愛犬のお腹の調子が悪いとき、人間用のビオフェルミンを与えているというのは、ネット上でもよく目にすることがあります。

ただ、その処方は果たして正しいのでしょうか。

ビオフェルミンの成分と働き、犬に与えることの是非についてご説明していきましょう。

ビオフェルミンの成分は善玉菌

犬にビオフェルミンを与えることの是非について知るためには、そもそもビオフェルミンとはどういうものなのかを知っておく必要があります。

ビオフェルミンは腸内の環境を良くする善玉菌そのもので、ビフィズス菌、フェーカリス菌、アシドフィルス菌からなっています。

薬ではなく、サプリメントのようなものと考えて良いでしょう。

では、そもそも「善玉菌」とはどういうものなのでしょうか。

人間の腸には善玉菌と悪玉菌が住んでいます。

悪玉菌は毒素を出して便秘を初めとする悪影響を与えるもので、善玉菌はこの悪玉菌を駆逐してくれる働きを持っています。

つまり、腸内に善玉菌が増えれば環境が良くなり、消化や排便にも良い影響を与えるのです。

これによって腸の働きを良くして、栄養分が十分に吸収できるようにしています。

付け加えると、病気になることを防ぐ免疫細胞は、その6割が腸に集中しています。

善玉菌はこの免疫細胞の働きを助けてくれる働きもあります。

腸内に善玉菌が増えれば免疫細胞の働きは活発になり、免疫力アップで病気になりにくくなり、仮に病気になっても治癒力が大きくなっているというわけです。

繰り返しますが、ビオフェルミンは薬というよりもサプリメントに近い性質を持ったもので、ビタミン剤などと同じ「指定医薬部外品」となっています。

このため、効果はあくまでも緩やかである代わりに、過剰摂取などをしない限り、副作用などはないというのがビオフェルミンの特徴だと言えるでしょう。

犬に与えても問題はない

善玉菌が重要な役割を占めているのは、犬も同じことです。

犬の腸には100兆個の菌が住んでいるとされています。

犬は基本的に肉食動物であるため腸が短く、長さは体長の約4倍となっています。

人間の腸が身長の約10倍ということから考えると、いかに短いかが分かるでしょう。

にも関わらず、菌の数自体は人間と同じです。

つまり、犬の腸に住み着いている菌は、人間に比べて極めて密度が高くなっていると考えて良いでしょう。

こうした菌の中には、ビオフェルミンに含まれている3種類の善玉菌もありますし、困ったことに悪玉菌も存在しています。

そして、悪玉菌の働きが活発になると、便秘になったり、下痢になったりすることは人間と同じです。

免疫力アップについても同様で、善玉菌が優勢になれば体の抵抗力がアップします。

ビオフェルミンに含まれている善玉菌は、犬にとっても必要なものです。

つまり、人間用のビオフェルミンを犬に与えることは間違ったことではなく、むしろ犬の体調を整えるという意味では推奨されるということになります。

ただし、量には注意が必要です。人間と犬との体重差を考えた量をあげましょう。

どういう時に与えるべきか

では、どういう時に犬にビオフェルミンを与えるべきでしょうか。

これについても、人間に準じて考えれば良いでしょう。

下痢をしたり、便秘になったりしたときに与えるのです。

こうすることで腸内の環境を整え、下痢や便秘を抑えるのです。

上にも書きましたが、犬は腸が短いため、繊維質の多い食物の消化は苦手です。

ちょっとしたことでも下痢や便秘になってしまい、体調悪化の原因になりかねません。

犬の腸には人間よりも高い密度で菌が住み着いていますので、善玉菌を供給して腸内環境を整えれば、下痢や便秘は解決してくれるでしょう。

ただ、やはりビオフェルミンは「指定医薬部外品」で、薬品のような即効性を持っていません。

与えたからといってすぐに効果があるわけではありませんので、少しずつ効果が出てくるのを見守りながら与えていくべきです。

免疫力の上昇というポイントを考えれば、普段から与えていくという選択肢も悪くないのではないでしょうか。

与える際の注意点

気を付けてほしいのは「ビオフェルミンは甘い」ということです。

犬の舌は甘さを感じる器官が多いため、甘いものが好きです。

このため、ビオフェルミンを与えるといくらでも食べてしまいます。

いくらビオフェルミンが体に良いといっても、限度というものがあります。

どんなに栄養豊富な食材でも、食べ過ぎればお腹を壊してしまうのと同じです。

体重にもよりますが、小型・中型犬なら1日1個、大型犬なら2~3個を目安に与えていくのが良いでしょう。

また、乳製品にアレルギーがある個体は、ビオフェルミンの投与によってアレルギー症状が出ることが確認されています。

犬にビオフェルミンを与えるのは健康増進のためですから、健康を損ねてしまっては無意味です。

乳製品アレルギーのある個体には、ビオフェルミンを与えないようにしてください。

与える量に気を付ければビオフェルミンはOK

人間用のビオフェルミンが犬にも有効だなんて、知らなかった人も多かったのではないでしょうか。

基本的に人間の薬は犬にあげてはいけませんが、ビオフェルミンは例外だということです。

愛犬と一緒にビオフェルミンを飲み、腸内環境を整えて健康になってみるのも良いかもしれませんね。