古くから人間と共に暮らし、人間の仕事を手伝ってきた犬たちの中には、その役割に合わせて特徴的な外見を持つようになった犬たちもいます。
短い足を持つ犬たちも元々は作業をしやすくするようにと足が短くなるように改良されてきましたが、ペットとして飼われるようになった現代でも、その愛嬌のある見た目で人々の目を惹きつけます。
ダックスフンド
足が短い犬と聞いて最初に思い浮かぶのがダックスフンドではないでしょうか。
ダックスフンドはスタンダード、ミニチュア、カニンヘンとサイズが分かれており、被毛のタイプもロングヘアード、スムースヘアード、ワイヤーヘアードの3種類があります。
ドイツ語でダックス(アナグマ)フンド(犬)という名前が付けられたように、アナグマ猟をするために作出、改良されました。
アナグマを見つけるとアナグマの巣の中まで入って追いかけ、地中で吠えて猟師に知らせるという猟法を取っていたので、アナグマの巣の中に入りやすいように足が極端に短くなり、小柄ながらよく響く大きな声を持っています。
15㎏ほどの大きさのアナグマを狩るためにスタンダードダックスが作出され、小型のテンやうさぎを狩るためにスタンダードからミニチュア、カニンヘンと小型化されていきました。
性格は活発で好奇心旺盛です。
アナグマ猟の本能からか、どこかに潜ったり地面に穴を掘ったりする行動をすることがあります。
よく響く大きい声なので集合住宅等で飼う際は吠え癖に留意したしつけを重点的に行う必要があります。
ウェルシュ・コーギー
イギリスのウェールズ地方の牧畜犬として活躍していました。
日本で人気のあるのはウェルシュ・コーギー・ペンブロークですが、外見や用途が似ているウェルシュ・コーギーカーディガンもいます。
コーギーは牧畜犬として牛の群れを誘導する役割を担っていましたが、牛の蹴りを避けるために体高を低くなるように改良されたとされています。
ペンブロークは牛に尻尾を踏まれないように生後間もなく断尾をする習慣がありましたが、現在では動物愛護の観点から断尾を廃止している国もあります。
性格は利口、活発で、自分より大きい牛に怯むことなく向かっていった勇敢さも持ち合わせています。
牛の蹴りを避けながら牛の踵に噛みついていたので、本能から興奮すると踵に噛みついてしまうということがあります。
バセット・ハウンド
短い足と長くて大きい耳、たるんだ皮膚が特徴です。
バセットの語源はフランス語で「バス(低い)」であり、吠え声が低いことから付けられたとされています。
バセット・ハウンドは嗅覚に優れており、獲物の臭いを辿って猟師を案内するという役割を持っていました。
足の短いバセット・ハウンドは素早く走って獲物を追いかけるという事ができないため、猟師が犬の後を歩いて付いて行くことができました。
馬を持たない庶民にとっては嗅覚に優れ、のんびり追いかけることで獲物に警戒されないバセット・ハウンドは最良の猟犬となりました。
性格はのんびりとしており、とても温厚です。
マイペースで頑固な面もあり、自分の興味のある臭いを見つけると気が済むまで追跡してしまうということがあります。
ペキニーズ
中国の宮廷で皇族から寵愛を受けていた愛玩犬で、獅子を思わせる豊富な飾り毛が特徴の犬種です。
中国では「京巴(ジンパー)」と呼ばれています。
長らく門外不出の犬とされていましたが、阿片戦争によりイギリス軍が中国に侵攻し宮廷内に踏み込んだ際に、宮廷内に残されていた5頭のペキニーズをイギリスに持ち帰りました。
そのうちの1頭をビクトリア女王に献上したことでペキニーズがヨーロッパに広く知られるようになりました。
性格は穏やかでありながら自尊心が高く、気まぐれな面を持ち合わせることから「猫のような犬」と表現されます。
マイペースで抱かれることを好まないペキニーズも多くなります。
短頭種であり厚い被毛を持っているため暑さには弱く、飼育管理には注意が必要です。
足の短い犬を飼うなら足腰を気づかってあげよう
短い足の犬はその特徴的な外見と愛嬌のあるユーモラスな動きで現在でも高い人気のある犬種が多いですが、注意しなければいけないこともあります。
多くの短足を特徴とする犬は人為的に足が短くなるように形を固定させたものですが、これは足の軟骨の形成不全によって起こるものです。
また足だけではなく体全体の軟骨に異常をきたしやすいという性質も併せ持ってしまっており、これらの犬種を「軟骨異栄養性犬種」と呼びます。
そのため、背骨の軟骨でもある椎間板が若くから変性を起こしてしまいやすく、椎間板ヘルニアになる危険性が短足でない犬種に比べて高くなってしまっています。
胴長短足という体の構造自体も腰に負担がかかりやすいため、足の短い犬種を飼う際には椎間板ヘルニアの危険性も十分理解し、日常生活に気をつけることで予防につなげることができます。