎症が進むごとに増えています。
機能していない腎臓の部分が7割を超えて、やっと目に見える腎炎の症状が出るため、多飲の症状が出た頃には、もう既にかなり進行した状態と考えられます。
慢性腎炎は放置すれば悪化して腎不全になり、放っておくと尿毒症を発症し死に至ります。
失った腎臓機能を回復する治療法はないので、発症後は病気の悪化を抑え、機能している残った腎臓で生きていく事になります。
ですので、出来るだけ早く病院へ行き、それ以上悪化する前に早めに対処をしましょう。
甲状腺機能亢進症
慢性腎炎の次に、老猫に多くみられる水を多く飲むようになる病は、甲状腺機能亢進症です。
甲状腺ホルモンの異常化が原因で、腎炎と違い、食欲は旺盛なのにやはり痩せる、食べても吐いてしまうといった症状、他に不整脈や心不全といった症状も見られます。
これは甲状腺のどこかに腫瘍があることによって、甲状腺の機能が異常なほど活発になり、ホルモン分泌が過剰になるために起こります。
治療法には投薬もありますが、手術が一般的です。
糖尿病
糖尿病は肥満体型の猫に多い病気です。
膵臓から分泌されるホルモンのインスリンの分泌量や、反応の低下が原因で発症します。
触っても肋骨が分からない、腰のくびれがないほどの肥満体型だと、糖尿病になる確率は高くなります。
肥満体型でなくても、人の食べ物を食べている、またはストレスが多い猫にも多く発症します。
水を飲んでいるのは、体内の糖分を捨てるためです。
脱水症状になりやすくなっているので、水は飲ませたままにしましょう。
糖尿病になると、食欲はあっても痩せる、おしっこや口臭が臭いといった症状があらわれます。
見える症状以外にも、感染症にかかりやすくなり、中でも膀胱炎が併発する事が多いといった特徴もあります。
猫の糖尿病はインスリン依存型糖尿病と非インスリン依存性糖尿病の2種類です。
肥満の猫に発症する糖尿病の8割は、非インスリン依存性糖尿病です。
非インスリン依存性糖尿病は、食事療法で減量する事で治療が可能な場合もあります。
以前は致死率の高い病気でしたが、現在は獣医と飼い主のサポートがあれば、死に至るほどの悪化はある程度避ける事が出来ます。
子宮蓄膿症
子宮蓄膿症はメス猫のみにみられる病気です。
ホルモンバランスの乱れや子宮に大腸菌やサルモネラ菌、ブドウ球菌といった細菌の繁殖が原因で、子宮に膿が溜まる事によって発症します。
元気がない、食欲不振、陰部から血や膿が出ているといった症状があり、重度の場合には子宮に膿が溜まり、腹部が膨らんでくる事もあります。
悪化すれば腹膜炎を起こし、死んでしまう事もあるので、早いうちに病院に連れて行きましょう。
ホルモン剤や抗生物質の服用での治療もありますが、子宮と卵巣を摘出する手術が一般的です。
避妊手術時に摘出手術を受ければ予防できますし、発症しても早めに病院に行けばかなりの確率で助かります。
薬の副作用
アレルギーや抗がん剤、目薬など色々な症状の有効な治療薬であるステロイド剤ですが、大量に使ったり、量が少なくとも長期服用したりすると問題があります。
水を多く飲むようになるのは、ステロイド剤の副作用の一つでもあります。
食欲がありすぎる、おしっこが多い、呼吸が荒いという症状がある場合、ステロイド剤の長期摂取で副腎皮質の機能が低下していると考えられます。
上記のような症状がある場合、ステロイド剤の副作用が出ているので、獣医さんへステロイド剤の使用を相談する必要があります。
日射病
暑い季節や、高温の場所に長時間いれば、猫も日射病になります。
熱や痙攣、ぜーぜーと口から荒い呼吸をしている等の症状が見られる場合、日射病の恐れがあります。
この痙攣は、水分を多くとった事で、血液の塩分濃度が低下した事による脱水症状が原因です。
猫が日射病になったと考えられる場合、とりあえず濡れたタオルなどで身体を冷やし、できるだけ涼しい所へ移動させましょう。
また、必要な場合は獣医に連絡し、点滴等治療を受けましょう。
水を良く飲むようになる食べもの
ウエットフードからドライフードに変えると、食事によって得られる水分が減るため、飲む水の量は増えます。
大量に飲むからと心配して水の量を制限してしまうと、水分不足により尿路結石の原因になります。
水分量の少ない食事に変えた場合は、以前より多めに水を与えるようにしましょう。
その日だけ大量に水を飲む場合、食べ物が原因かもしれません。
気付かないうちに人の食べ物、刺激の強いものや消化できないものを食べてしまったのかもしれません。
食べた物によっては中毒を起こす危険があります。
確認できるなら食べてしまった物を確認し、その後病院へ連れて行きましょう。
猫が水を飲み過ぎている時には注意しよう
元々砂漠の生き物だった猫は、本来はそれほど水を必要としない体をしています。
異常なほど水を飲むのは、体内の余分なタンパク質や糖度、毒素を体外へ排出し薄めようとしていると考えられます。
水を多く飲むようになる病気は命に関わるものが多いので、出来るだけ早く病院へ連れて行きましょう。