パピーウォーカーというものをご存知ですか?
盲導犬の訓練を受けさせようとする子犬を、約10か月間預かって育てるボランティアのことです。
このパピーウォーカーについて、その条件や活動をご紹介します。
盲導犬候補の子犬を預かるボランティア
盲導犬になるには、生後1歳頃から適正な訓練を受けなくてはなりません。
しかしあまりに幼い頃からは訓練をせず、人と暮らしていきながら社会性を身に着け、盲導犬として訓練をするための準備をするのです。
当然盲導犬は人と共に行動をするのですから、人と共に暮らすことを喜びと感じるように、愛情をもって育て、子犬の社会性を育てていきます。
そのお手伝いをするのがパピーウォーカーです。
興味を持たれた方も多いかもしれませんが、パピーウォーカーになるにはいくつかの条件があります。
日本には各地に盲導犬協会が置かれて、パピーウォーカーの協力のもと活動しています。
ウォーカーさん募集の条件は協会によって多少は違いがありますが、大まかな流れを見ていきましょう。
パピーウォーカーの条件、子犬に時間を使えること
まず大きなポイントです。
犬好きであることはもちろんですが、現在犬を飼っていないことが条件です。
協会によっては相談できるところもあります。
なぜ犬がいないほうが良いのかというと、新しく預かる子犬に充分な時間をかけて世話をしなければならないからです。
普通子犬を家に迎えた時にも、食事やトイレなど手が掛かります。
盲導犬候補の子犬は、人とのふれあいの時間もしっかりと取らなければならないので、1頭に掛ける時間が多く必要です。
同じ理由で、一人暮らしや留守しがちな家では預かることができません。
子犬に手が掛けられないし、いざとなった時に代わる人がいないと困るのです。
まずはこの条件が付いていることを理解したうえで、パピーウォーカーに申し込むか考えなければいけません。
室内飼育ができること
盲導犬は当然のことながらユーザーさんと共に暮らしますから、外出もしますが家の中で暮らすことになります。
そのために室内の環境に慣れ、決まった場所での排せつや、家具をかじってイタズラするなどしないように育てなければなりません。
そのために、室内での飼育環境が整っていなければいけないのです。
1頭の犬を飼育するには、ある程度の広さのケージやトイレスペースを確保する必要があります。
また、集合住宅に住んでいる場合には、管理者や近隣の住民の理解が得られないとトラブルになることがありますので、確認が必要です。
車をつかえること
パピーウォーカーとして子犬を育てるには、毎日の散歩はもちろんですが、健康診断や予防接種、怪我や病気での受診に備えて、子犬を運ぶために自動車に乗せて移動できなければいけません。
また、協会で行われるセミナーや訓練に連れていくこともあります。
更には、盲導犬となった犬は車に乗ることもあるので慣らしておくことも必要です。
このようなことから、パピーウォーカーには車が必要です。
成長した犬とケージなどを乗せて移動ができる大きさの車があることも、必要な条件になってきます。
家族が協力できること
預かった子犬は、社会性を身に着け、人とコミュニケーションがとれ、人の役に立つことを喜びとして活動できるように、パピーウォーカーの家族みんなから愛情をもって育てられることが大切です。
また、日々の生活で子犬に掛ける時間も多いので、家族で協力し合いながらの飼育が必要です。
食事、トイレの世話、散歩など、色々な世話が必要ですので、家族で役割を決めて子犬の飼育に取り組みましょう。
加えて、ただ育てるだけではなく、訓練を始める前の段階でのしつけはとても大事です。
家族全員が一貫した態度で同じようにしつけをしていきましょう。
ひとりひとりの態度が違うと犬が混乱してしまいます。
飼育に掛かる費用を負担できること
ペットの犬を育てるのと同様に、盲導犬候補の子犬を育てるにも様々な費用が掛かり、ほとんどをパピーウォーカーが負担することも知っておかなければなりません。
まずは健康面に関してですが、各種健康診断やワクチン接種はしっかりと受けさせる必要があり、協会が負担しているところもありますが、ウォーカーの負担という場合もあります。
更に怪我や病気の際の診療代も掛かってきます。
これに関しても協会が一部負担するところもあります。
この他には日常に掛かる費用です。
ケージやトイレシーツ、ドッグフードなど、月に数千円負担する必要があります。
子犬との別れ
生後しばらくしてから預かってきた子犬とは、約10カ月の間生活を共にします。
その間毎日愛情を注いできたのですから、もちろんかわいくて仕方ないでしょう。
もう家族の一員のように思えるかもしれません。
ですが、これからが盲導犬としての訓練の始まりであり、その後はユーザーさんとの生活が待っています。
パピーウォーカーは決められた期間が過ぎると、預かっていた子犬を訓練所へ返さなければなりません。
また、一旦訓練所へ返した犬とは、その後接触してはいけない決まりになっています。
それは、子どもの頃に育った環境を思い出し、犬がその家族に甘えたりして、訓練やユーザーさんとのマッチングに影響を与えるからです。
例外として、盲導犬に適さないとされた犬は一般の犬と同じく飼い主が必要ですので、パピーウォーカーが引き取ることもできます。
パピーウォーカーは盲導犬育成の第一歩
現在の日本では盲導犬が不足していて、多くの訓練犬の育成が待たれています。
当然、その前の子犬の預かり飼育もたくさんのボランティアを必要としています。
上記のように色々な条件があり、誰でもができるボランティアではないからこそ、やりがいもあるのです。
ぜひ条件をクリアして、パピーウォーカーのボランティアをしてみてはいかがでしょうか。