最近では、ペットとして飼われている犬の多くは、去勢や避妊手術をしている方が一般的でしょう。
意図せぬ繁殖を防ぐことができるだけでなく、性格も穏やかになる傾向があり、飼いやすくなるというのもあるでしょう。
しかし、人も犬も、古くから続く命の営みとして出産や子育てというものがあります。
愛犬が赤ちゃんを産むというのも、とても感動的なイベントだったりします。
そんな犬の出産について、産後に気を付けなければならないことをご紹介します。
母犬の感染症に気を付ける
人間でも犬でも同じように言えますが、出産は命が誕生する瞬間であるとともに、命の危険にさらされるタイミングでもあります。
私たちも同じほ乳類なのですから、母犬の体にかかる負担の大きさは想像に難くないでしょう。
出産を終えた母犬は、すぐに子育てが始まりますが、仔犬だけでなく母犬の怪我や感染症などにも大いに注意する必要があります。
仔犬を出産した後、比較的早い段階で心配されるのは、子宮脱や急性子宮炎などです。
出産時に外に露出した子宮が戻らなかったり、分娩の時に細菌が子宮に入ったりするなど、様々な病気のリスクがあります。
通常6週間くらいでおさまるオリモノが続いたりしている場合には、こうした状態が心配されます。
また、出産と同時に子育てが始まることになり、乳腺炎や低カルシウム血症にも気を付けます。
授乳時などに乳頭などから侵入する細菌などで、乳腺が腫れて熱を持ったり、痛みがでることがあります。
また授乳によりカルシウムが使われてしまい、母犬の体内のカルシウム濃度が著しく低下することも考えられます。
しっかりと水分と栄養を
出産を終えた母犬は、母乳を与えるためにたくさんの栄養が必要になります。
一般的には、出産直後では、通常の時と比べて1.5倍のカロリーが必要だとされています。
また、生まれた仔犬はすぐに成長期を迎えることになります。
仔犬が生後1ヶ月〜2ヶ月くらいまでは、通常の3倍のカロリーが必要になってきます。
また、母乳でたくさんの水分が使われてしまうことにもなります。
いつでも水分が補給できるように、水を切らさないように気を付けてあげましょう。
それでも、水を舐めて取れる水分にも限りがあります。
しばらくは、エサをふやかしたりするなど、たくさんの水分が取れるように工夫してあげましょう。
産後の緊張を共有する
出産直後の母犬というのは、とても神経質になっていることがあります。
お腹を痛めて仔犬を産んでいるのですから、当然といえば当然ですよね。
むやみに仔犬を取り上げたりすることは、母犬にとって大きなストレスになったりします。
ですので、そうした母犬の緊張や、不安を察した上で接する必要がでてきます。
まず、出産直後は母犬は食事や排泄も我慢して仔犬を守ろうとしたりします。
しかし、仔犬が寝ていたり、少し落ち着いてきたタイミングを見計らって、トイレに連れて行くようにしましょう。
トイレから戻って仔犬に何もなければ、だんだんと自分でトイレに行くようにもなります。
また5〜10分くらいの軽い散歩や運動も大切です。
血行を良くすることで母乳のでを良くすることも期待できますし、ストレスの解消にもなります。
また、出産によって拡がった子宮を元に戻す上でも、適度な運動は大切になります。
体の異常をチェックする
先に母犬に関する注意点を紹介しましたが、もちろん母犬だけでなく、仔犬にもケアが必要になります。
特に生まれてから2、3週間くらいは、とても気を使う期間になります。
まず、仔犬が産まれて母犬の様子もひと段落したところで、必ず仔犬の体の異常をチェックしましょう。
口蓋裂や鎖肛といった見た目わかるような奇形や異常がないかはもちろんです。
他にも、心臓や内臓などの異常や、遺伝による疾患などがないかということをチェックします。
必ず飼い犬が妊娠したり出産した場合には、動物病院などで相談するようにしましょう。
また生後60日を目安に、ワクチン接種などもしていかなければなりません。
獣医さんには、異常の有無のチェックや今後のワクチンや検診のスケジュールなどをしっかりと確認しておきましょう。
初乳を与える
生後2、3日くらいに母犬から分泌される母乳のことを初乳と言います。
人の母乳にも同じことが言われますが、この初乳には母犬からの免疫が多く含まれています。
ですので、今後仔犬が元気に成長しているために、初乳にはとても重要な意味があります。
生まれたばかりの仔犬は、まだ目が見えていません。
一般的に生後二週間くらいで目が開き、だいたい生後1ヶ月くらいできちんと見えるようになってきます。
ですので、最初はなかなか母犬の母乳にたどり着けないこともあります。
母犬の乳首に口を近づけるようにして、初乳を飲めるようにしっかりとサポートしてあげましょう。
健康状態と体重はこまめにチェック
生まれたばかりの仔犬には、どんな事態が起こるか、はっきりいって想像できません。
ですので、生後2ヶ月くらいまでは、母犬とともに飼い主にとっても気の抜けない期間になります。
この期間に飼い主としてできることというのは、健康状態や体重をこまめに観察することです。
生後二週間くらいまでは、一日に二回、決まった時間に体重を測るようにしましょう。
一匹だけ体重の増加が鈍かったりすれば、うまく母乳が飲めていなかったり、消化されていない可能性があります。
また、複数の仔犬で体重が増えないときなどには、母犬の母乳がうまくでていないなどの可能性があります。
仔犬が健やかに成長するためには、母犬と飼い主と、それから獣医のアドバイスも欠かせません。
獣医や動物病院とは、妊娠中からこまめに連絡をとるようにして、少しでも異常があるときには、すぐに相談できるようにしておきましょう。
出産後の子犬と親犬のためにできることをしよう
このように、出産直後の母犬や仔犬には、注意したいことが山ほどあります。
犬は成長が早いので、人間のように何年も育児に時間がかかるわけではありません。
しかし、だからこそ、こうした生まれた直後というのは、特に気を付けてあげなければなりません。
また母犬のストレスや疲れにも、じゅうぶん注意が必要になります。
頑張りすぎる母犬というのもいるので、様子を見ながら育児のお手伝いをするというのも、飼い主の大切な役割です。
紹介した内容を参考に、母犬といっしょに仔犬の成長が楽しめるとよいですね。