猫は、その狩猟本能によりネズミなどを捕獲し、時に捕食する事があり寄生虫などに感染する事もあります。

飼い主ならば飼い猫の身体を心配するのは当然です。

しかし、何よりも怖いのは、猫を介して飼い主あるいはご家族に感染する事、人獣共通感染症(ズーノーシス)です。

トキソプラズマ症

トキソプラズマという単細胞生物が引き起こす原虫感染症です。

トキソプラズマは、終宿主がネコ科の動物であるため、猫に何らの症状が出る訳ではありません。

せいぜいお尻がむず痒くなる程度です。

しかし、猫の糞便が含まれる土や砂などを経由した経口感染により、人に感染する事があります。

健康な成人であれば発熱する様な事も無く、リンパ節が腫れる程度で、ほとんど気付く事無く自然に治まります。

また、リンパ節の腫れや発熱、筋肉痛、疲労感などがの症状が出る場合もありますが、1ヶ月程度で自然に回復する場合が多いのです。

しかし、免疫が正常に機能していない場合や免疫機能がまだ十分では無い小さなお子様などは、中枢神経系障害や肺炎、心筋炎など重篤な症状になる場合があります。

また、妊婦さんの場合は、妊娠初期~後期のどの段階で感染したかによって重篤な症状を引き起こしたりしますが、胎児の発達にも多大な影響を与え、時には死産に至る危険もあります。

エキノコックス症

エキノコックスという寄生虫により引き起こされる感染症です。

エキノコックスは、ネズミやリスなどを中間宿主とし、彼等を捕食する肉食動物を終宿主としています。

エキノコックスに感染した猫は、稀に粘液状の軟便を排泄したり、下痢をする程度で済みます。

人に対しては、猫の糞便に混入した卵胞を摂取してしまう事により口径感染します。

人に感染した場合、重篤な肝臓疾患や結核類似症状などの他、脳や心臓、骨などにも寄生し、更に重篤な症状をもたらす事がありますので注意が必要です。

特に無症状である潜伏期間が、成人で10年~20年、小児で5年以上と長いので、その点にも注意が必要です。

エキノコックスには、多包条虫と単包条虫の2種類があり、日本では多包条虫が北海道に広く分布しています。

そのため、キタキツネが終宿主となっている事が多く、北海道に多い病気ですが、近年のペットブームにより、ペットとの旅行や引越などが増加した事で他の地域でも寄生が確認され、分布域の拡大が懸念されている感染症です。

猫回虫・猫条虫

回虫は小腸に寄生する白く細長い寄生虫です。

条虫はサナダムシという別名で知られる寄生虫で、こちらも小腸に寄生します。

どちらもネズミを捕食する事により感染します。

成猫の場合は、どちらも症状が出ず元気である事も多いですが、子猫の場合は下痢や便秘などの症状が現れます。

回虫の場合、腸閉塞や消化不良などの消化器症状を、条虫の場合は、嘔吐や貧血などの胃腸障害などを起こします。

また、どちらも共通の症状として下痢や栄養不良を起こします。

人間は本来の宿主では無いため、体内に入り込んでも成長する事はありませんが、身体の組織内に膜を作り体内に数ヶ月間生存し続けるため、免疫低下などを起こした場合には、発熱や腹痛などの症状が現れたり、好酸球性肉芽腫などの網膜の病気や肝臓障害を引き起こしたりする場合があります。

感染症予防の為にすべき事

以上は、ほんの一例に過ぎません。

猫はネズミだけでなく、鳥やカエル、ヘビ、昆虫など様々な生き物を捕食し、寄生虫に感染します。

これらは、猫に感染した時点では症状として現れない場合も多く、人に感染して初めて発症するものがあります。

また、猫自体も口内や爪などに多くの菌を保有しているという点にも注意が必要です。

この様な感染症を予防するために、日頃から部屋の掃除や定期的な害虫駆除など、人及び猫の住環境を清潔に保つ事が大変重要になります。

猫のトイレ掃除やブラッシングなど猫の世話をした後などは、必ず石けんを使用し流水で手を洗う様に心掛けましょう。

また、キスや口移しでのエサやりなど過剰なスキンシップも避けましょう。

特に、小さなお子様やお年寄りなど免疫力の低い方がいるご家庭では、十分な注意が必要となります。

更に、猫に引っ掻かれたり噛まれたりした場合は、速やかに傷口を洗い消毒などの処置を施しましょう。

場合によっては医師の診察を受ける事も大切です。

本来なら、猫は室内のみで飼うのが良いのですが、自由にさせているご家庭も少なく有りません。

その場合は、食事や就寝も一緒に行なわない様にし、月に1度は駆虫する様にしましょう。

猫がネズミを食べたら病院へ連れて行こう

猫は、長く愛玩動物として人と共に暮らしてきました。

しかし、飼い猫を愛するあまり、御自身あるいはご家族が病気になってしまっては本末転倒です。

人と猫がお互い健康的な生活を送るためにも、人とは異なる動物であると言う事を十分理解し、最低限の対策を講じ必要に応じて対処する。

それが飼い主としての責任ある行動です。

そして、もし猫がネズミを食べてしまったら、病院へ連れて行きましょう。